啓太が腰を抜かしてブルブルしかけてる、ちょっとご飯が美味しい。
「服は自作または既製品が主みたいだね。僕らの場合、自作は結局は『創造』になっちゃうからさ、やっぱり店で買うのが一番になるみたいだね」
「ふうん。依頼達成の金はもう入ってんだろ? あと俺が剥いだドラゴンの鱗代とか」
「依頼はそれしかやってないけどね、まぁ、高い服を買っても服ぐらいで無くなるほど依頼金は安くなかったよ。それにさ、あのドラゴンの鱗一枚でたっかい服が何着か買える感じだよ」
「やばくね? あのドラゴンやばくね? …………俺、逆さの逆鱗っぽいのを今持ってるんだけど…………」
恐々ポケットから黒い鱗を取り出してみせる啓太。馬鹿だな、それすら一瞬で生み出せる、殺戮出来る僕と一緒に居るのにさぁ。その程度でびびらないでよ、チッ。
でも、たかだかドラゴン一匹と侮るなかれ。その、たかだか一匹で村や町が滅ぶ。だから依頼達成の報酬は馬鹿高い。服どころか、服屋が買えるよ。素材代を含んだらもう、しばらく豪遊できるよ。ということで贅沢な服を買いに行って来ますっていう。
「うん、それは大切に持っといて、もしもの時に売ればいいよ。それか、加工してもらって武器とか防具にすればすごいと思う。アクセサリーにしてもなんか良さげだよね」
「…………もしものことなんかあるのか? 」
「無いけどね。僕に貸してくれたら十倍にして返してあげるけど、物量的に」
「遠慮する」
「創造」でもなく、「複製」でもなく。忽然とこの世に生み出してあげようっていうのに、遠慮するのか…………ちょっと残念。とても残念。
「じゃ、適当に行こうか。僕は別に『地図作成』とか変なことをするつもりは無いから楽しもうよ、学生じゃ出来ない、豪華な買い物を」
「そ、そういえば俺たち、今金持ちだったよな…………! 」
でもとても残念なことにこの世界には啓太の大好きなゲーム機も、ソフトも、パソコンもない。せいぜい美味いものをたらふく食べて、…………、それだけかな。ゲーム機も、ソフトも…………自分で「創造」しても、つまらないもの。「創造」をする、つまり、そのものを知り尽くしている、ってことなんだから。
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「いらっしゃいませお客様。失礼ですが、身分証明書をどうぞ」
「ギルドカードでいい? 」
「はい、勿論でございます」
「帝」として活動するときの服とか、ルーアンルック、アドルルックの服がいるからね。あと、一枚ぐらいは目が飛び出るような値段の服があったっていいじゃないか。…………社長の息子だった僕が言うのはあれだけど。
「…………失礼致しました、それでは採寸をさせて頂きます。どのような服をご所望でしょうか? 」
「僕にはとにかく黒い服。動きやすいやつ。あともう一着は白で金色の縁取りのやつ。イメージは正反対でいいよ。これはゆったりしてる奴。こっちは長ズボンね」
まごまごしている啓太は僕に促されてから慌てて言う。
「じゃ、じゃあ俺は茶色のやつ。走りやすいやつ。もう一着は、真っ赤な服でぴったりしてるといい」
適当に買えばいいや。ここはあんまり気にしなくてもいいかな。
「畏まりました」
因みに、この間に魔法で採寸は済んでるとか言う、マジ高級店ハイスペック。
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「怖かった、マジで怖かった、死ぬかと思った、結城が社長の息子ってこと忘れてた、次元が違う、死ぬと思った…………! 」
「ここは確かに次元が違うよね」
「そこじゃないから! そこやない! 」
必死でツッコまなくても聞こえてるってば。服屋で驚くなんて。確かにあんなに豪華な店にはめったに行かなかったけど、全く行かなかったわけじゃないからなぁ…………ちょっとはもともと耐性あったし、僕からしたらそこまでじゃあなかった。
「では、啓太くんの要望に答えて。普通の一般人の服を買いに行こうと思う」
「もう服はいらん、正直『創造』の方がいい、絶対いい」
結局止められた…………解せない。
「では食材をこっちの通りで買おうか」
「そっち商店街やない。高級料理店や…………! 」
「啓太も案外関西弁を使うよね? 」
結構違和感あるもんなんだよ、だって目が鋭い系イケメンが関西弁で涙目だからね。ちょっと妬ましいけど羨ましくない。僕は平凡ながらもこの温和そうに見える見た目に感謝しているから、鋭い目が羨ましくなったことはない!
「んなこといいんだよ! 普通でいい! 俺は一般人だぁぁぁぁぁぁっ! 」
「何を、戯けたことを。今更一般人とほざくとは。とてもじゃないが、啓太は一般人じゃないよな、主に見た目という意味で」
「顔か? それとも、言動か? 治せるもんなら治す…………! 」
顔? 顔に決まってるじゃないか!
「顔だよ? 今から一般人には見えないようばボコボコな顔にしてやろうか? 」
「遠慮します…………」
そら見ろ。ボコボコにされたくなかったら涙目は、止めればいいのに。ただでさえ格好いいのに、僕が惨めになるよ。フツメンだから。
ちょっと前の方の話を改稿していっています。