プロローグと言うか、主人公じゃなくて脇役がリア充だったりするのにみんなは気づいているかい?
現在、大絶賛現実逃避中の僕の名前は斉藤結城って言うんだ。
なんてことは無い、誕生日が今日な、ただの中学二年生さ。
クラスには友達がいて、近所には親友が住んでいて、時にはほんのちょっぴり恋をする、そしてただただ撃沈するしか無い、そんなただの中学生。
そんな「平凡」で人生これからが花な幸せな日々を楽しんでおくってきた僕は今、なんだかものすごい現象に巻き込まれている。…………いや、僕は当事者か。
下からゲームでよくある魔法陣? らしきものが浮かび上がってきたんだ。不意に現れた物だよ、そんなものを設置するほど中学生はお金も労力もない。それは紫色で光っていて、くるくるくるくる回っている。そんな遠い目をした僕の隣には親友の啓太……石井啓太がいる。周りには誰もいないし、不思議なことに猫一匹見えない。
僕の足元の異変に気づいた啓太の顔がひきつった。
次の瞬間には必死で僕から離れる。こんな変な現象に巻き込まれたくないんだよね、とても分かるよ。僕だってさ、当事者じゃなかったら真っ先に逃げてるもの。でも、なぜだかわからないけれど僕は魔法陣から動けないんだ。足元を、縫いとめられているみたいにね。その間にも魔法陣はもっと早く回りだし、チカチカと光って………次には光は強くなって…………。
「……ねえ、啓太」
「何、だよ………結城?」
一応現実に帰ってきた僕は今まで一番友情を感じた親友の啓太に精一杯の贈り物をしてからこの現象に向き合うことにするよ…………。
あはは、ここまでのものはないにしても、僕も結構不思議現象に驚かなくなったもんだよなぁ。
「今ね、後ろからバスが来ているんだ。見えていると思うけど、前からは居眠り運転らしきトラックだね。
さぁ、僕の分まで逃げてよ、啓太。僕の大事な親友……だろ? 」
そして僕は近くにある、人気のない路地を見る。そして何とか動かせるらしい腕をゆっくり持ち上げて路地を指差す。
「あっちへ逃げて……。
ん? 大丈夫だよ、健太。
僕はね啓太の言う、物語の主人公みたいな体質かもしれないけど、僕は啓太が大事な親友だし……」
そう言いながら僕は走る啓太を見て必死で叫んだ。
「元気で! 」
そして僕はバスとトラックに挟まれ、ふっ、と気を失った。
僕の下に輝き続ける魔法陣が僕を吸い込むのを感じながら。
啓太、僕はさよならとは言わないよ…………。
啓太がいつか天命を全うして死ぬときに会いたいからね…………。
幸せにね、啓太。
・・・・
・・・
・・
・
「何が親友だ、大切な親友だ!
俺は、俺は結城を、大事な親友を見捨てたのに…………………!
くそっ、あのトラックとバスがなければ…………!」
俺はきっと、きっと魔法陣? から結城を助けようとしただろう。だけど、車が迫る恐怖に逃げ出してしまった。
結城が魔法陣に吸い込まれる一方で啓太は、ぐずぐずと泣きながら警察に向かう途中、結城をさっきひき逃げしたトラックに「偶然」はねられて死んだ。
王道は覆される、そんな幻想は存在しない。
彼らはそして…………。