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10話目 適正・選考試験最終日【失敗】

作者「今回、犯人が分かります。Can you guess who did it―犯人は―」

巧「言うなよ!!! それに別物だし……。それより、今まで更新できなかった理由を言え!」

作者「やる気がゼロ+忙しい」

巧「……死ね」





 カツン、カツン……。

 静けさしかない廊下を歩く音が聞こえる。この学校は、『今の段階では』明らかに校内の許容人数がギリギリなので絶えず人の発する雑音が聞こえる。

 今も、静けさはあれど、人の気配は残っている。

 なら何故、静寂が包み込んでいるか、答えは簡単だ。

 この学校で、試験が行われているからだ。

 そんな中、大事な試験をサボり、廊下を闊歩している少年―――海馬巧は、携帯ストラップに指を通し、ブンブン振り回しながら歩いている。


(ったく。何なんだ……)

 彼は、さっきまで生徒会室という成金的に見えるほどの豪華な部屋で、大人な女性と小学生にしか見えない生徒会長と、その場の空気に即効で馴染めるような、壮絶イケメンの少年と、会話をしていたのだが、その中の一人、ロリ生徒会長に『さっさと犯人の手がかりでも何でも見つけて来い! そん位しないと、試験担当教師陣に落第にさせるぞ☆』などと言われ、これ、脅迫じゃね? と思いながら、渋々図書室(規模がデカイ為、既に部屋というレベルでは無い)に向かって歩いていく。

(あれ? 全校生徒が試験中だってのに、管理人に怪しまれないか? そもそも、入室・観覧の許可は出るのか? ……もし入れなかったら……)

 などと考えて、特殊な恐怖感に襲われた巧は、冷や汗が流れ出てくる。


      *

                     

 一方。生徒会室に留まっている、生徒会長と神代護。

「海馬は、いったの?」

「はい。ですけど、会長は既に犯人が分かってるんじゃないんですか?」

「……、」

 それを聞いて会長は突然黙り込む。

 そしてポツリ、と呟く。

「私の『能力』」

「……教えてくれるんですか?」

 別に、会長が気難しくて教えようとしないという訳では無い。その『能力チカラ』が、むやみやたらに悪用されるようなことを恐れているのだ。

 故に、その『能力』は、強力なものだと言うことになる。

 護としても、その『能力』を恐ろしいとも取る反面、興味も湧いていた。

 ……そして、会長が、口を開く。


「え? 教えないよ」


 がくっ、と分かりやすく護が崩れ落ちる。彼には、芸人としての素質もあるのか……!?

「……いつ、教えてくれますか?」

「う~ん……教えるってゆーか、君達が勝手に知る事になるんじゃない?」

「……??」

 護の脳裏には、大量の疑問があふれて行くが、それを会長は無視する。

「まぁ、犯人は分かってるよ。まもるくんもでしょ」

「……、この事を分かってないのは、さっき居た中では一人しか居ませんよ」

「みんな立派だねー。私は、結局言ってないってのに」

 会長は、頷きながら答えるかのような独り言を呟いた。

 突如、生徒会室に風が吹く。

「―――も、知ってて否定したいからこそ調査を続けたいんでしょうね」

 会長に肝心な名前は聞えなかったが、今までの会話からすれば直に分かることなので聞き直すという事はしない。

「私は、もう調べなくてもいいっていったのにねー」

 くすっ、と護は笑う。

「だからこそ、二人が居なくなりましたね」

 その言葉には、多くの意味がこめられている。

 常人―――例えば隼十辺り―――が一連の話を聞いてるとして、護の言葉を聞いたら、何処まで気づくことができるだろう。逆に、どれだけ気付かない意味があるだろう。

 この二人は、そんな普通の人に分かりえる話をしていない。

 ……勿論作者にも分からない。


「……そろそろ、物語が動き出す頃……ね」

 

 会長は呟いた―――。


      *


 ………この一連の話を盗聴している人物が居た。図書室の奥に一人で居る。

「こんな単純な盗聴器にひっかかるってのは、会長ってバカなのかなー?」

 簡単に言ってはいるが、実際これはそう簡単にはいかない。何故なら、会長が盗聴器マニアだから。それだけだ。

 その直後、声が静寂の図書室に響き渡る。


「バカなのはアンタじゃねーの!」


 疑問文ではなく、戸惑った様子も声色からは感じられない。そこにあったのは怒りによる比較的大きな声。男性特有の低い声だが、高校一年になって間もない彼の声は、少年らしさを残している。

 そして、声の後に出たのは、ガタガタという騒がしい音と、声。

「海馬……巧」

 この声を聞いて、彼は確信する


 この人が………吾妻、なつきが……犯人………。


「何で……ですか?」

「人にはね、他人ひとに言えないことが沢山あるのよ」

「何故、こんな事してるんですか?」

「あなたには分からない」

 質問の本質、回答の本質を変えず、同じ事を繰り返す。

 2人は、このペースが続くことをすぐに感じ取っていた。

 感じ取るや否や、巧がしびれを切らした。すぅーと、短く低く小さく聞こえる風吸の音。

 そして。


「何故!!!」


 彼のこの行動は失敗だった。本来余裕がある立場の彼が、明らかに急ぎ焦ったため生じた失敗だ。


「黙れ! 黙れ!!! 黙れっ!!!!!」


 喋るごとにこもって来る感情。怒り。そんな怒声を浴びた、純真な少年は圧倒される。気圧される。そんな感情に対抗するためとった、まだ青い少年の行動は、更なる叫び。

「黙るか!!! あんたの行動が、どれだけの人の迷惑になるのか分かってるのか!!?-―-」叫びは続く。しかし、決して、そんな叫びでは声が届くはずが無い。

 吾妻の苦しみは、奥深くにあるのだから。

「……さい。うるさい。うるさい。うるさい!」

 頭を抱える。うずくまる。悩める一匹の子羊は、苦痛の叫びを訴えている。

 ヒントはそこにある。答えがある。

 ……それを、少年は見つけられない。

 失敗。 


  


 


 



 

 















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