092●破壊神の影
「なんでだよ、なんで俺だけ知らされてなかったんだ!」
「ま、まあまあ、アキラさん、落ち着いてください。バーボン、もう一杯どうぞ。このスモークチーズも、今日の自信作なんで、ぜひ、味わってください。」
俺は遠慮なく、グラスを受け取り、チーズをつまむ。
「いやあ、結果的に皆さんに知られてしまって・・・すみませんでした。」
「エイミーは仕方ないよな。イヨの保護者代理だし。ナオトさんも村にいたんだから、イヨに会ってラボメンから事情を聞いて、わざわざ加勢に来てくれた。あんたとココアはイヨのメカロイドを手配したし・・・。やっぱり俺だけ仲間外れじゃないか!」
「秘密って、秘密って言った瞬間に、もう秘密じゃなくなるんですよねえ。」
ジンがすっとぼけた顔で言う。
ま、しょうがない、と言えなくもない。
「それで、スミスが言ってたSupremeって薬物も、結局、ヤツの思惑通りにはいかなかったんだな?」
「そうですね。兵士の中には命を落とした者もいましたが・・・。残念です。」
「戦闘が収まって、新しい民衆国家の目処が立ったってのは、朗報だな。」
「ええ。国際連帯連合の支援が効きました。」
「で、スミスには逮捕状も出たんだな?」
「村でラボメンに撃退された部隊、山上からの砲撃要員、私たちを直接襲った傭兵たち。あれだけの数がいれば、断片的な情報からスミスまで辿ることができました。彼としては、どの作戦も成功させて、完全撤収するつもりだったんでしょうけどね。」
俺はサイコロステーキを五、六個まとめて口に放り込み、グラスを傾けた。
ジン、料理の腕、また、あげたな。
そのとき、携帯端末のコール音が鳴った。ジンが応答する。
「・・・そうですか。わかりました。」
「なんだ? 何かあったのか?」
「ジョン・スミスが狙撃されたそうです。ICPAの目前で絶命。超長距離からの一撃だったとか。」
沈黙が落ちる。
「・・・ブリッツか・・・。」
その名が、場の空気を一瞬で変えた。
破壊神の影が、再び世界に爪痕を残したのだ。




