088●予想外
スミスは予想外の事態に戸惑いを隠せない。
Supreme を投入したが、意味をなさなくなっている。
暴れる薬物摂取者は、混乱の中で味方に命を奪われた。
互いに敵陣に撒き散らすが、それは双方の消耗を加速させるだけだった。
間もなく、兵士たちの離散が始まった。
督戦隊は出番なく、空になった自軍の前線をどうしたらよいのか、指揮官に尋ねた。
そのうちに督戦隊すら、武器を捨て国境を越える。
スミスの狙いどおり、旧弊はその力を失いつつある。
しかし、それは彼が考えた計画とは様相を異にしている。
破壊を望まぬ者たちが国を去り、
破壊を望む者たちも戦闘の継続が困難になっている。
国際連帯連合が、
あれほどの規模で、あれほどの内容の難民支援をするなどとは予想しえなかった。
軍閥の首領である将軍たちは、わずかな兵を連れて屋外のテントの中で対峙している。
双方とも疲弊し、停戦協議となったのである。
だが、和平が実現したとしても、国民が帰って来るという保証はない。
ふたりの将軍たちは、互いに顔を見合わせた。
その時、テントの中に、光球が現れた。
その光の中から、2人の女性が姿を見せる。
「こんにちは、将軍のおふたり。お邪魔しますね。」
テントの中の者たちは、驚愕し動けなかった。
「で、停戦協定は締結されたのね。」
「そういうこと。ソレイユとココア、ふたりがかりだもん。マイロードだって、ラベリア戦役のあとのボレリア復興、わたしたちで‘やっちまったあ’の時に、ふたりに説得されたぐらいだもの。」
「あれは説得というより、マイロードが矛を収めてくださった、という感じだったけどね。」
「それで今後、どうなるのよ?」
「流出した難民が帰国するには、少し時間がかかるけど、有志から順次戻って新国家を造ることになるわよ。」
「みんな高能力者、高技術者になってるから、技術立国になりそうね。」
「でも、あの力って一時的なんでしょう?」
「遺伝はしないけど、ふっふっふ。ヒトを甘く見ちゃいけないな。」
「一度身に着けた能力は、永続するからね。泳ぎを覚えたら、一生、泳げるじゃない。」
「なんか、この話、前にもしたことがあったよね。どの世界線だったっけ?」
「じゃあ、とりあえず、一件落着ね。巫女姿も気に入ってたんだけどなあ。」
「ここが気に入ったなら、居てもいいんじゃないの?」
「う~ん、でも、マイロードとMKのココアが、もういるからねえ。」
「でもさ、オオガミさんが、怒るんじゃないの?」
「そうね、そろそろ‘真実を知る’頃よ。」
「あっ、そうだ!このあいだの‘別荘送り’の人たちのこと、忘れてない?」
「ああ~、後片付けさせないとね。」
「じゃあ、それ、あなたにお願いね~。」
「また、わたし〜?!’帝王’の時もそうだったじゃないのよお!」
「今度は自分でやるんじゃなくて、させるんだから、ねっ、お・ね・が・い!」




