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『ちょこれゐと ゐず びゅうてぃふる』シリーズ

ちょこれゐと ゐず びゅうてぃふる

 小指が痛い。それだけの事がやたら気になった僕は、この指の痛さを忘れる為に旅に出ることにした。見送ってくれたのは犬だけだった。なんて薄情な連中だろう。これが今生の別れかも知れないのに。


だが僕は肝心な事を忘れていた。僕は天然記念物並みの方向音痴だったのだ。


 近年は「すまぁとふぉん」という何だか僕よりも頭の良さそうな物が世に出回っているが、生憎と僕はその恩恵にあやかれていない。というのも、僕の家には欧米の文明に毒された物品は置いてはならぬという、しきたりがあるからだ。そのしきたりを定めたのは、僕より堅物で、宇宙の神秘といえるほどの和の心を重んじている父である。しかしながら僕はその家から既に出ていってしまった身。必然的に、僕は僕の持っている能力の全てを信じて旅に出なければならない。ならば、この方向音痴という致命的な欠陥も己で何とかするしかないのである。



 僕は、赤っ恥を承知で道行く人を呼び止めて、駅の方角を訊いてみる事にした。


「え?駅?あっち」


と言って通行人は、僕の方から見て前方斜め左を指さす。なるほど、そちらに行けばいいのか。僕は礼を言ってとりあえず左に進んだ。


「そっちは行き止まりだよ」


「…知ってますよ」


気を取り直して僕は歩き出した。



 10分後、既に道が分らなくなっている僕が居た。その時、僕は眼前に「こんびにえんすすとあ」を認めた。そういえば、この「こんびにえんすすとあ」には地図とか売っていたはず。僕は勇み足で入店した。







「…で、分ったよ、そこまでは。なんで旅に出ないで俺んちに来るんだよ?」



「そこにとても美味い、ちょこれゐとが、売っていたから親友たる君に知らせようと思ってね。いやーちょこれゐとは素晴らしい、旅なんて馬鹿馬鹿しくなる」



「小指痛いのは?」



「多分、このちょこれゐとと赤い糸で結ばれていることを知らせて」



「無理があるでしょ。ってか、昨日突き指したって」



「ちょこれゐと ゐず びゅうてぃふる」

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