4.喧騒、街、喧騒。CITY
喧騒、街、喧騒。CITY。しかし本当に悲痛な叫びというものは完全にはかき消されないものだ。今夜も誰か、助けを求める声がビルの間にこだましている。
「助けてー! タスコ&チリホ!」
スチャッ。
「呼ばれた。」「聞こえるよ。」
「タスコ&チリホ! ボクは宿題が終わらないよお!」
「そんなことか。自分でやれ。」「うん。でもやってあげる。タスコが。」
スラスラスラ。
「じゃあ、今度は計画的に。」「あるいは飛んでくるのに見合うほど危険なやつ!」
「ありがとう! タスコ&チリホ! 登校の前日に助かりました! サヨナラ!」
タスコ&チリホ。帰りは歩きと決めている。
歩いて立駐を通り、その天井にはコウモリが数匹垂れさがっている。この立駐から近くには大きな向日葵畑があり、もちろんチリホはその向日葵畑に行きたかった。空に伸びた向日葵に満たない自分の背丈のまま、葉や茎の隙間を走り回りたかった。だが一方で、タスコは早く家に帰りたい。タスコの足が加速する。チリホはその狭い歩幅で精一杯追いつき、自分では考えもつかないことを口にだす。
「タスコは人を家に連れ込むのがうまい。」
「ん? なにチリホ?」
「??」
タスコのアパートが二人を飲み込んで、日が昇る。
先に目が覚めたのはチリホだ。ある気付きに、寝ているタスコの身体をたくさん揺らしている。「タスコタスコ~。起きる~。」
「むー。なにー。朝はまだ長いよ……。」
「タスコ、呆けないで。それより大切なことを思い出した。」
チリホがいつもと似合わないマジメな顔つき。
「タスコ。チリホたち、昨日ヒーローだった?」
「ヒーロー? ヒーロー……ヒーロー……。」
「空も飛んだ。」
「飛翔? ヒーロー……飛翔……ヒーロー……。」
「少年の宿題~。」
「ん!? ヒーロー!?」
バネが作用したようにタスコが布団を跳ね飛ばす。
「そう。ヒーローだった。私たち。」
「ヒーローだった! チリホたち!」
「「ワハハ!」」
二人でポージング! すると突然タスコが。
「うー、貧血とビール不足。」
「うわ~。タスコ~。寝るならヒーローとして付き合う~。」
宙を飛んでいた布団が寝ている二人に降り注ぐ。昼に目が覚めるまで二人で怪獣を殴る蹴る夢をみていた。