1.彼女らは新しい、チリホとタスコ
雲よりも高いところに暮らす俺! 高所恐怖症には決してできない仕事! 俺はCEO。いつだってレンズが黄緑色の狩猟用サングラスをウェアーしている。座る椅子は何よりも高級で、光沢の深い革張りの椅子は夏にひどく暑い。CEOとしての身分も険しい道のりだ。机だって高級そのもの。アジア歴8000年オールドの桜を使用したデスクは表面が花びらで微妙なピンク色がかっている。その色彩がこの部屋にクールをもたらしている。磨いたデスクとCEOのサングラスとがキラリと共鳴。椅子に踵で後方回転を入れる。窓から街を一望して頭に浮かぶ、今後のCEOの考え方。
それはほとんど他愛もない。俺は13人の秘書を呼び出した。
「CEO。どちら呼びですか。」
ミス眼鏡。眼鏡がお似合いの秘書。彼女の問いかけを留めて、俺はしばし秘書共の整列風景を見ている。俺ごとながらビューティフル。日々見る直線ならば、それはできるだけ整理されたものの方がいい。この景色のため、画一の身長を募集資格に追加させたのだ。175cmの秘書たちはシックな服がお似合い。俺は秘書たちの直線を目でなぞる。
「ふん? 俺の直線に欠損部があるな。おい。誰か休暇をとっているのか。」
「いいえ、休暇をとるという報告はないです。」
「出席確認を。」
「りょです。ねえ、ナンバーを。」
いち、に、さん、しっ、ごー、ろく、なな、はち、きゅう、じゅう、じゅういち、じゅうに、じゅうさん。
「全て揃います。CEO。」
「はあ……。もうはっきり言う。そこに立っているお前ら2人は誰だ? まったく背がないじゃないか。子供か?」
俺の指した子供たちが列から数歩出でて言う。
「CEO。私の名前はキシング・タスコです。」
「ゲットバック・チリホだ。CEO。」
続くミス眼鏡の説明。
「はい。彼女らは新しい、チリホとタスコ。」
「いや、俺は名前は聞かなかった。どうして子供が来たかと質問した。彼女たちはどうも身長が足りていない。」
「CEO。すでに私とチリホは面接を通ってやったの。」
「よりてチリホに問題はなし! CEO。」
「うう……誰がこれらを通すた……。もしや身長測定デバイスに不備が……?」
「CEO。落ち着いて。タスコもチリホもとても良い子たちですよ。」
と、ミス眼鏡のレンズの奥が彼女の本当を伝える。温かなスマイル。このミス眼鏡はふたり共の親御のつもりなのか。まるで悪質な遊戯だ。
「ところで面接には、眼鏡さん。あなたが?」
「はい。秘書の一切を任されますからね。」
「はいクビ。」
ショック! ミス眼鏡は眼鏡と一緒に床へ落ちる。かつてはすごく優秀だった。この瞬間で背が175cmを下回ったようにみえてしまう。俺は子供らを向く。
「もっちろんお前らもクビだよ! タスコとチリホ!」
「~~!」「****!!」
これにはタスコもチリホも抗議をする。
だがCEOの俺にとって秘書の身長だけが気がかりだった。測定デバイスを与えてやってもよいが、あえて耳を貸すまではないな。時間の経過、若者の体力不足。まずはタスコからダウンする。床にへたれ込む。
「チチッ、なんで私はまた就職にやり直しになるのか。チリホ、私は怠いんだよ……。」
これに応じてチリホが。
「それ分かる。しかしチリホはタスコにどこまでもだから。」
うーむ。チビとチビの助け合いはあまり見応えがないな……。
「……おいおい君たち、黙っていないでこれらをつまんでお外に出せろ!」
ミス眼鏡、タスコ、チリホ。各2人ずつで持つて扉の外側へ運ぶ。すでに秘書たちは10人になるまで減っていた。3人の新しい175cm秘書と175cm秘書リーダーが必要になったな。解雇した人間は即時に忘却の彼方へ。CEOの考え方は雲の上に浮かぶ。