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六年一組の事件  作者: 包丁
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第九話 店主!店主はいないか!

「コンソメにクリームを混ぜたソースをかけるなんて人としてあるまじき行為だぞ!俺は遺憾の意を表明する」

ゲロはたまたま持っていたレンコンで自分の鼻をブン殴りながら怒ってる。

気持ち悪い顔だな。

「何言ってるの!怒りたいのはこっちよ!」

真横がレンコンの穴に詰まった。

そしてランドセルを放り出すと、中にはココンソメにクリームを混ぜたソースが詰まっていた。

「わぁーおいしそう。まるで夜空に宝石をぶちまけたようだわ」

「何とぼけてるの?あんた達がやったんでしょ!」

こんなおいしそうな料理を、あたし達が作ったって言うの?

どういうこと!?

あたしは、あたしの知らない内にシェフになり料理をしたってこと?

「あたし達がコンソメにクリームを混ぜたソースをランドセルに詰めたってこと?」

あたしはレンコンに詰まった真横をレンコンから引き抜いた。

真横は二センチくらいで細く長くなっていた。

「よくもそんな口がきけるわね!昨日、あたしが塾から帰るとき、後ろから近いづいてきて、いきなりコンソメにクリームを混ぜたソースを作って、それをあたしのランドセルがいっぱいになるまでいれたんじゃない!」

真横はランドセルを見せた。

「ちょっと待ってよ。それじゃあ、いったいこの中の誰がやったっていうのよ!」

模酢が真横に食ってかかった。

「さぁ、目の前で作ってたけど、顔までは見なったわ。顔ってそんなに重要?」

「重要だろ!?なんで目の前で作ってる人の顔見ないんだよ!」

「顔なんってどうでもいいのよ!こんなことする人なんてあんた達くらいしかいないのよ」

いくらなんでも暴論すぎるよ。

でも、今そういうことする可能性が高いのはあたし達しかいないんだもん。

そこに尾田悦子がわって入ってきた。

「まだ、山見さんがやったって決まったわけじゃないのに決め付けるのはよくないわ。たぶんやっているんだろうけどね・・・いや、絶対にやってるね」

「そんなこと言ったって」

ちょうどその時、本多先生が教室に入ってきた。

「どうしたんだお前ら!」

本多先生は偶然持っていた野菜に、コンソメにクリームを混ぜたソースをかけて口に放り込んだ。

「うほっ、うまい」

尾田悦子はいままで何があったのか話した。

本多先生はそんなことどこ吹く風で、コンソメにクリームを混ぜたソースがかかった野菜のぶつぎりを口に放り込んだ。

「うぬぅ。玉ねぎに、にんじん、ナス。どこにでもある野菜だな。しかし、このコンソメにクリームを混ぜたソース!これが野菜になんともいえぬこくのある味を出している。野菜のうまみを破綻させることなく、優雅でいて典雅な味わいが口の中を駆け巡る。店主!店主はいないか!」

その声に教室の前のドアから店主があわてて入ってきた。

「はい!私が店主です」

「そうか!店主にひとつ尋ねたい。コンソメとはなんぞや!」

「コンソメ・・・ですか?」

「そうだ、コンソメだ」

「コンソメとはトンカツです」

「ほぅ、してその意味は」

「意味とかはありません。しいて言えば勘かな」

「じゃあ、トンカツだな」

本多先生は少し寂しげで、それでいて下半身はノリノリでまるでヒラメみたいだった。

あたし達は、次の休み時間に本多先生に職員室に呼ばれた。

「本当にお前たちではないんだな」

何度もこう言うの。

壊れたラジオだってもっといい音色を奏でるわよ。

全然あたし達のこと信用してないの。

信用を得るようなことを、普段してないけどね。

「お前たち、昨日の夕方どこにいたんだ?」

まるでこれじゃ取調べじゃない!

「ひどい!まるで犯人扱いじゃないですか」

「こうなったら白黒つけてやる!なんでも聞いてください!みんなもそれでいいよね」

いっせいに声をそろえた。

「じゃあ、水野。昨日の夕方、何してたんだ?」

「黙秘します」

「いきなり、答える気ないんだもんな!?」

と模酢。

「まぁ、いい。これからは疑われるようなことはしないようにするんだぞ」

「いいのかよ!」

職員室を出て。

「ああ、ハラがたつ!っていっても実際にはハラが高層ビルのようにそそり建つわけじゃないからね」

佳代が悔しそうにニコニコ笑っている。

「こうなったら犯人を見つけるしかない!僕の家は幸いお金があるから、お金を使って犯人をでっちあげてでも捕まえるんだ!お金持ちならなんでもしていいから、どんなことしてでもみつけてやる」

マサコプターが鼻をクルクル秒速20回転させながら言った。

そうよ、そうよ!このままじゃ納得いかないもの。

あたしも鼻をクルクルと回した。

いつもやさしくて、お金持ちを鼻にかけないマサコプターは素敵。

「俺はあいつらが犯人だと思うね」

「おまえ?」

「俺も実際怪しいよ」

「自分のことには自信をもてよ!って誰が怪しいの?」

「あいつだよ」

学校からの帰り道ゲロが重力崩壊を起こした星の成れの果てみたいな顔をした。

団地の近くの公園の脇を通ると菊山達が野球をしている。

「柴山、ミラージュ!ミラージュ!その二塁のベース上でミラージュ!むしろ死んだ方が幸せだったと思うミラージュ!」

菊山達は、あたしたちが見ていることに気がつくとバットをぐつぐつに沸騰させて、インスタントコーヒーを入れてガブガブとした。

「おや、みなさんおそろいで!野球でもしにきたのかな?野球だったらいつでも俺たちはウエルカムだよ」

「なんだって・・・どうする?野球するか?」

「あたし達が!?野球を?椅子をふりまわすことしか能がないあたし達が野球を?」


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