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六年一組の事件  作者: 包丁
8/15

第八話 コンソメにクリームを混ぜたソース

「それよりもう5時半よ」

みんなは帰る準備を整える、あたりはもうお先真っ暗。

「ところで、たまには僕たちと一緒に遊ばない?」

「おまえらみたいな人達とは遊べない」

そう言うと尾田悦子はあたし達に唾をはきかけた。

ゲロはなんだかわからないけど、また動き出した。

気持ちが悪い顔だ。

それからあたし達は授業が終わると、毎日あの空き地に飛んでいった。

飛んでいったって言っても実際は飛んではいないわけだけどね・・・気持ち的には飛んでいったみたいなそんな感じ。

実際少しは飛んでいたかも知れない、二センチくらいなら飛んでいたかも知れない。

さいわい空き地の近くには、パレンケ小学校生は尾田悦子以外ほとんどいなくて空き地はあたしたちがあそこを独占できた。

今回の空き地の件を参考にして独占禁止法について簡単に説明するね。

みんなの周りに空き地は、よりよい空き地を作るために競争をしているの。

別に競争なんて必要ないんじゃないかって思うよね。

じゃあ、競争のない世界を想像してみて。

空き地に入るために二時間待ち、ここはあのアミューズメントパークか!?

せっかく入れた空き地だけど、遊ぶスペースがないくらい物が置いてある。

なんだ、この空き地は!

こんなところにはいられない!

ほかの空き地に行ってやるってみんな思うよね。

でも競争がなければ、どこの空き地に行ってもおなじことなの。

こんなことないように独占禁止法はあるの。

そして事業者が競争をすると、あたしたち消費者はよりよい空き地で遊ぶことができるわけ。

まぁ、はっきりいって今回に関して言えば独占禁止法はまったく関係ないけどね・・・。

自分でもなんでこんなことを口走っちゃったのかまったくわからないよ。

リズミカルに反省。

毎日空き地で椅子を振り回す練習して、学校でも今日はどんな椅子の振り回し方するかマサコプターを中心にして話し合うの。

その会議の楽しいことと言ったら!

もうほかに形容しがたいんだよ。

あたし、椅子をすごく振り回せるようになったんだよ。

ジャストアタッチメントもできるし別荘返しもできるし、ラッキーブリッジもできちゃうんだから。

マサコプターやゲロみたいにはうまく振り回せないけどね。

今日は、オリーブエレクトロン・ヴォルトに挑戦する予定なんだ。

早く放課後にならないかな。

給食を食べ終わった頃、あたし達のところへ浦澤さんて言う子のグループが浮かれてやってきた。

浦澤さん達はレバー料理のような雰囲気。

成績も見た目も普通、あたかも七月のシベリア横断の旅から帰ってきた若者がいささか大人びて帰ってきたような印象とでも言っておこう。

「あたしたちも一緒に椅子を振り回したいんだけど・・・」

ってあたしの顔を、変にいじくりまわしたりせずに言った。

みんなもあたし達と一緒に遊びたがってるってみたいだなって思ってたんだよね。

椅子、振り回すのって本当に楽しいし、なによりマサコプターにみんな興味があると思うし。

ついにきたって感じよね。

浦澤さん達がそう言ったのをきっかけにしたように、

「あたしたちも!」

「じゃあ、俺も!」

「俺は?」

「おまえは?」

「おまえは俺ですか?」

「俺はおまえではないので大丈夫です」

「いいよ!みんなで、椅子を振り回そう!」

みんなで振り回すのは楽しいと思うけど、ちょっと複雑なのよね。

せっかくできた、あたし達の秘密基地がなくなっちゃうんだもん。

少し心が狭いかな?狭いって言っても、そんなには狭くないよ!

八畳位はあるからね、すごく快適に過ごせるくらいのスペースはあるよ。

でも家具がどうしても増えてくるわけだから、どうしても少しは狭くなってくるのはいたしかたないよ、それをどうこう言われちゃうとあたしとしても少しカチンとくるのよね。

五時間目の英語の時間が終わって、六時間目は学級会議。

学校のくだらない行事を決めたり、クラスとんでもない決め事を作ったりするの。

まぁ、あたしとしてはあまりやることのない時間。

机をひっくり返してやるんだ。

議長の尾田悦子に指名されても。

「黙秘します」

の一点ばり。

すると花島真横が手を上げた。

「はい、花島さん」

尾田悦子に指名された、花島真横は勢いよく立ち上がりよく響く声で。

「最近、家に帰らないで遅くまで遊んでいる人がいます!その人たちは椅子を振り回すような危険な遊びをしています」

ちょっとそれってもしかしてあたし達のことじゃない?

花島真横は、あたし達の方を見た。

その顔が憎たらしく、憎たらしさに対する感受性が人一倍ナイーブなあたしは突然変異を起こしそうなほどアタマにきてしまった。

尾田悦子の横で見えない敵と戦っていた本田先生は。

「椅子を振り回す危険な遊び?誰のことだい」

「ブタの脂身を振り回してるのは僕たちのことだ!」

マサコプターが立ちあがった。

ブタの脂身なんて振り回したことあったっけ?

「ブタの脂身の話なんて出てきてないだろ!?」

模酢は頬をすこし赤く染めて立ち上がって突っ込む。

マサコプターはポケットからブタの脂身を取り出すと、本田先生の口にねじ入れた。

「味つけは、塩をお好みの量で召し上がってください」

「食べさせちゃったよ!なんで、そんな物、もってんだよ!」

「おお、この脂身の甘いことといったら・・・まるで角砂糖を十二個口の中にいっぺんにいれてるようだ。しかも脂身のもつ独特の臭みが、まったく消されることがなく。臭いよ。それに火を通してないからニチャニチャと歯にまとまわりついてきて、不愉快」

「すごくまずいことは伝わってくるな・・・ってか意味わかんないよ!」

模酢の突っ込みです。

「つまりアレだな、ブタの脂身を食べてわかったんだが、椅子を振り回すのは危険だな」

「なんでー!?」

「そんなことありません!」

と怒った様子でマサコプター。

あたまから椅子を振り回すことが悪いって決め付けちゃって!

それは確かに椅子本来の使い方からしてみたら少し違うかもしれないけど、だからって否定してばかりでは新しい物が生まれなくなってしまう。

「先生は・・・感心できないな」

本田先生なんて大きらい!

学級会議が終わったあと、さっき椅子を振り回すのに入れて欲しいって言ってきた浦澤さん達やってきて。

「やっぱり、椅子振り回すのやめる。危ないもの」

って言ってきたの。

佳代はしいたけとマッシュルームが混ざったような顔で。

「先生がうるさいから?それとも私が危ないのかい?」

「両方」

浦澤さん達は口をあけたり手を伸ばしたり、床の上をごろごろと転がっていた。

水曜日の朝。

椅子を振り回してるせいで成績が下がった、なんて言われるのがイヤだから今日から毎日、早く学校にきて授業が始まる時間まで勉強することにしたの。

するといきなり、花島真横達のグループが教室に走りこんできてあたし達のグループを見つけるやいなや。

「こんなところにいたのね!」

そう叫んで

「これでも食らえ!」

コンソメにクリームを混ぜたソースをかけた!

「うげぇええ」

「みぎゃー」

「ぎにやぁぁぁ」

あたしたちの服がおいしそうな匂いをあげた。

あたしの着ていたおニューのピンクの甲冑が大皿料理みたいになっちゃったよ。


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