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六年一組の事件  作者: 包丁
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第三話 転校生

「ほら、椅子を振るときこうやって腰をくるっとしなきゃダメ。腕の力だけでは椅子はうまく振り回せないよ。足は少し浮かせて、体重を移動しやすくして!膝は柔らかく使って!毛穴の黒ずみの原因となる余分な皮脂を吸い上げて!豚骨を粉砕してうまみを搾り出した濃厚なスープにタマネギやニンニクの風味を加えて!」

彼の言ったとおりにしたら、なんだか力が抜けてコンパクトに椅子を振り回せるようになった。

燃え盛る炎の中も気にせず歩けたのよ。

もちろん少しは燃えたけど・・・木造二階建て延べ七十五平方メートルを全焼。

これはあたしのせいじゃなくて、風のいたずらみたいなところあるからね。

それはそれとして、こんなに椅子を振り回せたの、はじめてよ!

彼は炎の中で椅子を振り回しながらやってきて。

「ところでなんで、なんの目的で炎の中なんて歩いてるんだい?炎が好きなのかい?」

って笑いながら言ったの。

ちょっとなんて素敵な笑顔なの!

「なんで炎・・・お前の胸に聞いてみろ」

「はい」

ってニコニコしている。

「聞いちゃったよ!」

あたしは言った。

「シモドロコンジョ」

いつのまにかゲロがあたしの3センチ前に立っていた。

彼は。

「シモドロコンジョってなんだい?」

ゲロは普段は暖かい海域の水深百メートル前後に分布しているみたいな顔をしているけど、今は醤油と油のしみこんだみたいな感じになっている。

「シモドロコンジョってなんだいって?おまえ・・・チャーハンのことじゃないか」

シモドロコンジョってチャーハンのことだったんだ、あたしはてっきり次世代家庭用ゲーム機のことだと思ってたのに・・・。

「チャーハンならつじつまがあうね」

彼はニコニコしている。

模酢が。

「つじつまあっちゃったの!?」

彼があうって言うんだからいいじゃないの、模酢ってば細かいこと気に過ぎガールだから麻酔銃で眠らせて、森に返してやりたい。

「よし、おまえ俺と相撲で勝負しよう」

なんてゲロが言い出しただけど。

ゲロはとにかく強いのよ、彼がひどい目にあっちゃうよ。

「いいよ。じゃあ」

っていった瞬間、彼はゲロを椅子でフルスイング!

でもみねうちだから大丈夫。

勝負はよりきりで彼の勝ち。

彼は。

「じゃあね」

って言うとあっという間に走っていってしまったの。

あたしと模酢と佳代はただその様子を見ていた。

あとゲロは地面で寝ていた。

のんきなやつだよ、まったく。

翌朝のシュメール私立パレンケ小学校、六年一組の教室。

昨日はあの、謎の男のことばかり考えちゃってすっかり宿題のこと忘れちゃったのよね。

今朝は大慌てってわけ。

「えーっと一般相対性理論ってなんだっけ?」

「時空四次元が重力でゆがめられたのを曲率であらわしたやつだっけ?」

「じゃあ、重力場の方程式と、アインシュタインの運動方程式ってなんなの?」

模酢や佳代も宿題を忘れて、三人でない知恵をふりしぼってるのよね。

「そんな問題で苦しんでいるの?まったくレベルの低い連中」

と言って、あたしたちのことを薄汚いものでも見るような目で見たのは花島真横!

成績は優秀で、見た目もかわいいんだけど中身はドブよりも汚い女。

「くく!レベルが低いって何よ!」

佳代が少し声を荒げて言った。

そうよそうよ、レベルが低いなんてひどいんじゃない!

「レベルが低いのはゆりだけよ!」

「まったくよ!」

「認めちゃうの!?そこは認めなくてもいいところだよ!」

模酢のおきまりのつっこみ。

「もう、そのくらいにして。先生がくるわよ」

クラス委員長の尾田悦子が静かに言った。

尾田さんは責任感の強いがんばりや。

みんなからの信頼も厚い。

顔の皮膚も厚い。

「ほら、私のノート写していいわよ」

「本当にいいの?ニューメニア語で写して」

ニューメニア語とはあたしが独自に開発した、宇宙のどこかにいるはずのニューメニア人と会話するための唯一の言語なのだ。

「じゃあ、あたしはモロスリ語で写すわ」

このモロスリ語と言う言語は、佳代があたしの許可もなく勝手に作った邪教の言葉。

「いや、二人ともその何とか語で宿題写してもいいけど・・・たぶん先生読めないわよ」

そういや先生、ニューメニア語読めないんだっけ・・・本当に使えない先生よね。

ニューメニア語読めなくてよく先生になれたもんよ。

「もう、二人は勝手にして。あたしは日本語で写させてもらう」

模酢はもくもくと悦子のノートをうつしている。

あたしたちがノートを写し終えた頃、担任の本多先生が教室に入ってきた。

本多先生は50歳くらい。

いつも見えない敵に向かって戦いを挑んでいる、ごく普通のなんの個性もないつまらない先生なの。

その本多先生の朝のHRの時間。

本当につまらないのよね。

「えー今朝は倒すか、倒されるか、格闘技の原点のような一日にしてほしい!先生はそのために体を触るなど、わいせつな行為をする準備がある」

いつもならこの挨拶だけで終わりだが、今日はさらに続いた。

「あと、君たちに新しいお友達を紹介しようと思う」

転校生!?いったいどんな子かしら?楽しみ!

「お父さんの仕事の都合で、転向してきた。紳麻正信」

先生にそう呼ばれると、「はい」という返事と一緒に、教室に男の子が入ってきた。

あたし、佳代、模酢、ゲロはその顔に見覚えがあった。

あたしは。

「あー昨日の!ヘリコプター」

佳代は。

「お母さん!」

ゲロは。

「真犯人はKだ」

模酢は。

「一人としてあってねえ!なんだよヘリコプターって!?人間ですらないじゃないか!お母さん、間違えるならお父さんだろ!それでもおかしいけど、百歩譲って!真犯人も何も犯人ってなんだよ!」


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