第14話 痛みレベル:★★★★★★★★★★★
【痛み、苦しみレベル】
表現方法:★☆☆☆☆
【目安】
★1=深爪、引っかき傷
★2=歯が染みる(虫歯C2レベル)、どこかに体をぶつけた、風邪
★3=虫歯(虫歯C3レベル)、捻挫、骨のヒビ、インフルエンザ、乗り物酔い
★4=骨折、麻酔無しの縫合、骨を折りながら殴る、帯状疱疹、バット折失敗
★5=新型コロナ、全身麻酔が切れた手術後、ギックリ腰、金的攻撃
【8/20(火)総合病院/口腔外科】
11:30――
皮膚科でも迷子になったが、口腔外科は病院の中でもかなり端にあり、滅茶苦茶迷子になりながらたどり着いた口腔外科――
「内科と皮膚科の診断を見ました。ここ、口腔外科で対処しましょう。では麻酔を打ちます。ちょっと痛いです」
(本当にちょっとだけ痛い。もう痛すぎて針を刺す程度では……)
「メス」
(メス!?)
その言葉に驚いた。
メスは言うまでも無く人を切る為の治療道具。
医者はこの世で唯一、合法的に人間に刃物を入れられれる事の出来る職業。
俺は全身麻酔でメスを入れた事はあるが、部分麻酔の覚醒状態でメスを入れられるのは初めてで、おっかなびっくりだったが、痛すぎて麻痺しているのか、先生の麻酔の腕が素晴らしいのか、切っている感覚すら分からない。
「ドレーン」
(ドレーン!?)
作品名を出して良いのか分からないので、あえて言葉を濁すなら、俺は『超医者イニシャルK』と言う医療漫画の愛読者で、素人ながら多少の医療知識がある。
ドレーンは溜まった体液を体外に排出する管である。
それを差し込むって事か!?
俺は口からぶら~んと管が伸びている姿を想像したが、少し違った。
歯茎から5mm程度の外にでる程度の長さであった。
麻酔のお陰で痛くは無かったが、そのあと、鼻横の膿が溜まった個所を押し、ドレーンから膿を強制的に排出させた。
(痛ッた!?)
歯の麻酔はしても、顔までの麻酔は効いていないので、この膿絞りだし作業が超痛い!(痛みレベル:★★★★★★★★★★★★★星14(痛覚昇天))
なお、この膿の大きさは、顔を触った感じ、上唇から右目のすぐ下の縦約5cm、横5cmの塊となっていた。
イメージ出来ない方は、超でかいニキビと思って頂きたい。
多分、顔面に針を刺したら、膿が噴水の如く噴き出るだろう。
ともかく、その膿が排出され圧力が減ったのか、少し楽になった。
「この膿と血液を検査します。その間、痛み止め、抗生物質、生理食塩水を点滴で入れます。検査と点滴で1時間は掛かりますのでお待ちください」
「はい……」
この時、普通に『はい』と言えたのは気が付かなかった。
なお、点滴の効果は抜群で、抗生物質の効果は体感できなかったが、それでも痛み止めは★5つレベルまで一気に下がった。
ギックリ腰クラスの痛みに安心感を覚えるのは、何とも不思議な感覚だった。
1時間後――
「これが検査結果ですCRPの値が異常に悪いですね」
CRPは炎症の値で、普通は限りなく『0』に近い値がでるが、検査した所『24.95H』と測定値が出た。
この『H』が何の単位かは分からないし、『基準値0で結果が約25だから25倍……いや0に何を掛けても0か』などと下らない事を思ったりした――
「10以上だと入院を考えなければならないですけど、この御時世、ベッドの確保が難しいのが現状です。また見た限り膿は顔面表層に溜まっているので緊急性は無いと判断できます。もし眼球や頭部内部まで膿や菌が侵食していたら即入院ですが、そこまででも無さそうです。今日点滴した結果を明日測定して、その数値で入院の判断をしましょう」
この辺の話は、正直よく覚えていない。
痛みと5日間の不眠で意識が朦朧としていた。
確かこんな事を言っていた気がする。
「明日ですね。わかりました……」
帰途に就き家に帰ると、体を洗ってベッドに飛び込んだ。
5日間不眠だったのだ。
麻酔と痛み止めが効いている今なら瞬殺で寝られると思ったが、意外と寝られず驚いた。
それでも15:00頃には眠ったと思う。
だが0:00頃に起きてしまった。
5日間不眠で、9時間で満足してしまうとは!
24時間位、平気で寝られそうだったのに、人体とは不思議なものである。
痛みに耐えている時には全く効果なかった睡眠導入剤を飲んで改めて眠りについた――