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答えの先は始まり 2

――この試練を終わらせられるのは、ユメ、君だけなんだ。



 頭の中でラクスの声が反芻する。ラクスと別れて、もうどのくらい走り続けてるのだろう? 時間の感覚が鈍くなっているらしく、どれほどの時間、また距離を自分が走っていたのがサッパリ分からない。



 いつ消されるか、また魔物が出てくるか分からないこんな物騒なところを一人で走ってるなんて、いつ腰が抜けて動けなくなってもおかしくないくらい恐ろしいが、今は無理矢理その恐怖という感情に蓋をして目をそらす。


 無理して走り続けているせいか、横の脇腹が痛い。ラクスは最奥の泉はそう遠くないといった。今はとにかく、早くこの試練を終わらせてしまいたい。そうしたら、きっとレニタスやイグニフェルとも会える――。



 足に急ブレーキをかける。ラクスの光を離れ、暗い闇の中を走っていたため、1,2mの範囲内しかあたりの様子を判別することはできない。そして今ふっつり足をとめたのは、そこから2mくらい離れたところで見えたからだ。



 泉ではなく、壁が。


 言うまでもなく、行き止まりである。見回すと、あたりが広場のように拓けた場所になっていることは、なんとか察することができたが、ユメの左右にも泉は見当たらない。



 「え、なんで!? 最奥に泉があるはずじゃ……?」


 呟きながらも探るように一歩を踏み出すと。ユメは本気で心の底からもうこりごりだと思った。

 地面から湧き出る緑色の光。言わずもがな魔法陣。


 しかし今回は足の自由を奪われるようなことはなかった。警戒してあたりを見回す。とりあえず、魔法が発動したのだから何かが起こるはずだ。何も起こらないというのなら、それはそれは大歓迎だが。



 だがもちろん、ここは試練の場。そんなに甘くなかった。



 ゲコゲコ。ゲコッ。



 「もしかして、か、カエル?! 嘘でしょ」



 背後に確かにその声を聞いた。しかも複数、そしてこっちに向かってきている。ウサギの集団の後はカエルの集団らしい。まだ暗がりでよく見えないが、怪物と化している可能性がある。ただでさえ、人間界のミニサイズでもその気持ち悪さは脅威的であるのに。


 とりあえず、ユメはパニックに陥りそうになるのを唇を噛み締めて抑えた。目前に迫る危機。気持ち悪さはともかく、襲い掛かってこられたら術の使えないユメが応戦できるわけがない。どこかに何か仕掛けがあるはずだ。何かがあることを祈りながら、突き当たりの壁やその周りを急いで見てまわる。あるはずの泉がない。ということは、どこかに泉を出す仕掛けがあるはず。拓けた所の壁を伝って、ぐるりと一周する。


 背中で感じる迫ってくるカエル達の気配。振り返ってその姿を見たら、気絶してしまうかもしれない。


 

 そして、見つけた。突き当たりの壁の右端。かけられた丸い板の上にはレニタスの消えた時にあった壁画に似た画調で描かれた何かの図。よく見ると白い半球と橙色の半球、そして青い半球がそれぞれ別の位置に浮き出ている。左から橙、青の順で円板の中央あたりに間隔をあけて半球が固定されている一方で、白の半球は弧を描くように回せる仕組みになっているのが、円板に入った切り込みから分かる。

 



 手を触れると指の先が、まるでフワっと温かくなる。次の瞬間、声を聞いたわけでもないのに、テレパシーのように頭の中で聞いたこともない言葉が反芻した。




――月が闇に食われる時、泉は現れる


 泉を出すためのヒントなのだろう。だがどういう意味なのかさっぱり思いつかない。


「月が闇に、食われる? どういうこと!?」



「ゲコっ」



 すぐ傍に鳴き声を聞いて、振り返らないと心に決めていたもののつい振り返ってしまう。予想を裏切らない怪物サイズのカエル達。大きく上下する滑った白い喉元が暗闇で光っているため、4mほどの目前まで迫っていることが分かる。



 ユメは眩暈を覚えた。自分はあんなに気持ち悪いカエルに襲われて死ぬんだ、と絶望が広がる。



 でも、諦めたらだめだ! 


 諦めが得意だったユメが、初めて自分を叱咤する。


 ラクス達はどうなるの? 自分だけの問題じゃない。考えなきゃ。



 もう一度円板を凝視する。そして、はっと気づいた。見覚えがある。あれは確か理科の授業で――。


――月が闇に食われる時


 何て自分は馬鹿なんだろう。ユメはさっきまでの自分を呪った。言葉からして、そして円板からして、答えは明瞭。



 月食。

 

 地球が影になって月食は起こる。


 急いで白い半球に手を置くとぐるりと回して、橙と青が描く線上にもってくる。


 そして、振り向いた。瞬間、巨大なカエルが上から飛び掛ってくるのが見える。悲鳴をあげながら横に飛びのくユメ。カエルが勢い余って先程までユメが立っていた壁に衝突するも、すぐに体勢を整える。


 慌てて距離を持とうと向きをかえて数歩走りかけ、そこで視界に入ったものに、全てにユメは感謝した。


 目の前で銀色に輝く泉。


 どれくらい深いのだろう、溺れないだろうか、なんてことはもはや全く気にしなかった。



 ユメは迷わず一歩踏み出すと、再びカエルが襲ってくるより先に、泉に目を瞑って飛び込んだ。



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