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紫の洞窟 9

「それでは、準備はいいですかな」


 いろんな種類の花々が咲き乱れる庭で、ゲントゥムが他の4人を見回す。


「お願いします」

 ためらうことなく、ラクスが言う。


 ユメは押し黙ったまま、足元を見つめた。

 ラクスは聖地は試練の場でもあると言っていた。

 ゲントゥムやラクスの言い方からするに、容易く行けるところではないことは明らかだ。

 次第に心拍数が上がっていくのを感じ、ユメは落ち着くようにと自分に言い聞かせる。


 ラクスは身の安全を保証すると言った。

 この言葉は、嘘偽りのない誠実なものであると信じよう。



「それでは」

 ゲントゥムが4人は見守る中、目を閉じ、静かに右手を顔の前に上げた。

 まだ低い位置にある太陽の光に手をかざすかのように、手のひらを斜め上に傾かせている。

 傍でも感じる、集中力と気迫。




「月の精霊の始祖、セレーネよ。闇夜を照らし真をみちび――」


 ふいにゲントゥムの声が止んだ。

 見ると、庭に面した森のある一点を強張った表情で睨んでいる。


 ラクスもふと何かに気づいたように同じ方向に視線をあわせた。



「どうしっ――」

 ユメが聞きかけた時、イグニフェルがユメの前に飛び出した。

「下がってろ。来るぞ!」


 次の瞬間、皆が睨んでいた一点次々と黒い物体が飛び出してきた。

 ダークリットだ。


 ユメがダークリットに会うのはこれで3回目だが、今回は5体ものダークリットが目の前に立ちはだかっている。

 人の形をした影のようにも獣のようでもある。



 そして――。




『はぁ……た、助けてくれ』

『お母さん、怖いよう。どこにいるの?』

『ああああああああ! あああああああっ!』


 絶叫しているもの、泣き叫ぶもの、助けを求めるもの。


 前回よりもはっきりと聞こえてくる声々。

 ユメは震えだした。

 たまらず、一歩後退した時に、イグニフェルの周りに突然5個の大きな火の玉が発生した。


「ラクス、レニタス、じーさん、下がってていいぞ。俺がやる!」

 堂々とした宣言と同時に、火の勢いがボンという音を立てると共により盛んになる。

「やるなら、さっさとやれ。ためるな」

 ラクスがめんどくさいといった表情で返す。



「よし、行っ――」

「待って!!!」


 イグニフェルが攻撃をしかける前に、ユメは思わず声を張り上げてそれを阻止した。

 なんだよ、と怪訝な様子でイグニフェルが振り返る。



 ユメがゴクリと唾を飲むと、口を開いた。

 また錯乱していると思われてもいい。

「やっぱり聞こえるの!」

「ユメ?」

 ラクスが不思議そうな顔でユメを見つめる。

「やっぱり聞こえる! 信じてもらえないかもしれないけど、やっぱり声がこのダーク――」

「伏せろ!」

「ラクス様!」


 イグニフェルが覆い被さるようにユメを倒し、レニタスはラクスの前に飛び出た。

 お互い向き合うように柔らかい芝生の上に倒れた刹那、イグニフェルの頭上をかすめて弾丸のように通る黒い影。

 同時に風がかまいたちのように動き、ラクス達のいる方向から「ギャアアア」という断末魔が聞こえた。


 次の瞬間にはイグニフェルがユメの上から素早く退いたので、慌てて身を起こして後ろを振り返ると、 ダークリットがまたユメ達に襲い掛かる体勢を整えていた。


 が、声が聞こえる別の方向を見ると、さらに二体のダークリットがユメの方へ襲い掛かろうとしている。

『力が欲しい。力が欲しいぃぃぃぃ!』


 ラクス達側の方から聞こえる2回目の断末魔。

 そして、ラクスの声。


「おい、ユメ、避けろ!」


 ラクスが叫び終わらないうちに、三体のダークリットがほぼ同時にユメの方へと襲い掛かる。

 と同時に、迎え撃つ術を繰り出すラクスとイグニフェル。

 その二人を、突如地面から漏れでたまばゆい光が包んだ。


「ちょっと待て、なんだこの光!?」

「これは……?」

「ラクス様?」

 レニタスが心配してラクスに駆け寄るのを目の端でとらえたが、ユメにはその二人を気にしている余裕はなかった。


 光に妨げられ術を阻まれたラクスとイグニフェルを通り過ぎ、ダークリット達ががユメに襲い掛かる。

 肌で感じられる猛獣のような残忍さ、異様で強烈な気配。

 ユメは恐怖で動けなかった。


「ユメ!!!」

「ユメさん!」

 ラクスとレニタスが叫ぶ。



 観念して、手で顔を覆い目を閉じる。


 一番先に飛び出したダークリットがユメに触れようとした時だ。


 何かが両耳すれすれでで大きな音をたてて爆発した。

 その後聞こえる、3つの断末魔。



 顔から手を下ろすと、3つの影が霞んで消え去るとろだった。


「え……?」


 レニタス、ラクス、そしてイグニフェルまでも皆が驚愕の表情でユメを見下ろしている。


 ただ一人、この茶番劇に頭から不参加だった者をのぞいて。

 



「いやぁ、見事な威力ですな。私の読みははずれてなかったということだ」


 ゲントゥムが満足そうに笑みを浮かべながら、ユメに歩み寄る。



「あなたに張られた、シールドは見事なものだ。かなりの強力な術。だがこのままでは、術が強力すぎてあなたの体に負担を与える。他人からかけられた術は、所詮他人のもの。自分の体に馴染むことはない。強力な術をしかも長期でかけられているとなると、あなたの生命力と相克してしまう」



 ユメを始めとして、その場にいた者はぽかんとしてゲントゥムを眺めた。

 ゲントゥムは当然固まっている空気にかまわず、話し続ける。


「文句はいろいろあるだろうが、あなたが紫の洞窟の最奥にある銀の泉に辿り着いた後で聞きましょう。幸運を祈ってますぞ」



 ユメのすぐ傍でぴたりと足を静止させたゲントゥムは、再び目を閉じ右手をあげた。

 そしてまるで、誰かが口を挟むのを牽制するかのように早口唱えた。


「月の精霊の始祖、セレーネよ。闇夜を照らしまことを導く力、我に与えよ」

 ゲントゥムから溢れ出る眩い光。


「真実を求める者、この者達に祝福を与えん。いざ、我らが聖地、クレセレネを開け」


 ゲントゥムが言い終わると同時に、ユメは視界が暗くなるのを感じた。

 頭首会議で感じた、黒い雲に包まれる感じと酷似している。

 

 ぼんやりとしてる間にそれは次第に濃くなっていき、何かを思案している様子でユメを見下ろしているゲントゥムもそして辺りの様子も、何もかも見えなくなる。


 やがてすっぽりと闇に包まれ何も見えなくなった時、ユメは自分が地面を突き抜け、下に落ちていくような感覚をを覚えた。


いつも読んでくださってありがとうございます。


雑記ですが、「紫の洞窟」と名付けた話数が予想以上に長くなって、絵的にみっともない気がしてうーんうーんと悩んでおります。笑 近々、編集するかもしれません。


あともう少し進んだら、急展開が待っているのですが、少しでもうまく表現できるよう頑張って生きたいと思います。


これからもよろしければ、どうぞお付き合いお願い致します。

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