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紫の洞窟 3

ゲントゥムは一番奥の席に座っているが、話し始めると同時にテーブルに両肘をついて、ユメをじっと観察するように短い銀色の髭が生えた顎の下で、両手を組み合わせた。


「王族の者が解けないほどの術、それはここにいる頭首と同等あるいはそれ以上の者がかけた可能性が高い。しかもかなりのエナジー使ったか複数の精霊が結託してか。その者の経歴は調べたのですかな? 私はかけられた術よりも、なぜその女子おなごにそんな強力な術がかけられたのかが気になる」


ラクスの真横より一歩後ろにいたユメは、ラクスの口元が少しだけ緩むのを見た。

まるで、その返答を待っていたというような余裕の表情。


「ええ、さすがゲントゥム様。その通りです。それこそが、僕がこの子をこの洋館で監視していた理由。危険な存在なら術を解くのではなく無理矢理、破壊すればいい話、まぁその結果、この子の命も破壊されることになる可能性が高いですが。しかし、一応調べておいたほうがいい、国を司る王族として」


淡々と話すラクスにユメは混乱した。

どこまでが本当で、どこまでが嘘のことなのだろう。

危険な存在だったら、ラクスはユメのことをとっくに殺していたのだろうか。



「もちろん。経歴を調べようとしました。しかし錯乱の術もかけられているようで、聞きだすことはできませんでした」

「錯乱?」

日の精霊ソラが鋭く聞き返す。

「えぇ、この子は自分が人間界から来たと信じきっています。先日フローラがこの子をカスミソウの精霊だと嘘をついたのは、この子が錯乱していることで恥をかかせないため、また僕が事が大きくなるのを案じて口止めしていたせいで。アルボア様、そこは大目に見て頂けるでしょうか?」

アルボアがゆっくりと、意味深な様子で頷く。


ユメはグラリと地面が揺れたように感じた。

思わず両手が震える。

どこまでが本当で、どこまでが嘘なのだろうか。

もしかしてラクスはずっとユメのいうことを信じてくれていなかったのだろうか。

レニタスも、そしてフローラも。

突然、突き放されたような、泣きたい気持ちに駆られる。




「人間界からやってきたって、傑作な錯乱だなぁ。ハハハハ」

豪快に笑うアウルムの横で、ルチアが身を乗り出す。

「確かに、驚きですな。一体誰が何の目的でこんなことを」

ユメは、いよいよ全身が震えだすのを感じた。

目を瞬いて、悔しさや不安で泣き出したいのをじっと堪える。

「すげーな、おめー人間界からやって来たのか! おい、人間界がどんなだか話せるのか? 知ってるなら王立研究所の気難しい奴らも顔負けだな!」

明らかに面白がっている様子で、イグニフェルが言う。

「マレちゃん、こんな術初めて見た。大びっくりかも!」

ソラとゲントゥムはじっと無言でユメを凝視していた。

「確か名はユメさんとおっしゃいましたよね? 本当ならですが……。とにかくこの方は今とても怯えてらっしゃいますから、皆さん言葉には気をつけましょう。無理もないです。こんな子に、ひどい術を幾重にもかけるとは、誰がこんなひどいことを……」

周りを窘め、問うアルボアに、ラクスは相槌をうった。



「僕も大変興味があるところです。『誰』が、『なんの目的』でこんなことをしたのか。皆さんも、容易にご推察されることと思いますが、闇の精霊がもし関わっているのなら、しかも近年謎の出現、そして増産されているダークリットに何か関係があるのなら間違いなく大事おおごとです」


「そういえば、ここに来る前わしはダークリットに三度も会いましたぞ。それに関係があるとおっしゃっいているのですかな?」

ルチアが興奮した様子で言った。

「そういえばマレちゃんもここに来る前、2回ダークリットに会ったよ! まぁすぐに退治しちゃったけどね!」

「僕が初めてこの子にあった時、実はこの洋館にそう遠くない森の中で会ったのですが、この子はダークリットと一緒にいました。まぁ、一緒にいたというよりは、襲われていた、とういう方が正しいですが。なので、関係がある、とは今断言できません。それを調べるために調査が必要です」


ラクスはそこで一拍おいた。

頭首の誰もが、真剣にラクスの言うことに耳を傾けている。

ゲントゥムは両手を組んだまま、目を閉じて聞いていた。

一方ユメはというと、依然として震えながらたっていた。それでも唇はかみ締めていた。

絶対泣かないぞ、と心に決めながら。

注目されるのも、笑われるのもうんざりだ。

極度の緊張状態が続いてるからだろうか、目の前が一瞬暗くなるのを感じた。

真っ暗ではなく、まるで夜の雲がユメの視界を遮るような感覚。

ラクスが話を続ける



「先ほども言ったようにこの術を破壊することは可能だと思います。僕は大技を使ってか、あるいは頭首方の力をお借りして、いや誰か一人僕にお力添えするだけで十分でしょう。しかし、それではこの子が死んでしまうだけでなく、かけられた術から得られる情報も同時に失ってしまう。それは何としてもさけたいところです」



「甘いですな、ラクス様」

ラクスに水をさしたのは、ゲントゥムだった。

皆が一斉にゲントゥムの方をみる。

ユメの視界が途端に明るくなった。





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