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プロローグ

「勇者よ。其方そなたは、何故戦う?」


 天井は崩れ、壁すらも形を失いつつある城の中。


 魔王と呼ばれる少女が満身創痍の勇者に問いかける。


「僕は……人の幸せを守る為にここにいるッ!」


 勇者は皆から託された想いを胸に、迷うことなく魔王の問いに答える。


「そうか。では、聞こう。其方の考える幸せとは何だ?」


 この質問に何の意味があるのか。勇者は分からないと言った面持ちで答える。


「みんなが笑い合える、平和な日常を取り戻す事だ」

「そうか。では、聞こう。その平和とやらは、魔王が死ねば訪れるのか?」


 返答を聞いた魔王はさらに勇者へと問いかける。


「当たり前だ。だから僕はここにいる」


 確固たる信念を持ち、揺らぐことのない瞳で勇者は魔王の質問に答える。


「愚かだな」

「どういうことだ」


 自身の信念を嗤われ、勇者は満身創痍の身体で魔王へと剣を突きつける。


「貴様らのいう魔王とは全ての不条理、全ての災いの象徴。

 つまり行き場のない怒りを押し付ける体のいい言い訳に過ぎん」


 そう言って魔王は勇者の信念を否定する。


「ふざけるな! あれだけ罪の無い人達を殺しておいて」

「其方ら人間でさえも、善と悪を併せ持つ。

 悪い人間ばかりではなく、善い人間もいる。魔族もそうかもしれぬと何故考えない?」

「詭弁を弄するな! お前たちが人を殺した事に変わりはない」


 魔王の訴えを勇者は切り捨て、剣を構える。


「そうか、其方もか。残念だ。

 勇者である其方であれば、魔族と人の共存の未来を共に探せると思ったのだがな」


 勇者の構えに魔王は落胆し、人と魔族の溝の深さを自覚する。


「もし、君が本当にそう思っているのだとしても。僕には魔族との共存という道は取れない」


 落胆する魔王の姿を見て勇者は共存の道を考えるが、過去の憎しみがそれを否定する。


「ならばもう、何も言うまい」


 そう言うと魔王は一歩踏み出し、構える勇者と対峙する。


「来なさい」


 魔王がそう告げた瞬間、再び人と魔族の戦いの火蓋が切られた。

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