後悔の念に駆られる
~ウィルフレッド~
手紙の返事が来た。また断られる事になった……
婚約者候補だった頃は毎週会ってたのにな……
宰相曰く、カテリーナの元には、求婚が絶えないらしい……
だろうね。そう思います。
学園でカテリーナを見かけたので、声をかけようと思ったら、義弟のやつに邪魔をされる。
学園で王子であると言う身分を使うわけにはいかない……
はじめはブラッドだけが邪魔をしていたのに、最近ではカテリーナのクラスの男子生徒が皆私とカテリーナを近寄らせないようにしているようにも感じる……気のせいだろうか。
カテリーナもカテリーナでまったく私の存在に気が付かない! どうなっているんだ! 自分で言うのもなんだが、学園で一・二位…五位内に入るイケメンだ! 将来も有望!
なぜカテリーナの視界に入らないんだ?
誘いの手紙にも乗ってこない……夜会にも参加しない……学園でも近づけない……どうすりゃ良いんだ。
こうなったら攫って……いやそれは紳士として絶対してはならない……!
これが恋というものならば、危険な思考では無いか! 恋とは犯罪行為にまで手を染めるものなのか……?
今日はカテリーナのクラスで調理実習があったらしく、クッキーを作ったようだ。可愛らしくラッピングした小さな袋を手に持っている。
近くに寄れないから、仕方なく双眼鏡で見る事にした……
クラスメイトと笑い合うカテリーナの可憐な事よ……そのクッキーを私にも分けてくれ。一体誰に渡す……義弟かい!
双眼鏡を持つ手が怒りに震えた……
「またあいつか!」
「殿下ともあろうお方が、何をなさっておいでですの? バードウォッチングという訳ではなさそうですわね……」
同情するような目つきのマドレーヌに声を掛けられた……
「……美しく可憐な鳥がだな……美しいその声で私の名前を呼んでほしいと思ってだな」
しどろもどろに説明する。
「成程……殿下はカテリーナ様に名前を呼んで欲しい……と」
うふふと笑い声を漏らす。
がくりと肩の力が落ち、観念したかのように身を小さくさせる。
「マドレーヌに相談するのもおかしな話だが、カテリーナの顔が頭から離れないんだ……カテリーナに微笑まれたい、どこにいてもカテリーナを見てしまうし、誘いを断られたら、夜も眠れない…さっきは攫ってしまえば良いのでは無いかと危険な思考まで……」
机に伏せるウィルフレッド。
「みんな私をカテリーナから遠ざけるんだよ……こんなにカテリーナに会えないなんて禁断症状が私を危険な思考にさせるんだ」
元婚約者候補のマドレーヌに言うのもなんだが、マドレーヌは幼馴染であり友人であると言う事が分かり、互いの認識は一致した。
一方カテリーナへの思いは募るばかり……
「……マドレーヌ、どうすれば良いと思う?」
小さな声で恥を忍んで相談する。
「……殿下、恋をしたのですね?」
マドレーヌが嬉しそうに聞いてきたので、うんと頷いた。
「あらあら……ふふっ……良かったですわね。憧れていたのでしょう? 告白なされば良いのに」
楽しそうに言うな、会うこともままならないのに。幼い時から器用で、なんでもできる方だと思っていた。それは勘違いだったけど、欲しいのはカテリーナの心なんだ……
「カテリーナが誘いに乗ってこない、断られる一方だ、心臓が持たない……」
泣き言まで言ってしまう。
「お手紙で告白されればよろしいのでは?」
「手紙ではなく直接言いたい……私がバカだったと詫びたい。その後に気持ちを伝えるのが筋だろう……」
「真面目ですこと……少し強引に行った方がいいかもしれませんね……カテリーナ様は、その……ご本人は全く気づいていませんが……とてもモテますのよ? 側にいるのがブラッド様だから、安心できるのです。ブラッド様を差し置いていつ、どこで、誰がカテリーナ様をゲットするのでしょうか……ふふふ、頑張ってくださいね、ウィル」
幼い頃呼ばれていた愛称で話を締められた。マドレーヌから幼馴染として頑張れと言われたようだった……