入学します
ウィルフレッド殿下の婚約者候補から外れましたので、身も心も軽やかな気分で学園生活を送れそうです。決して嫌いというわけではありません。
お顔は良いですし、優しい方です。きっとおモテになると思います、私とマドレーヌ様という存在がいなくなりましたので、美しい恋をされる事と思います。
本日は入学式。
新入生は男女別れて入場となるのですね……
女子は全員で二十名ほどが新入生という事です。
中には優秀な平民の方もいるとの事でした。入場をすると、先輩達からとても興味深い目で見られている事に気がつきます。
一気に視線を集め恥ずかしくて、新入生の(私も含め)頬は紅色に染まってしまいます……
在学生の中にブラッドがいて目が合ったので、ホッとして笑顔を浮かべるとむすっとした顔で返されました。どうしたというのでしょう……機嫌が悪かったのでしょうか……?
席に着く前にウィルフレッド殿下とも目が合ったような気がしますが、気のせいでしょう。婚約者候補ではなくなったので、お会いしても会釈程度におさめようと思います。殿下の恋の邪魔をしてはいけませんもの。私は過去の存在です。
入学式も終わりクラス発表があり、ブラッドと同じクラスだったのでホッとしました。
ブラッドはとても優秀なのでSクラスは当然でした。
私は良くてS、もしくはAクラスもあり得たと思います……
ブラッドに勉強を教わっていて良かった!
クラスは十人ほどで、年に二回クラス替えがあります。
気合を入れて勉強をしないと、あっという間にSクラスから陥落となります。自己紹介を済ませ午前の授業も終わり、ランチタイムはブラッドと取る事にしました。
慣れない学園生活ですから、ブラッドといると落ち着きます。
しっかりと食後のティータイムも楽しんでいます。
「リーナ……クリームがついている」
呆れた様子のブラッド。
「えっ! どこどこ?」
右の口端あたりを指で押さえると
「違う、逆だよ」
と言ってクリームを親指で取ってくれました。
「ありがとう、ブラッド」
微笑み礼を言うカテリーナ。
「ん。甘すぎるなこのクリーム……」
親指でペロリと舐めて文句を言います。
「クリームは甘くないと、美味しくないでしょう?」
まるで家にいるようなティータイムでした。
親指でクリームを舐めるブラッドに、ちょっとかっこいいなと思ってしまったのは内緒です。
少し制服のタイを緩めてリラックスし、青みを帯びた黒い髪の毛に紫の瞳が同じ歳とは思えないくらい、大人びています……ズルイ。
「何かついてる?」
テーブルに頬杖をつくブラッド。
「お行儀が悪いですよ」
注意をすると、学園というものはそういうものだよ。と教えてくれた。
午後の授業も終わり、ブラッドと帰宅した。制服を脱ぎ、楽なドレスに着替えた後に執事のノーマンが慌てて部屋をノックしてきた。
「お嬢様、よろしいでしょうか」
侍女が扉を開けて執事を部屋に入れると、大きな花束を持っていた。
「えっ? なぁに?」
大きすぎる花束でノーマンの顔が隠れてしまっていますね……
「ウィルフレッド殿下からです」
手紙と共にずっしりと大きな花束を渡された
頭にたくさん? ? ? ハテナを浮かべながら手紙を開封した。
【入学おめでとう、可愛い君とランチを共にしたい。良い返事を待っている】
と書かれてあった。誘われる意図がわからないので
【人違いではないですか?】
と返事をしておいた。
学園では身分は関係ないと、先生が仰ったので無理強いはしませんよね。