マドレーヌ様の秘めた想い
「マドレーヌ! ランチの約束をなんとか取れた! 勿論マドレーヌも一緒に来てくれるよね!」
先ほどしつこくランチにお誘いしていましたものね。呆れてしまいましたわ。
「はい。はい。分かりましたわよ。わたくしをダシにしましたのね?」
「仕方がないだろう! ブラッドもくるそうだ。保護者同伴みたいで嫌なんだけれども仕方がないだろう……」
「保護者って……」
「お目付役?」
「失礼ですわね!」
「まぁ、まぁ……ブラッドもくるんだぞ? 嬉しかろう?」
「なっ! 何のことですの?」
「言わずもがな……私たちは友人だろう? こんなに余裕のないマドレーヌは初めて見るぞ」
ニヤニヤする殿下のお顔が憎たらしいですわね! バカにバカにされた様な……。
知られたくない人に知られてしまいましたわ。マドレーヌ一生の不覚ですわ……
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「悪い、待たせたか?」
王族専用の席がありますの。王族の護衛って大変ですのね。
学園内でも命を狙われることが過去にあったのだそうです。
先にカテリーナ様とブラッド様がお待ちになっていました。
「授業が少し、おしてしまいましたの」
殿下の言葉足らずを補填する様に席につきました。
「今来たところです。ね! ブラッド」
カテリーナ様は気にしていない様子でした。
「はい。ですのでお気になさらないでください」
少しお顔を崩されるブラッド様。今朝の様な笑い顔は見せてくださらないのかしら?
「今日はカテリーナの為にランチを頼んだんだ! ラストにはカテリーナの好きなイチゴを使ったドルチェを用意したんだよ」
まるで尻尾を振る犬の様ですわ……。カテリーナ様に褒めていただきたいのでしょうね。あら、興味がなさそうにお外を見始めましたわ。
「リーナ! 興味がなくても人が話している時はちゃんと聞いているふりだけでもして! その態度は失礼だよ」
ブラッド様……保護者でいらしたのね……
「ごめんなさい」
しゅんと謝り小さくなるカテリーナ様。おっしゃっていることに間違いはないのですけれど、興味がなくても……聞いているふりだなんて……面白いですわね。ふふっと笑みが漏れてしまいましたわ。
「僕に謝るのではなくて、誰に?」
ふふっ。ブラッド様はしっかりされた方ですわね。その場で言わなくては分からないこともありますもの。カテリーナ様は素直な方ですもの。反省しているのが見ていて分かりますわ。
「殿下、申し訳ありませんでした。いちごを用意してくださったのは嬉しいです。覚えていてくださったのですね」
「いいよ。気にしてないから。カテリーナの事はなんでも覚えているよ。でももっとカテリーナの事を知りたいかな?」
殿下のセリフは気持ちが悪いですけれど、知りたいと言う気持ちは分からなくもありませんわね。
……何がお好きなのかしら?
殿下が一生懸命カテリーナ様に話しかけるので、わたくしもブラッド様と会話を楽しみました。
そうですのね。本がお好きなのですね。屋敷におられる時は基本書庫におられるのですね。
わたくしも嗜みとして本は読みます。感銘を受けた本のことをお話しすると、ブラッド様のお顔が急に笑顔になり、本の内容についてお話をされました。
そのような見方をしたことが有りませんでしたので、とても楽しい時間でした。
ブラッド様は博識でいらして、お話の内容もとても興味深いものでした。
さすが学年で首位を取られる方ですわ。
口数が少ないと思っていましたのに、ブラッド様のお声は少し低くて優しく心地よく耳に入ってきます……
「今度オーウェン殿が帰ってくるパーティーに誘われたんだが一緒に行かないか? カテリーナお願いだ」
「ご招待いただきましたが、わたくしはブラッドといきます」
「……ブラッド! マドレーヌを誘うんだ! お前がいるとカテリーナと一緒に行けないじゃないか!」
なんて事を仰るの! 殿下のバカ! そんな事を言ったら嫌でもわたくしを誘わなくてはいけなくなるでしょうに!
「ブラッド様、無理に、」
「それでは……マドレーヌ嬢のパートナーとなる幸運を私に授けて下さい」
! ! !
「えぇ。喜んでお受けいたします」
そう答えますとブラッド様はほっとしたような顔をしました。
嬉しいものですわね……。知りませんでしたもの、このような感情は。
少し……少~しだけですわよ? 殿下に感謝を。
ブラッド×マドレーヌ次回最終回です!