マドレーヌ様の変化?
「マドレーヌ話を聞いてくれ! カテリーナの近くに寄れないんだよ、なんとか……」
「…………」
「マドレーヌ、どうした? 顔が赤い、熱でもあるのか?」
「えっ? あらいやですわ……殿下なんのお話でした?」
「いや、体調が優れないのなら良い、また今度で、」
「…………」
「マドレーヌ? 本当に大丈夫なのか?」
「えぇ。少し考え事を」
「そうか。最近マドレーヌはカテリーナと仲が良いんだな。昨日もカテリーナとブラッドと一緒に居たよな」
あ、あら……見られていたのですね。三人でお茶をしていたところですわよね?
「私も混ぜてくれよ……。なんで意地悪するんだよ。カテリーナに手紙を書いてもつれないし、泣きたくなるよ」
「殿下はどうしてあんなに近くにいらしたのに、カテリーナ様に恋していると気がつかなかったのですか? おバカさんなんですか? 毎日会いたいと仰っていたのに」
あら、思わず心の声が出てしまいました……。不敬罪ですわね。でもここは学園ですものね。お許しくださいませ。
「恋ってさぁ、難しいんだよ……」
なんですの? 気持ちが悪いですわね。恋について語る男性ってウザ、こほん。失礼いたしました。面倒くさいですわね……。
「そうですの? 大変ですわね」
「大変だよ。後悔しかなくてさ……子供の頃にカテリーナを見て可愛くてさ、一目でこの子と仲良くなりたいって母上にせがんだんだ! それで私から頼んで婚約者候補にして貰ったのに、自ら外して……っていや、それはマドレーヌに唆されたな!! 自分が私の候補から外れたいからといって、カテリーナまでも道連れに……それはさておき、入学式でカテリーナを見てまた子供の時と同じことを思ったんだぞ! 私はバカでマヌケでトンマで……時を戻したいとどれだけ後悔したか……」
項垂れるバカでマヌケでトンマな殿下を見ていましたわ。
「カテリーナといると心が安らぐんだ。あの可愛い笑顔に癒されるんだ。美味しそうにお菓子を食べる姿も、嬉しそうに庭園を歩く姿も! その姿を私だけに見せて欲しいんだよぉ! なのにもう笑ってもくれないんだぞ! どうすれば良い? カテリーナァァ……」
「そうですわね。そう考えますと、わたくしは殿下といましても、そう言った気持ちは全く起きませんでしたわね」
「なんだよ! お互い様じゃないか! じゃあマドレーヌは誰となら心安らいで一緒にいられるんだよ!」
「なっ! 殿下ではない事は確かですわよ」
ふっと頭に浮かんだブラッド様の顔が……
「ほぅ。いるのか……なるほどな」
先ほどとは違い腕を組み、ニヤリと笑われましたわ。整ったお顔立ちですから嫌味に笑った顔も様になってますけれど、嫌な顔ですわね!
「な、なんですの。おりませんわよ。そのようなお方!」
「顔が赤いのはそいつのせいというのか。なるほどな。耳も赤い」
自分の恋心には疎いくせに、人の恋心に口出しをしてほしくないですわね。
……あら。嫌ですわ
……恋心?
……コイゴコロ?
……KOIGOKORO?
……こいごころ?
入学式で目があった時に時が止まったような気がしたのは……?
カテリーナ様を見るついでに一緒にいるブラッド様を気にしてしまうのは……?
挨拶をするだけで一日良いことが起きそうだと思ってしまうのは……?
青みを帯びた黒髪に紫の瞳を見ていたら、胸に苦しみを覚えるのは……?
わたくしは……これが恋ですの?