ブラッドの入学
「ズルイ! ズルイ! 弟なのに先に入学するなんて」
僕は十三歳になった。
リーナも十三歳。同じ歳だけど、リーナから見たら弟と言うポジションらしい。
リーナの事は姉には到底思えないんだけどね。妹がいたらきっとこんな感じなのかな?
学園の規則で子息は十三歳に入学。
令嬢は十五歳からの入学と決まっていた。
僕は十三歳から五年間学園に通うのに対して、リーナは十五歳から三年間通うことになる。
「僕に言われてもねぇ……困るよ」
「だって! ブラッドと一緒に通いたいんだもの」
「そんな我儘言わないの。リーナはまだまだ学ばなくてはいけない事が多いのよ。こんなことではお嫁に行った時に困るわよ?」
「お嫁に行かないもん。ブラッドが侯爵家を継いでくれるから、ずっとおうちにいるの」
ふん。と顔を背けるリーナ
「……リーナ。お勉強の時間を増やします。ノーマン連れて行って頂戴」
母上が微笑みながら怒っているようだった。リーナは王子の婚約者候補、こんな姿は家だけだろうけど、母上の笑みが恐ろしい。
「はい、奥様。お嬢様大好きなお勉強の時間が増えましたね。楽しみですね」
笑顔で答えるリーナの執事ノーマン。
「やだぁ、ブラッドと行きたいの。マドレーヌ様も入学だもの」
「お嬢様が入学する際にバカだとブラッド様が恥ずかしい思いをされます。大好きなマドレーヌ様もきっとお嬢様がバカだと思ってお付き合いは控えるかも知れませんね」
ノーマンがリーナの頭を撫でて諭すように言っているが、バカの連発……
「うぅぅ……勉強する。バカじゃないもん」
凄いな。ノーマンは! もうリーナのやる気を引き出して!
マドレーヌ様、王子のもう一人の婚約者候補の公爵家のご令嬢か。
「良いなぁ、ブラッド……マドレーヌ様と同じ日に入学だなんて」
リーナは公爵令嬢マドレーヌ様のことが大好きだと言っていた。
王子の婚約者候補で筆頭貴族の公爵ご令嬢は王子と同じ歳で、気品に溢れ才女だと言う噂だった。
僕はまだ会った事はないのだけれど、僕のようなものにまで噂が届くと言う事はきっと素晴らしい人なんだろうね。
~入学式当日~
周りがざわめいていた。
噂の侯爵令嬢が登場したから。気高い雰囲気の中に優しさを感じられるような不思議な感覚を覚えた。
ふとこちらを見て、目があったような気がしたけれど、気のせいだろう。
周りの子息達が『今目があった?!』
『私を見たのだ!』と言っているから気のせいだろう。
僕のことを知るわけがないのだから。
クラス発表があるらしい。成績でクラス替えが決められるのか……。Sクラスだと良いなぁ……。勉強は好きだから高い水準の勉強がしたい!
やった! Sクラスだ。しかも順位は学年首位!
マドレーヌ様も上の学年でSクラスだそうだ。王子と同じクラス。
それにしても、王子は十五歳にもなるのに、リーナとマドレーヌ様をいつまで候補にしておくんだ?
最終的に二人とも妃にするつもりなんだろうか? それは絶対に許さない!!
王子を見た。顔は良い整っている。しかしなんか頼りなさそうな感がして良い印象は無い。
リーナが言うには王子は月に一度マドレーヌ様と勉強会をしていると言った。
マドレーヌ様は月一なのに、リーナはなぜ週一で遊びに行っているのだろうか?
リーナに聞いた。
「あっ! 本当だ。殿下も忙しいのだから私も月一にしてもらうように言ってみるね、ありがとう。気がつかなかったわ!」
バカなんだろうか……なぜ分からない。きっと王子はリーナが好きなんだ。
だからマドレーヌ様よりリーナに会いたいんだろう?
これで違うというのなら死んでほしい。
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「あのね、殿下に聞いたの。マドレーヌ様とは毎日学園で会うからだって。それなら私とも毎日会おうって言われたのだけれど、それは大変でしょう? そう言ったら、二日に一度は会おうって言われたけれど、ブラッドといる時間が減っちゃうからお断りしたの」
「あぁ、そう。その他はなんて?」
「義弟が大事なんだねって言われたから、はい。って言ったの。今度王宮に連れておいでって、どうする?」
「いや、行かない」
行きたくないって言うのが本音。リーナから王子の話を聞く限り、大丈夫なのか? 色々と……と思うんだよね。
「そう? 王宮にはステキな庭園もあるし、美味しいお菓子も用意してくださるのに?」
それだけの理由で毎週行っているのか? もう子供じゃないのに……
マドレーヌ様が王子の相手なら、しっかりと手綱を掴むことが出来るだろうけど、リーナがこの国の王妃? 心配? いやいや不安しかない……!




