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ブラッドの家族

 僕が侯爵家の養子に入ってすぐに分かったこと。リーナは屋敷のみんなから愛されていると言うことだった。


 侯爵家のお嬢様で王子の婚約者候補なのに、気取っていなくて愛らしい。



 僕が侯爵家に来てすぐに手を繋いで屋敷中を連れ回され、弟なの! 可愛いでしょう? と屋敷中の使用人に紹介された。


 屋敷の使用人は皆、微笑ましい様子で


『可愛いらしい弟ができて良かったですわね。仲が良いのですね』


『よろしかったですわね』


『カテリーナお嬢様もお姉様ですわね』


 と声をかけてくれた。




「えへへ。そうなの! ブラッドっていうんだよ。みんなも仲良くしてね!」



『『はい。よろしくお願いいたします』』




 リーナのおかげですぐに屋敷の皆んなから認められたような気がした。



 この屋敷は明るい。



 侯爵様は宰相と言う堅い仕事をしているのに、家ではのんびりとしていて、リーナにも奥様にも僕にも優しくて甘いのにとても頼もしい。


 侯爵様には父上、母上と呼ぶように言われ、照れてしまい中々いえなかった。すると



「ブラッド、恥ずかしいの? それならパパとママから始める?」



 真剣な様子で僕に言ってくるリーナ……

 そっちの方が無理だから! 無垢な顔をしてなんて事を言ってくるんだよ……! 




  父上と母上は楽しそうに笑っていた。一家団欒と言うワードが頭に浮かんだ。悪くないなぁ……と思った。リーナはすごい!




「ブラッド、なにかやりたい事はないか? もうすぐ誕生日だろう? 欲しいものはないのかい?」


 侯爵さ、いや……父上に言われた。悩んでいると


「遠慮なく言いなさい。なんでも良いんだ」



「……教師をつけて欲しいです。勉強がしたいから」



  結構勇気を振り絞ったんだ。我儘なんて言ったこと実家でもなかった。

 生活に困るような家ではなかったのだけど、三男だから兄のやっている事を真似していた。



「勉強? そんなの喜んで教師をつけてあげるよ。後は? 誕生日に欲しいものは?」


 父上が嬉しそうに言ってくれた。本当に良いのかな……僕が好きなもの……



「ブラッドは何が好きなの? 教えてちょうだい」


  母上もそう言って下さるのだし……良いのかな? 



「僕は……本が好きです。いつも本を読んでいました」



「そうか、そうか! よし! それでは」



  執事に耳打ちをして何かを取りに行かせたようだ。そしてすぐに執事が戻ってきた。

 首にかけられるようにチェーンがついた古い鍵だった。



「これをブラッドに渡しておくよ。この鍵はきっと、ブラッドの知的好奇心を大いにくすぐる事だと思う」


 なんの鍵だろうか? 



「着いておいで」



 なぜかリーナも付いてきた。リーナは僕がどこかに行こうとすると必ず手を繋いで付いてくる。



『迷子になったら困るでしょう?』



 屋敷の中はもう覚えたよ。きっとリーナは迷子になった事があるんだろうね。想像がつく。だから心配してくれているんだろうね()として。



「ここだよ、さっき渡した鍵で開けてごらん」



 父上に言われて、ガチャリと大きな古い扉の鍵を開けた。



 少しギギギっ……と音を立てて開いた扉からはインクの香りや古い紙の匂いが鼻腔をくすぐった……


 大きな、大きな書庫、僕にとっては図書館といっても良いくらいの夢のような場所だったんだ!



「わぁ!!! すごい!!!」


 書庫を見渡した。宝箱箱を開けたような感覚……ワクワクした!


「そうだろう! 本好きにはたまらない場所だよな」



 父上は僕の頭をクシャクシャと撫でてきた。父上の顔を笑顔で見上げた。今まで生まれてきた中でこんなに沢山の本は見た事がない!



「侯爵家の誇る書庫だよ。ご先祖様が残してくれた貴重な本も沢山ある。これからブラッドも好きな本を買って、書庫に並べると良い。誕生日には本屋へ行こう、その後は家族で食事へ行くぞ」



 嬉しかった。家族って言ってくれたし、誕生日にみんなで食事に行ける。



「わぁ! やったぁ。ねぇねぇお父様、いつものレストランがいいわ。美味しいからブラッドと行きたい!」



 喜ぶリーナは父上にしがみついていた



「そうだな。ブラッドの誕生日には仕事を休んで、家族で過ごそう」



 父上はそんなことまでしてくれるのか。仕事が忙しいのに。凄いな……嬉しい。



「リーナからも何かプレゼントするね! 楽しみにしていてね」



 リーナからも、父上からも、母上からも、僕は貰ってばっかりだ。何か返せる事はあるのだろうか? まだ僕は子供だけど、いつかこの大事な家族のために何かを返したいと思った。



 

 それから父上はすぐに優秀な教師を付けてくれた。教え上手で授業は楽しい。暇さえあれば本を読みに書庫へ通った……主にリーナがいない時。


 リーナは週に一度王宮へ遊びに行く。王子の婚約者候補という名の遊び相手だよ。って言った。


 ブラッドも行こ? と誘われるが、リーナの婚約者になんて会いたくない。リーナをこの侯爵家から奪っていく王子になんて会いたくない!



ブラッド×マドレーヌ様編です。この二人はカテリーナが、殿下とくっつこうがオーウェン様とくっつこうが、婚約する二人です。

本編と番外編とはまたちょっと違う視点になりますので、大目に見ていただけると助かります汗

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