小悪魔カテリーナ
~オーウェン視点~
制服姿のカテリーナもまた可愛い。
その姿を見ているだけで何杯でも茶が飲めそうな気がする……
「オーウェン様お仕事はもう終えたのですか?」
ちょっと頬が赤いカテリーナ。あれから会うのは今日が初めてだから、緊張しているのか? 少しは私のことを意識してくれていると捉えて良いのだろうか。
「カテリーナが来ると聞いたから、終わらせてきた」
あれから手紙のやり取りはしたが、やっぱり顔を見たい。
「ふふふっ。よろしいのですか? 公爵様に付いてお仕事をされていると伺いましたが公爵様に怒られてしまいますよ?」
少し余裕が出てきたのかくすくすと笑い出すカテリーナ。
「怒りゃしないさ。息子の一大事だからね。やる事は全て終わらせてきたから、逆に褒められたよ」
にやりとカテリーナを見て笑った。
「今日は、実は……」
おっ。もしかして返事を聞かせてくれるのか……
「うん、何?」
「マドレーヌ様にご相談させて貰いました。どうしたらオーウェン様とお会い出来るかと……それならお茶をしましょうと誘って下さいました」
おぉ……妹よ。良くやった! うまく行ったらなんでも買ってやろう。
「カテリーナが私を呼んでくれたのなら……いつでもどこへでも君に会いに行くのに!」
ちょっと重いか? でもきっと行くな……うん。
「ありがとうございます、嬉しいです」
嬉しい? そうなのか? 私のことを悪く思ってはいないと言う事で良い……のか?
「……本心だよ。私はカテリーナのことが好きだから。好きな子に会いたいと思うのはごく自然な事だろう?」
はっきりと言わないと伝わらない。心臓はバクバクと脈を打っている……
「はい。そう思います。私もオーウェン様にお会いしたくて、」
「えっ!」
思わずソファから立ち上がってしまった。紳士たるもの落ち着いて行動しなくてはならないのだが、聞き捨てならない台詞を耳に入れたのだから許して欲しい。
「カテリーナ返事を聞かせてくれるのか?」
「……オーウェン様、婚約の話ですが、お受け致します。至らない点が多々あると思いますが、その、よろしくお願い致します」
カテリーナに近寄り手を取って跪いた。
「婚約を受けてくれてありがとう。カテリーナ、絶対悲しませる事はしないと誓うよ。幸せになろう」
顔を真っ赤にして泣きそうな顔をするカテリーナに胸を打たれた。勇気を出してくれたんだろう……。
取っている手に軽くキスを落とす。既に私は幸せだ!
「触れても構わないだろうか?」
こくんと頷くカテリーナ。
隣に座り、サラサラの髪に触れ軽くカテリーナの頭を胸に抱き寄せた。
バクバクと心臓の音が感じられるが、どちらの心臓の音か分からない……耳まで赤いカテリーナが可愛くってしょうがない。
私の上着をキュッと掴んでいる細い指さえ愛おしい。
「カテリーナ」
呼ぶと恥ずかしそうにこちらに顔を向けてきて目があった。
「カテリーナ」
もう一度呼ぶとなんとカテリーナが、私の頬にキスをしてきた。
「カッ、カテリーナ!」
驚いて吃ってしまった……紳士のゆとりがない!
「……好きな人にはキスをするんでしょう?」
真っ赤な顔で見つめてきた。
「あの時のことを覚えていたのか!」
「はい。オーウェン様もしてくださいますか?」
にこっと悪戯が成功した子供のような笑顔で笑うカテリーナ……誘ったのはそっちだからな、後悔するなよ?
「もちろん」
おでこにキスをすると見せかけて、チュッとリップ音を立て口付けをした。カテリーナは目を見開き驚いていた。
「好きな子にはちゃんとキスを返さないとね」
にやりと笑ったら、はい。と真っ赤な顔で答えてくれた。
恥ずかしいやら照れるやらで喉が渇いたので、冷たい果実水を持ってきて貰い落ち着きを取り戻した。
カテリーナも同じ気持ちらしい。ごくごくと果実水で喉を潤していたところに、ゆっくりとマドレーヌが戻ってきた。
正直助かった……このまま二人でカテリーナといると何かしそうで怖かった……。
十歳も下の子にこんなにドキドキさせられるとは……心臓が持たないでは無いか!
その後父にカテリーナと婚約をすることを話したら喜んでくれて、宰相に話をすると言った。
父は速攻で宰相に話をし、陛下に報告へ行き、正式に婚約する運びとなった。
次回特別編の最終回です。