婚約者候補ではなくなりました
サロンでブラッドとお茶を飲んでいたところに父が帰ってきた。珍しく早いお帰りだ……
「王妃殿下が、お前とマドレーヌ嬢を婚約者候補から外すと言ってきた。何があった?」
慌てもせずのんびりとした口調でした。
本当なら文句の一つでも言ってやりたいと言うところだろうが、我が家は王家に嫁ぐ事に関して積極的ではないのです。
その理由として国王陛下の浮気がよく物議を醸すから……
王妃殿下の大変さと言ったら見ていても辛い。うちの両親は親同士が決めた結婚であったがとても仲が良い。
貴族の結婚とは、基本家同士が決めるものです。幼馴染という事もあり、王妃様から候補にという話をもらい断れなかったと聞きました。
「ウィルフレッド殿下は恋をしたいのですって。それでマドレーヌ様が恋をしたいのなら、わたくし達がお邪魔でしょうから候補から外してくださいと、殿下にお願いしたのだそうです」
先ほどマドレーヌ様から急ぎのお手紙を頂いたので父にそのように話をしました。
「……恋をしたい?」
驚く父だが、義弟のブラッドは
「良いじゃないですか? リーナも学園に入学しますし、ちょうど良かったではないですか。学園で殿下と過ごさなくても良くなったんですからね」
何故か喜んでいる様子です。
「リーナはそれで良いのか?」
父が確認するように聞いてくる。
「はい。問題はありませんよ。殿下のお好きなようになされば良いと思っています」
ブラッドの言う通り学園では、友達と楽しく過ごしたいですし、同じ歳だけどブラッドはすでに学園生活を送っているので、一緒に学園に通うのは楽しそうですもの。
「リーナがいいと言うなら抗議はしない事にしよう。マドレーヌ嬢の父上の公爵殿も抗議はしないとの事だよ」
諦めたかのような口調の父だが
「婚約者候補ではなくなったから、変な男に引っかからないように、ブラッドは見張っていてくれ」
「はい! お任せください」
ブラッドは同じ歳だが私が五月生まれでブラッドは十一月生まれだから私が姉である。うちには私しか娘がいないので、父の親戚からブラッドが引き取られました。
ブラッドの家は裕福な子爵家だが三男だった事とすぐに仲良くなれた事で、養子に入る事になりました。
ブラッドは社交的に見えるが実は人嫌いで深い付き合いはしない主義だ! と主張する。
私とは家族だからか仲良くしてくれます。基本は一緒に行動しているのですが、例外はウィルフレッド殿下に会いに行くときだけ。
それも良い風には思っていなかったらしく、婚約者候補から外れた事を喜んでいる風ですね。
ブラッドは弟なのに、私よりお父様からもお母様からも頼りにされているのです。
私もブラッドにはつい、甘えてしまいますし、両親の事は言えませんね……