可愛いカテリーナ
~オーウェン視点~
妹が友達を紹介してきた。宰相の娘で侯爵家のカテリーナ嬢。
笑顔が可愛い子だ。
そりゃそうだ、まだあどけない七歳だ!
恥じらいながら挨拶をして来たが、人懐っこい子でそれからよく遊ぶことになった。
絵を描くのが好きだと言って見せてもらったが上手くて驚いた。
懐かれたのもそうだけど、カテリーナといると心が安らいだ。
カテリーナの笑顔は癒しの効果があるに違いない!
カテリーナが転んだようで泣いていた。殿下が変な呪文を唱えているが早く消毒しないと! 血が滲んでいる。白い足に傷跡が残ったらどうするんだ!
カテリーナが泣きながら何かを訴えるように木の方向へ指をさしている。
……あぁ帽子が飛んだのか。白と水色の優しい色合いの帽子がカテリーナによく似合っていた。
カテリーナを抱き上げ、枝に引っかかっていた帽子を取りカテリーナに被せた。
泣きながら礼を言うカテリーナ。
……泣き顔も可愛い……大きな瞳に涙が込み上げてキラキラと光っている、いやいや……! 相手は……七歳! 私は十七歳……十歳も下の女の子にこんな気持ちを抱くなんて…気持ち悪いだろ!
さっきから寒気と殺気が……向こうにノーマンがいる……
私を殺す気か? 殺気がダダ漏れだ。
――怖いんだよっ! 見るな!!
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「リーナにもチュー」
時が再び止まった……
さっき頬にキスをされた時は時が止まれば良いのに……なんて思ったが……自らキスを要求してくるとは……とんだ小悪魔だ……!
じぃーっと見つめてくるその無垢なヘーゼルの瞳に吸い込まれそうになるのだが……
……おでこに軽くキスをした。大丈夫だよな? 犯罪にはなるまい。
おでこに手を当て満面の笑みを見せるカテリーナ……危険だ……こんな少女に……
しかも相手は第一王子の婚約者候補?
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学園を卒業して、しばらく王都を離れることになった。
領地を治めるための勉強だ……取り敢えず数年。
帰ってくる頃には殿下の相手も決まっているだろう。
出来ればマドレーヌを選んで欲しい。家の為にも……私のためにも。
マドレーヌは家族の目から見ても美しく聡明だ! 元々マドレーヌが婚約者に選ばれる予定だったのに、あのバカがカテリーナを一目で気に入って王妃にカテリーナも候補にして欲しいと頼んだと言う。
……まぁ分からんでも……ない。
二~三年のつもりだったのに……六年も経ってしまった……意外と問題が沢山あった。
他国からの流れ者が、領地の街中の治安を悪くしていた……貿易港がある我が領地だからなぁ。
貿易は黒字だし、領地経営は上手くいっている! 人口も増えた! 労働者も足りないくらいだ。治安を良くするためにはまず仕事を与えること、職業紹介所や、貸家も用意した。
まぁなんとか形にはなった。父の跡を継ぐために王都へ戻ることになった。
「お兄様、お久しぶりでございます」
「マドレーヌ、二年ぶりか? 美しくなったな。もう立派なレディだ」
久しぶりに会うマドレーヌに近況報告を受けた。
「ほぉ。恋をしたいと……あのバカが……なるほど」
笑いながらも眉間に皺が寄るのが自分でも分かった。
「それでね……お兄様聞いていますか?」
「……あぁもちろん聞いている」
「カテリーナ様も婚約者候補から外すように殿下に言いましたの。カテリーナ様も婚約者はおられませんからね」
「……そうか」
口に手を当てそらを仰ぐ……
「……でね今度の夜会はカテリーナ様のデビュタントです。私も行きたいのでお兄様エスコートしてくださらない?」
「あぁ良いよ、マドレーヌも夜会に出るような歳になったのだな」
マドレーヌの頭を撫でる。
「お兄様っ! もう子供ではありませんよ」
そう言われてもやっぱり妹という存在は可愛い。
「……カテリーナか」
「はい、相変わらずですよ、私カテリーナ様が可愛くて大好きですのよ。殿下は今更ながらカテリーナ様に恋をしたらしくアタックしているようですけど、カテリーナ様は全く相手にしていませんのよ。というか本気にしてないというか……ですわね」
にこにこしながら私を見てくるマドレーヌ。
「覚えているか? 私のこと。小さかったからなカテリーナは」
「大丈夫ですわよ、ちゃ~んと覚えていますから」