カテリーナの後悔
早まっちゃったかもしれません……
だってしつこいんですもの。昔から。
初めて殿下にお会いした時から……
お父様に王宮に連れて行って欲しいとお願いしたのが運の尽きだったのかもしれません。
王宮のお庭に可愛いお花が咲いていて、近くで見たくてお父様に走ってはいけないと言われたのに、走って転んで泣いたら、キラキラした可愛い男の子が大丈夫?と声をかけてくれました。
痛いの痛いの飛んでけー。って謎のじゅもんを唱えたの!
そしたら痛くなくなったから、謎のじゅもんのおかげ!
「カテリーナ!」
お父様が心配そうにかけてきてくださいました。走ってお父様も転んだらたいへんですよ。
「王子、申し訳ございません、うちの娘がご迷惑をおかけしました」
お父様に抱っこされたらホッとしてまた泣きそうになりました。
「おうじさま?」
可愛い男の子が王子殿下だとその時に知りました。
「はじめまして、僕はウィルフレッド、君の名は?」
気遣うように優しく自己紹介をしてくださいました。
「わたしのなまえは……カテリーナ」
「カテリーナ、一緒に遊ぼう」
手を差し出して来られました。
恥ずかしくてお父様の首に手を回して顔を隠してしまいました。
お父様は慌てて私を連れて行こうとしたけど、お庭で遊ぶ事にしました。五歳の時の話です。
それから毎週おうじさまと遊んだ。おやつを食べたり、お庭を散策したり、一緒にお勉強もしました。王宮を抜けて街にも行きました。
王都の街で流行っているクレープが食べたかったから……王宮から抜け出して、お父様と王妃様にいっぱい怒られて泣いてしまったら、おうじさまが頭を撫でて慰めてくれました。我儘言ったのは私なのに、おうじさまが怒られてしまいました。
でもその後に、次はバレないようにしようねと笑ってくれたの。
とても楽しい時間だったけど、毎週はちょっと大変……でもまた来週ね。と言われて遊びに行きます。
家族で領地に行って何ヶ月も会えない時は、お手紙を貰いました。文通というらしいです。
婚約者候補と言う殿下のお友達だよ。ってお父様に説明されて、王宮に通う事が許されていました。もう一人のお友達は公爵家のマドレーヌ様でした。
とても綺麗で優しいお姉様で、大好き。マドレーヌ様のお兄様のオーウェン様もいつも優しくて、一緒に遊んでくださりました。
マドレーヌ様には優しくて、かっこいいお兄様がいて良いなぁ~と羨ましく思いました。
それからブラッドがうちに来てくれたので、嬉しくて王子様に教えてあげたら、良かったね。と言ってくれました。
ブラッドは優しくて可愛くて大好きなので、おうじさまとも仲良くなったら良いのにと言ったら、ブラッドの話をしてはダメだと言われました。
大きくなっておうじさまから殿下と呼びはじめた頃に殿下は学園に通う事になりました。もう遊べなくなるのかと思っていましたが、変わらず毎週遊びました。
早く一緒に学園に通えたら良いのにな……
そうしたらマドレーヌ様もおいでるし楽しくなるだろうなと思いました。
もうすぐ学園に通う事になります。殿下といつも通りお茶をしていたら
「恋をしたい」と言ってきました。
恋は大きくなってからするものだと思っていたので驚きました。この歳になると婚約者候補はお友達ではないことも理解していました。
婚約をして恋をして愛情になるんだって思っていたから。
殿下はいつか、マドレーヌ様か私と恋をするんだって思っていました。
殿下はマドレーヌ様も私も嫌いなんだ……私達以外の人と恋するんだ……
恋ってなんなのか分からない、だってした事ないもの。
もう会いたくない! 遊びたくない! 顔も……見たくない!
この気持ちが何か分からないけど、ブラッドに言いました。
その後マドレーヌ様からお手紙をもらって婚約者候補から外れる事になったと言われました。マドレーヌ様と一緒ならそれで良いと思いました。
入学をしたら殿下と会うのかな……会いたくない。広い学園なので、会わずにすみました。
マドレーヌ様は相変わらず優しくてさらに美しくなって、憧れの方です。なんでこんなに素敵な人に殿下は恋しないんだろう? 不思議に思いました。
入学をして殿下から何回もお手紙をもらいました。また文通ごっこですか? もう殿下とは遊んであげません。
変な手紙を送ってくるのはやめて下さい!
その後殿下から好きだと言われて、意味がわかりませんでした。
恋をするから邪魔をするなと言われたから……
私とマドレーヌ様以外の人と恋するって言ったのに!
可愛かったあの時のような、おうじさまの顔をして私を見ないで!
殿下との思い出を閉じ込めたの! こじ開けてこないで! なんて勝手な人なんでしょう……
恋とか、好きとか、知らないっ!
自分の気持ちを押しつけてきて、何故か付き纏われて、嫌がらせもされました。
マドレーヌ様の邸でのパーティーではパートナーを務めると言う。ドレスだの宝石だのそんなもの要りません!
でもブーケはパステルカラーで可愛くて少しだけ嬉しかったのでお部屋に飾るようにお願いしました。
まさかオーウェン様と婚約の話が出ているとは夢にも思いませんでした。
大好きなお兄様と婚約すると、マドレーヌ様と姉妹になれるのならとても光栄な話です……
けど、殿下が引っかかってくるのです。ムカムカするのに、また切り捨てるかもしれないのに……ばかみたいに必死に縋ってくるおうじさま。
この先好きな人……出来るのかも知れないのに!
なんでこんな人……そう思っていたら、何故かはい。と答えていました。
その後、悔やんでしまう事になります。
殿下は変態でした。しかも変態でごめん。と自分が変態である事を肯定しました。
「変な事を考えてしまうけど、行動に移してないからセーフだ。何を考えているかを知られたら嫌われるからね」
恐ろしい事を告白してきたので、知りたくありません!
もう気持ちを抑える必要はありません。
お父様、お母様……お許しください。
「ばかっ! 変態! 大嫌い! 最低っ!」
何回言った事でしょう……レディとしてあり得ませんね……何度頬に平手打ちをした事でしょう。
王妃様に平手打ちをしている事がバレましたっ……!
王族に手を上げたのですから、罰を受けるつもりでした。
すると命だけは勘弁してね、こんなんでも王太子だから。殴る蹴るくらいでは、めげないから許します。と言われてしまいました。
たしかに変態はめげません。
変態は、王妃様からとてもとても怒られたようで、執務はきちんとこなしています。そこだけは尊敬します。
一つでも尊敬出来るところがあってよかったです。なんと仕事をするにあたって、要領を覚えたらしく、学年でトップの成績を取りました。
カンニングでもしたのではないかと疑ってしまってごめんなさい。
ご褒美にキスを強請られたので……軽く頬にキスをして離れようとしたら胸に顔を埋めてきたので、思いっきり殴ってしまいました。
手が出てしまいました……暴力は反対です……。
そうすると何故か喜んでいたので、気持ちが悪くて仕方がありません…もう手は出しません。
早まったのだと思います。
たまに見せるおうじさまの顔が可愛いだけなのに……刷り込みとは恐ろしいものです。
……後悔しています。
この変態と幸せになれるのかなぁ……
私がしっかりしないと……
【番外編 完】
他サイトで、殿下と元サヤのハピエンを迎えた事で、不満?の声が多々あり(汗)if特別編なるものもありますので、よろしければhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/867650582/928472882
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