表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/40

ブラッド君の姉の話

『お嬢様、息子のブラッドです、ほらご挨拶をしなさい』


 子爵家に侯爵様と奥様、そしてお嬢様が顔合わせにやって来た。


 侯爵様はこの国の宰相というとても重大なポストに付いている。そんな方がわざわざ挨拶に来た。

 二つ上の兄か僕が養子として貰われて行く。良い人だったら良いけど、怖い人だと行きたくない。



『こんにちは、わたしカテリーナ、あなたブラッドって言うの? 仲良くしてね』



 いつのまにか僕の前に立っていたカテリーナと言う少女。

 あどけない笑顔で可愛い子だった。侯爵家のお嬢様なのにこんなに人懐っこいなんて、不思議な子だ、高位貴族のお嬢様なんて気位が高そうなのに。



 一生懸命話をするので、大人しく聞いていたが、妹ってこんな感じなのかな……?兄しかいないから分からないけど、なんだか可愛いから笑ってしまった。



『カテリーナ、ブラッド君ともう仲良くなったのか?』


 侯爵様が二人の姿を見て聞いて来た。


『うん、とっても楽しい』


『そうか、ブラッド君はどう? 君が嫌でなければ、うちに養子に来てもらいたいと思うんだけど、無理強いはしないよ』


 侯爵様が優しく仰った。



 父と相談の上、僕が養子に行く事になった。お嬢様のブラッドが良い~っと言う一言だった。僕もお嬢様と家族になれるのが嬉しかった。


『私の事は姉かリーナって呼んでね』


 そう言われると、後者を取る。姉? と言うかどう見ても妹にしか思えない。



『家族になったらリーナのお家の事お願いね。女の子はお家継げないんだって。だからね、ブラッドにあげるね』


 小さな手をギュッと繋いでお願いしてくるリーナの手が温かくてうん。と言った

 僕が出来る事をちゃんとやろうと思ったから。


 小さな手に約束した。



 侯爵家は僕に充実した生活を与えてくれた。大好きな本に囲まれて、素晴らしい教師もつけてくれた。毎日リーナとお茶もした。



 宰相を務める父と一緒にリーナは出掛ける。その時は僕は留守番だった。

 王子の元に遊びに行くのだと言う。ブラッドも行こ! 誘われるが行かない。


 僕はその間に勉強をする。リーナと約束したから、この家を頼まれたから、ちゃんと出来る事はする。後悔したく無い。



 よく分からないけど、リーナにはノーマンと言う執事が仕えている。


 リーナがお菓子を取り上げられていたのに、母上は何も言わない。

 どうして?執事なのに失礼じゃないか?と聞くと、良いの良いの!仲良しでしょう?


 ノーマンはリーナに仕えているから、私たちはリーナが嫌だって言わない限り、何も言えません。ノーマンも分かってやっているの。ほら、リーナも楽しそうに笑っているわ、私が許しているのだから、ブラッドも許してあげてね。あの子からノーマンを取り上げたら、悲しむわよ。


 なんだかそう言う関係らしい。僕がくる前の話だから分からないけど、母上が許しているのなら、それで良い



 僕は十三歳で学園に入学する事になった。同じ歳なのにリーナはあと二年後だと言う。


『ずるい!』とリーナは言うが、あと二年で一緒に通えるから……



 ようやく二年が経ち、リーナが入学!となる少し前に、なんとなく元気のないリーナが王宮から帰ってきた。


 理由を聞くと、もう王宮に行かない。もう殿下にも会わない。遊ばないと言った。しばらくしてから婚約者候補から外されたと聞いた。

 毎週、リーナを呼びつけておいて何様だ!



 僕は王子を許せない! 大事な家族を傷つけた。

 リーナが会いたくないなら、会わせないようにするしかない。


 リーナが入学をしてから、あのクソ王子が、何故かリーナに近寄ろうとする、婚約者候補から外したくせに! 他人なんだから近寄るな。


 そう思い、リーナと一緒にいた。


 家にいるとちょくちょく没収されるスイーツは学園で食べる事にしたらしい、クリームを口の端に付けて……幸せそうにしていた

 ここでは誰も取り上げないよ……



 また王子がリーナを見てる。


 仕方がない……クリームを親指で取って舐めた。


 リーナは普通にありがとう。と礼を言った。


 王子がすごい目で睨んできた。


 ザマみろ! リーナを悲しませるからだ!


 なんなんだよ、あのクソ王子!



 気がつくといつでもどこでも見てやがる、ストーカーじゃないか! 気持ち悪い。


 ランチだの、エスコートだの、デビューの祝い? 自分が何をしたか分かってるのか?



 ほら!お前のせいでリーナが嫌がらせを受けている。リーナは僕にも言ってこない、何があったか聞くと何が?と惚けるが、教科書…何冊買ってるんだよ…!



 クソ王子がリーナの変化に気が付いたらしい。お前がリーナに付き纏うからこんなことになったんだろうが!

 僕だけでは調査は行き詰まってしまったから、仕方なしに協力体制を取った。



 クソ王子が調査に入る前に、頭を下げて来た。



『カテリーナが好きなんだ。私はそう言った感情に疎い……愚かな自分を悔やんでいる、これから信頼を取り戻せるように努力する』


 驚いた。もっとクソかと思ったら、意外と真面目だったから……だから僕は言った。



『僕よりリーナを大事にしてくれる人じゃないと嫌だ。僕の家族を悲しませる事は、例え貴方であろうと許さない!』


『君に誓うよ。カテリーナが、私を選んでくれたなら絶対裏切らない。何かあったら私を好きにして良い』


 そんな事を言われたからには、後はリーナに任せよう。リーナが誰を選んでも僕とリーナには、切っても切れない家族の縁で繋がっているから。血より濃いものってあるから。




 リーナは無自覚で変な男ばかり寄せ付ける。ストーカーに、ロリコンに、あの執事に至っては、よくわからない存在……



 男の趣味は最悪だ……




 ……リーナが幸せならそれで良い。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ