表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者の化石(仮題)  作者: 廉価(roncele)
プロローグ
1/35

大量転生


 それは、この惑星がまだマナに満ちていない頃。

 別の言い方では、古生代の終わり頃。

 この地に七十八億人の転生者が出現し、そして圧死した。


 それは、およそなんの予兆もなく起こった。

 原始の森林の上空に、忽然と現れた転生者達。文字通り山のように巨大な肉塊であるそれは、一瞬の間、宙に静止する球体のようであったが、すぐに重力に従い始めた。

 自らの落下に気づいた彼らに、〈チートスキル〉を使うことはおろか、〈ステータスウィンドウ〉を開く時間の余裕も無かった。

 直径三キロメートル、重量四億トンに達する有機物の球体は、底を地面に接すると、より力学的に安定な形状を目指して円錐状に崩れていった。その裾野は水蒸気を上げながら、周囲の原始的な動植物を飲み込む濁流となった。シダ植物の森林が薙ぎ倒され、有羊膜類が逃げ惑った。


 圧死した転生者達の遺骸は、一帯を血と屍蝋の層で覆われた不毛の地に変えた。その後、長い歳月をかけて土砂や火山噴出物、そして土壌が堆積し、生態系は回復した。遺骸の層はその下、暗く冷たい地中で安寧を得ることになった。転生者達は地質年代的時間をかけて、鉱物置換――つまり、化石化していった。

 当初は一箇所に集中していた転生者の地層は、大陸地殻の移動に巻き込まれ、いくつかに分断され、多様な運命を辿った。様々な堆積岩に接しながらその成分を取り込むこともあった。あるいは海溝で半ばマントルに取り込まれそうになりながら、マグマの熱とともに深成岩に接することもあった。

 多様な環境は、転生者をまるで宝石のような、様々な美しい鉱物にした。

 硫化水素と反応した転生者は、あたかも黄金のように輝く黄鉄鉱に置換された。

 霰石を多く含んだ転生者は熱によって方解石に変化し、水晶の透明度を湛えた。

 珪酸分の浸透の仕方によっては、転生者はごくまれに、オパールと同様の虹色の遊色を見せるようになった。


 転生者は眠り続けた。その間、地表では様々な生物が累々と世代を重ね、繁栄し、絶滅していった。

 そして、三億年が経過した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これはすごい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ