第7話 見捨てられた島
――これが答え。
本土からの答え。
助けるつもりはない。
勝手に死んでいけ。
真っ白な紙面がそう告げている。
救助船は来ない。
待っても待っても永久に、来ない。
エィヌ島は名実共に見捨てられたのだ。
〈姨捨島〉、その名のとおり。
全ての力が抜けてしまったのか。
震える手に白い紙を握りしめたまま、ツバキナは床へと膝をついていた。
ぐるぐると頭の中を支離滅裂な想いが這い回る。
死ぬ。
みんな――ここで焼け死ぬ。
熱風に吹かれ、溶岩に呑み込まれ、跡形もなく消え去る。
一筋の希望が絶たれた今、途端に恐ろしい現実が目前に迫ってきた。
耳鳴りがする、歯の根も合わない。
涙が――止まらない。
絶望が少女の心身を蝕んでいく。
ガクガクと震え続けるツバキナの細い肩に、皺深い腕が優しく置かれた。
「ツバキナ、よく聞くんじゃ」
何かを諭すような威厳あるチヤギの声。
切迫した何かを内包している。
訳も分からず、ツバキナはふるふると首を左右に振っていた。
直感が告げている。
チヤギの言葉を聞いてはいけないと。
そこには悲しみと、そして慈しみが溢れているだろうから。
「聞きたくない……チヤギ婆」
「賢い子じゃからな、ツバキナは。勇気もある、それに優しい娘じゃ」
老人ばかりのこの島で、ツバキナとエソトオの存在は希望の光だった。
若い二人がこの村に居てくれたから、この歳になっても村人たちは皆笑顔で過ごせた。
そう告げるチヤギの言葉は、まるで遺言のようで。
聞きたくないと両手で耳を塞ぐのに、それでも指の間からチヤギの声が聞こえてきてしまう。
一生懸命否定の声を発しようとするのに、ツバキナの喉は涙に塞き止められてしまって……。
なのに、情けない嗚咽だけが難なく通り抜けていく。
幼い子供がするように。
ツバキナはただただ狂ったように首を振るしかなかった。