表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/37

第7話 見捨てられた島

 ――これが答え。


 本土からの答え。



 助けるつもりはない。


 勝手に死んでいけ。



 真っ白な紙面がそう告げている。


 救助船は来ない。


 待っても待っても永久に、来ない。



 エィヌ島は名実共に見捨てられたのだ。


姨捨島おばすてじま〉、その名のとおり。



 全ての力が抜けてしまったのか。


 震える手に白い紙を握りしめたまま、ツバキナは床へと膝をついていた。


 ぐるぐると頭の中を支離滅裂な想いが這い回る。



 死ぬ。


 みんな――ここで焼け死ぬ。


 熱風に吹かれ、溶岩に呑み込まれ、跡形もなく消え去る。



 一筋の希望が絶たれた今、途端に恐ろしい現実が目前に迫ってきた。


 耳鳴りがする、歯の根も合わない。


 涙が――止まらない。


 絶望が少女の心身を蝕んでいく。



 ガクガクと震え続けるツバキナの細い肩に、皺深い腕が優しく置かれた。



「ツバキナ、よく聞くんじゃ」



 何かを諭すような威厳あるチヤギの声。


 切迫した何かを内包している。



 訳も分からず、ツバキナはふるふると首を左右に振っていた。


 直感が告げている。


 チヤギの言葉を聞いてはいけないと。


 そこには悲しみと、そして慈しみが溢れているだろうから。



「聞きたくない……チヤギ婆」


「賢い子じゃからな、ツバキナは。勇気もある、それに優しい娘じゃ」



 老人ばかりのこの島で、ツバキナとエソトオの存在は希望の光だった。


 若い二人がこの村に居てくれたから、この歳になっても村人たちは皆笑顔で過ごせた。



 そう告げるチヤギの言葉は、まるで遺言のようで。


 聞きたくないと両手で耳を塞ぐのに、それでも指の間からチヤギの声が聞こえてきてしまう。



 一生懸命否定の声を発しようとするのに、ツバキナの喉は涙に塞き止められてしまって……。


 なのに、情けない嗚咽だけが難なく通り抜けていく。



 幼い子供がするように。


 ツバキナはただただ狂ったように首を振るしかなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ