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第27話 使命(エソトオ)

 これは罠だ。


 父王を自国へと帰還させ、油断したところで武力によって排除しようという企みだ。



 当然、エソトオが告げるまでもなく、賢王はその策略に気づいていた。


 それでも月昇球への帰途についたのは、この逃避行にこれ以上の意味を見いだせなかったからだろう。


 そして彼は、そんな紛争絶えない国へ愛息子を伴うのを躊躇っていた。



 父王はこの島で温かい村人たちの心に触れ、安全なこの場所に愛する息子を残したのだ。


 エソトオを守るために。


 そしてさらに、遠い未来にエィヌ島を襲う厄災から村人たちを救うために。



 この島を飛び立つ時、父スミナダドウの胸にはきっと熱い想いがあったのだろうとエソトオは思う。



 月昇球はいつか公然と、この地上人たちとの交流を達成すべきなのだと。


 だからこそ、罠だと分かっていながらも、生き残った一族を連れて自国へと旅立ったのだ。



「僕は……」



 スッとエソトオは掴んでいたツバキナの手を放した。


 怪訝な顔をするツバキナを尻目に、エソトオは自問する。



 ――どうしたい?


 僕は何を望んでいる?



 チヤギの言葉に翻弄されるな。


 自分の心を覗いてみろ。



 本当は……村人たちを救いたいと願っているのだろう?



 素直になれ。


 そして心のままに行動しろ。



 父王スミナダドウは、きっと自分を信じている。


 エソトオが正しく判断することを望んでいる。



 自分の胸へと手を当ててみる。



 この胸に〈飛翔石〉がある。


 ツバキナの腕にも母マダクシの命が。



 二つを使えば〈ハンマユラリュ号〉を海へと出せる。


 しかし荒れ果てた海に出たところで、航海は無事に果たせないだろう。



 もともと空を飛ぶために造られた船だ。地上のものよりずっと脆い。


 荒波に揉まれたら、あまり長くは保たない。



 ――いや、諦めるな。



 方法はまだある。


 ただし、二つの〈飛翔石〉は砕けてしまうだろうが。



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