第23話 動揺(ツバキナ)
ツバキナの叫びに、少しだけエソトオの顔に動揺が走る。
しかし、やはり理性的な彼のこと。
困惑を続けず、一瞬で平静を取り戻す。
すぐに原因を求めて彼女の腕へと視線を移し、そこに黄ばんでしまった書物を見つけた。
「チヤギの書付を読んだのか」
「……そうだよ。この洞窟に飛翔船があるのも分かってる。エソトオが月昇球の王子様だってことも。でも、もう遅いの。今から船を出したところで、もう間に合わない。だから、エソトオ。あなただけでも逃げて!」
大声をあげた瞬間、祠がぐらりと揺れた。
その後も地震は収まることなく、小さな揺れを繰り返している。
もう本当に時間がない。
「僕はこの島を出る。チヤギ婆を悲しませるのは嫌だから。だから――ツバキナも置いて逃げるわけにはいかない」
ツバキナの気持ちなど関係ないとばかりに冷厳に言い捨てて、エソトオがツバキナの腕を掴む。
強い力で引かれ、ツバキナの身体が引き摺られるように扉へと連れて行かれる。
木の床を踏みしめて力の限り拒否を示すが、涼しい表情のままエソトオは強引に腕を引く。
このままでは自分の意志とは別に、みんなを見捨てることになってしまう。
そんなのはいやだ。
自分が赦せない。
納得できない。
「や、やめて、エソトオ! わたしはあなたとは違う! チヤギ婆とわたしは血が繋がってるの、家族なんだよ! 絶対に見捨ててなんていけないの! でもエソトオには関係ない。生きて月昇球に帰って、お父さんに元気な姿を見せないとダメ! だから早く逃げて!」
渾身の思いで叫んだ言葉。
そこに何があったのか。
まるで雷に打たれたかのように、ぴたりとエソトオが動きを止めた。




