引き出しの中
2連続投稿。
これで実質四年投稿しなくていいはず!
「うわっ…」
目の前にあるのはどこまでも広がる広大な大地、晴天の青空、生い茂る緑と、恐竜と、スカイツリーと…
「す、スカイツリー…」
隣で弟が唖然としている。当然だ。俺の引き出しの中にこんなミニチュアが出来てるなんて考えられない。恐竜動いてるし。
まるで白亜紀に突然スカイツリーが立ったのをドローンのカメラで撮っているような眺めだった。
実際は引き出しを覗き込んでいるだけである。
ついさっきまで、この中のミニチュア世界は昔の地球の姿だった。それを奴が何をとち狂ったかスカイツリーを立てやがった。
タイムマシンと説明されていたからだいぶ焦った。
しかし、その瞬間からこの引き出しは、僕が生きる世界から分離したそうだ。これから何をするのも自由自在。作るも壊すも大丈夫。奴はそう言った。
この引き出しの中のミニチュアはこれから、奴の持つ異世界となる。
さて、弟にどう説明しようか。
ここを見せるまでの流れは不可避だったが、これ以上深入りさせたくない。というか奴に合わせたくない。
「こういう高性能パノラマを作れるのがこの会社製のこの種類の机のこの引き出しだけなんだそうだ」
でもこの言い訳はかなりきつい。あの純粋な弟が怪訝な目をしている。
「それで泣きながら頼まれたから仕方なく受け入れた。あいつは基本俺の部屋に軟禁しとくからお前は気にしなくていい」
「…わかった。気を付けろよ。そういう手合いは決まって隠し武器なんだ」
そう言ってパトロールに向かってくれた。とりあえずこの場は流してくれるらしい。…って
「ちょっとまて、僕はいつのまにあいつサイドになった?なぜあいつのためにこんな苦しい言い訳を…」
「それはまあ、ワタシのこの溢れ出る神々しさにお前が魅了されただけだろう。少年」
まただ。こいつが来るときは一瞬音が消える。
突然出てきてふざけた言葉を抜かしやがったのはこの自称神。居候である胡散臭い青年だ。今引き出しから出てきた。誰がこんな男に魅了されるかよ。
「こんな男と、オトコと言ったな。お前らはなぜかそういうこと、愛について男女でしか成り立たんと考えている節があるが、それは仕方ないだろう。本能的なものだ。しかしこのワタシの美しさはそういうのとは違う、性別なんぞには縛られんものだ。改めて私を見てみろ。どうだ、そそるだろう?」
キモい。こいつは話せば話すほどキモくなる。食費はおろか家賃さえ徴収できない(財布を持っていなかった)こいつを未だに家から追い出していない自分が不思議でしょうがない。
「それはね、少年、ワタシの美しさが…ふむ、では少年のために人間の進化を分岐させて見るか。こい、ヤチンとやらを払ってやろう。現金じゃなくてもいいんだろう?」
「ろくなもんじゃなければ土下座ね」
奴は首を竦めたのち、引き出しを閉じてぽんっと叩き、10秒ほど目を閉じ、開いた。
そして再び引き出しを開く。
引き出しの中の光景は、なるほど確かに値千金かもしれなかった。が、
「よし、どうだ、これが人間が同性同士でしか生殖出来なくなった世界だ」
「ぎゃーー!」
が、その前にR18だった。
嘘です二年以内に書きます