出会い
1年に一度は更新します
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現在夏休み中。ぼっちなので予定は当然なし。
暇なので筋トレをしている。
「筋力じゃなくて人間力を磨け、兄よ」
「そんなことを言ってくれるのはもうお前だけだよ弟よ」
不肖たった一人の兄弟である。なかなか素敵な性格をしており、この辺では多分俺の次に友達が少ない。ただし300人の舎弟がいる。
「この前狩った東中の連中ボールにしてサッカーするんだけど兄貴も来るかい?」
普通なら断るのだが他とない兄弟の頼みである。ふぅ、久々にノってやるかと思っていると、ふとカレンダーが目に入った。
「今日西中と最終決戦と書いてあるが?」
「うん。東中をボールに、西中をゴールに見立ててサッカーするんだ」
いかしてるぜ。しかし西中と言うとサッカー(隠語)の強豪と聞く。
「やめとく。多分足引っ張るから」
「了解。出来るだけ穏便に済ませるよ」
弟が出て行った後に鍵を閉める。あいつは家を特定されないように様々な対策をしている。鍵を持ち出さないのもその一環だそうだ。
さて、暇である
「観戦でもいくか?いや古本屋…墓参りは行ったばっかだしなー」
休み一週間目で宿題をやるのもナンセンスだ。でもこの天気の良い日に家でゲームなんてのはあり得ない。
「よし、ポケモンGOだ」
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定期で行ける範囲内でのポケモンの巣はなんと家の近くの公園しかないのでとりあえずスマホともっち歩きチョコパンだけ鞄に入れて家を出る。
このジメジメして暑い空気も四方八方から聞こえるセミの鳴き声も、今が夏休みというだけで全てが気にならない。昼間からする散歩は最高だ。
どかーん!ばこーん!
はっ!爆発音!…なんだ河川敷の方からだったか。よかったよかった。あいつらは火薬を人に向けるようなことはしない。きっと今のは開戦の狼煙か何かだろう…
「あれ?」
そこで気づいた。レイドバトルの場所を大きく通り過ぎている。浮かれてたから気づかなかったのかと思ったが、原因は他にあった。
「人がいない」
特に特徴もない大きな木という分かりづらいポケスポットだ。ながらスマホ断固反対派の僕は今まで、その場所を先客たちの人混みから見つけていたのだ。
今は絶賛夏休み。そして真昼間。いつも来ている専業主婦のおばさまたちさあいないというのは、僕にとってあまりに異質な光景だった。
セミの音もいつの間にか途切れていた。
周囲から音が消えた。
突然身体が硬直し、息が吸えなくなる。
ぴきり、と何かが割れた音がした。
突然目の前に裸の男が光を纏いながら降りてきてこちらに土下座した。
状況の理解に一分かかった
「え、あ、え?」
片手のスマホは臨戦態勢だ。何故か周りに人が急にいなくなったが警察を呼ぶのは容易い。
男は何がしかを口走っている。恐る恐る近づくと、この男は、
「うぐっ」
「うぐっ?」
泣いていた。シクシクと。こちらに土下座しながら。
二十歳くらいに見える。飛行石はつけてない。パンツすら履いていない。顔は見えない。オーラがなんか神々しい。果たしてこれは警察案件なんだろうか?
なんというか、あまり雑に扱うとバチが当たりそうな感じがした。
そして、不思議な予感があった。
「まあとりあえず、立てる?」
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「ただいま」
「お帰り」
夜7時、弟帰宅。頬にすり傷三つ、朝と服が変わっている。着替えたな。
「重体が3人だけ。死者は出てない」
「上出来じゃん?ご飯できてるよ」
弟の視線が机の上の料理から母の遺影に移りかけ、また食卓へと戻ってくる。
「靴はなかったけど、客?」
おかずの量の多さから判断したか…できれば隠し通したかったんだが。
「居候だ。俺の部屋に住まわせる」
「…兄貴の部屋はベッドひとつだったよな?」
弟の顔がニヤニヤしたものに変わっていく。誤解である。あんなんと同じベッドで寝るはずがない。寝る場所がないぞと追い出そうとした時奴はこう言ったのだ。
「奴は引き出しの中に住むそうだ」
「ドラえもんなの?」
「俺もそう思った」
しかし、ドラえもんが寝るのは押入れだ。
引き出しの中はタイムマシンである。
そして何故か僕の机の引き出しも、ついさっきタイムマシンになった。
なんでやねん。
やっぱ2年に一度にする