表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fake Ghost Vox  作者: uki
3/10

俺は誰だ?

2日目  俺は誰だ?


千歯こきだとかπがアールだとかマンパワーだとか最近の講義はやたらといやらしくて困る。

妄想が捗って頭に入ってこない。特にやばいのは地図記号だ。あんなもの、確信して作っているとしか思えない。発電所のドスケベさときたらもう・・・

キーンコーンカーンコーン

そうこうしているうちに放課後になった。

教室の外に出るとレイが待っていた。時間ぴったり。

「さぁ、行きましょう」

心なしか少し焦っているように見える。

「なぁ、何かあったのか?お前様子が変だぞ?」

「別に何も」

そう言ってそっぽを向いたレイの表情は見えない。思い過ごしだといいが。


着いた。特別棟3階の角部屋。当然だがこんなところ来たこともないし人気もない。空もだんだん昏くなってきてなんだか不気味だ。

コンコン

「すみませーん」

控えめにノックしてみた。すると

「・・・・どうぞ」

中から女の低い声。この中にはやはり魔女がいるのだろうか。隣を見るとレイがごくりと唾を飲み込んでいるところだった。

ガラガラ。中に入ると真っ暗な中に机がひとつ。かろうじてそこにある蝋燭で見える程度。

わざわざ暗幕を巻いて光を遮るほど徹底している。

「・・・あんたがフォーチュン田中か?俺たちは・・」

「面倒な説明は不要よ。あなたが言いたいことはこの水晶玉が教えてくれたわ」

「なら話が早い。知ってることを教えてくれ」

「急かさないで。あなたがやるべき事が今は他にあるわ」

「やるべきこと?」

レイは俺たちの会話を黙って見守っている。。空気を読んでいるというやつだろうか。

「今は待ちなさい。事件は向こうからあなたに降りかかるわ。」

事件ってもしかしてレイのことだろうか。

「早く行きなさい。時間は待ってはくれない」

こいつももしかしてB型か。自分の都合しか話さない。

そういうと田中は黙り込んでしまった。これ以上の収穫は無さそうだ。

「ありがとう。また何かあったら来るよ」

そういうと俺は部屋を後にした。少しだけ田中の口元が緩んだのは気のせいだったろうか。



「つまりどういうこと?」

二人きりになった帰り道レイが口を開いた。やはり気を使ってくれていたようだ。

「わからん。とりあえず今は待てってことだろう」

「そう・・・」

気まずい沈黙が流れたその時、ピカピカ。夜道で何かが光った。近づいて確認する俺。

「蛍だ」

「蛍?この時期に?」

もう冬に入るこの時期に蛍がいることは珍しい。いやありえない。そもそも蛍が住み着くような綺麗な街ではなかったはずだ。最近よく見る虫の正体はこれだったのか。

「これはもしかしたらヒントになるんじゃないか?ありえないことが起こっている」

「確かに、あのインチキ占い師の言うこともまんざら嘘ではないのかも」

インチキ占い師って田中のことだろうか。確かに名前からして胡散臭かったのは事実だが。

街に起こる不可解な現象。これを集めることがどうやら解決の糸口になりそうだった。

「きっと蛍だけじゃないはず。もっと街には異変が起こっているのよ。私探してくる!」

そういうとレイは走ってどこかへ行ってしまった。何か様子がおかしい。

やっぱり昼間に何かあったんだろう。


「おやおや、相変わらず騒がしいお方ですね」

「うわっ」

気が付くと音もなく俺の背後にスーツの仮面の男が立っていた。

「あんた誰だ?レイが見えるのか?」

俺の第六感がびんびん告げている。こいつは危険だ。

「あなたこそ何者ですか?人に名を訪ねるのならまずは自分からでしょう?」

口元の余裕の笑みが俺をイラつかせる。多分だが仮面の奥の瞳は笑ってはいないだろう。

「あぁ答えてやるよ。俺は・・・俺は・・・」

おかしい。名前を聞かれたから答える。そんな当たり前のことができない。

「そうでしょうとも。あなたは答えられない。それでは、一番最近自慰行為つまりオナニーをしたのはいつ?オカズは何でしたが?」

「馬鹿にするなっ!そんなの・・・」

馬鹿な。答えられない。オナニーは俺の生活の大半をしめるファクターのはず。それが答えられない。

「そうでしょうとも。この事実をあなたはどう考えますか?」

名前もわからない。何を今までしていたかも思い出せない。

「まさか、俺は記憶喪失なのか?」

そうとしか考えられない。でも何故そんなことに気づかなかった。異変は俺にも起こっていた。

「その答えを私から教えることは今はできません。あなたが街の秘密にもう少し近づいたときあるいは・・・・」

手汗が止まらない。簡単に考えすぎていた。心のどこかで俺には関係のないことだと思っていた。

「もったいつけるな!答えろ!」

自分でも驚くほど大きな声が出た。しかし

さーーーーーっと。風が吹いた。仮面の男は跡形もなく消えていた。



「ただいまー」

体がだるい。頭の中がぐちゃぐちゃだ。

俺は誰でなんでここにいる?両親の名前は?俺を俺と定義づける全てが曖昧。足元が崩れ去っていく感覚。気持ち悪い。

「もう寝てしまおう」

モテ男だとか気にする余裕もなかった。シャワーも浴びず俺はベットに飛び込んだ。



「これでよかったのよ」

「いやいいわけないだろ?君のやろうとしていることは間違っているよ」

男女が言い争っている。薄暗い部屋にコンピューターがところせましと並んでいる。

部屋の中央に謎の大きな箱。中で黒いなにかが蠢いている。

「どうして?これでみんな幸せになれるのよ。もう苦しまなくて済むの!」

女が中央の箱を指さす。

「それでも間違っている。そんなのは逃げだよ」

「どうしてわかってくれないの?・・・これがなければあなたは」



ガバっ!

ベットから飛び起きた。何だ今の夢は。夢なんてしばらく見なかったのに。

「妙にリアルだったな・・・」

男の顔は見えなかったが女はたしかに

「レイだったよな・・・」

あいつ何かとんでもないことをしたんじゃ・・・。

シーツが汗でぐっしょりだ。気持ち悪い。風呂にでも入ろう。

タオルを取り出して浴室へ向かう準備をし終えたところで

ガチャリ。

玄関から物音が。どうやらレイが帰ってきたようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ