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Fake Ghost Vox  作者: uki
2/10

彼は嘘をついている

2日目  レイと仮面の男


カーテンから差し込む朝の光で静かに意識が覚醒していくのを感じる。

すこし気だるい体を無理やり起こしてわずかな希望をたずさえリビングへ。

「むにゃむにゃ・・・」

っち!気持ちよさそうに寝てやがる。俺の平穏を突如壊した現況。ノイズ。夢ならよかったのに。人の気持ちも知らないで・・・

「おい、起きろ!」

幽霊女はむくりと体を起こして

「ん?もう朝?」

呑気なもんだな。はぁ・・

ぐ~~~~!俺のため息は可愛らしいお腹の音に飲み込まれた。

「お腹すいた」


朝はオレンジジュースにクロワッサン、スクランブルエッグに軽く油で揚げ炒めしたベーコン。ん~完璧。

「・・・・あなた料理できたの?」

失礼な女だ。こんなもの誰だって作れる。

「まぁな。食いながら今日どうするか話そうぜ」

「ほれもほうね」

「口にものを入れたまましゃべんな」


ある程度お腹も膨れてきたので切り出した。

「お前、名前は?」

いつまでも幽霊女では都合が悪い。

「わからないの・・・私が覚えているのは誰かに殺されたってことだけ。たぶん高いところから落ちたんだと思う。」

こいつは困った。ある程度の情報から絞り込めると思ったのだが。

「とりあえず名前がないと不便だからお前は今日からレイだ。」

幽霊のレイ。我ながら安直だが別に気にすることもないだろう。

「わかったわ。私もいつまでも幽霊女じゃ気分悪しね。ところであなたのことは何て呼べばいいの?」

テーブルに手をついて身を乗り出し俺の顔を覗き込んでくる。ちょっとドキドキしたのが悔しい。

「好きに呼べ。旦那様でもご主人様でもお兄ちゃんでも」

名前で呼ばれるのは嫌いだ。あれ?でもどうして嫌いなんだか思い出せない。そもそも俺の名前って・・・・

「その選択肢はありえないからとりあえずあなたでいくわ。」

「さよか」

最低限度の取り決めが終わったところで今日の予定だが

「オカルト研究会に行こう!うちの学校にあるみたいだ。昨日のうちに調べておいた。」

正直気が進まないが仕方ない。部長はフォーチュン田中とかいう胡散臭い名前で活動の実態も謎。ただ、他のところを闇雲に調査するよりはいくらかましだろう。

「幽霊だからオカルト。安直すぎる気もするけど今は手掛かりもないしね。行きましょう」

「そうと決まれば準備しろ。その格好で外歩いてたら捕まるぞ?俺のスウェット貸してやるから。」

「どうして昨日貸してくれなかったの?」

心なしかレイの眉間に皺が寄っている。

「いい質問だ。だが裸ワイシャツが男の夢なのも事実。理屈じゃないんだよ。それに俺は昨日ビックリして風呂に眼鏡をおきっぱだっただろ?あまり見えてなかったんだよ」

「たしかにそうね。眼鏡してなかったから私の裸も見えなかったって言ってたし。信じるわ。」

「あぁ最近度も合わなくなってきたしな。近いうちにメガネ屋に行かないとな。」

朝の雑談。何を幽霊となごんでるんだ俺は。


「準備できたかー?」

タッタッタ。レイが走ってくる音が聞こえる。

「はーい。お待たせ。」

幽霊って足あるのか。そもそもなんで足音鳴ってんだ?床に触れるってことは俺は何でおっぱいに触れなかったんだ?謎は深まるばかり。

「んー・・・・・」

「何一人で唸ってるの?行くわよ」

よく考えれば幽霊と言うことを除けばレイはそこそこの美少女。美少女との登校。これは悪くないんじゃないか?テンション上がってきた。

「おう!」


学校までは歩いて15分ほどだ。途中でタヌキと合流することを考えても20分で着く。

最近よく見る虫の話、少し肌寒いだとか猫がいるだとかとりとめのない会話をして学校を目指した。

「なぁ、さっきから俺見られてね?」

周りの視線が騒がしい。まるで危ない人でも見るかのように」

「それはそうでしょ?あなたの隣にいるのは幽霊なのよ?ちなみにあなたにしか私は見えないみたい。」

なるほど納得した。どおりで

「そういうことは早く言え!」

あぁ恥ずかしい。俺はこの10分間ずっと虚空に向けて独り言を言う頭のおかしい奴だったんだ。温厚な俺もレイの前では何故か感情的になる。よくわからない感覚。

「わかってると思ってたの。それよりあれあなたのお友達なんじゃない?」

レイの指さす先には信楽酒造店の前に立って俺を待つタヌキがいた。信楽だからタヌキ。タヌキはそこらによくいる茶髪のチャラ男だ。それ以上でもそれ以下でもない。

「よう相棒!朝っぱらから何一人で騒いでたんだ?」

「うるせぇ、ほっとけ。そんなことより昨日のことは・・・」

「あぁわかってる。あんなの俺たち以外信じねーよ。内緒にしとくほうがいいに決まってるぜ」

つーといえばかーと返ってくる。お互いをわかりきっているこの関係はエロゲ以外では唯一の安らぎだ。

「ねぇ、あれってなんのこと?ねぇ?」

レイがしつこく付きまとってくるがタヌキの前で会話するわけにもいかない。

「ねぇ、無視しないで、ねぇ?」

悪いが一人になるまで会話はできない。悟ってくれ。頼むよ。

俺の祈りが通じたのかレイは話しかけるのをやめてつまらなそうに後ろを付いてきた。今更なんだが、連れてこなくてもよかったんじゃね?と気づくのが遅すぎた。

タヌキと、無機物ならどこまでオカズにできるかで盛り上がっていたらあっという間に教室に着いてしまった。オカルト研究会に行くのは放課後。すまないがレイには待ってもらうことにした。



SIDE  レイ

「まったくなんなのあの男ありえないわ。」

ふんすと地面をならしながら歩く私は不機嫌そのもの。女の子を無視した上に6時間以上も待たせるなんて。6時間も無駄にするなんて今の私には考えられない。あいつはあてになりそうにないし私は私でできることをしましょう。

学校の窓から街のメインストリートが見えていたから迷わずこれたわ。さぁこれからどうしましょう。私は高い場所から落ちて死んだ。これは確かな情報。ならばまずは登れる高いビルを片っ端から探しましょう。案外あっさり当たりを引くかもしれないわ。

「絶対に探し出してやるんだから」

私は燃えていた。


5時間後ーーー

これだけ探して手掛かりなし。もう階段を上るのはこりごり。このままじゃ足が鉄拳のKINGみたいになっちゃう。疲れて途方に暮れていたその時そいつは現れた。

「もし、お嬢さん?何かお困りですか?」

ピシッとした光沢のある白のスーツに背の高いシルクハット。とんがり靴を履いた仮面の男が私の隣に立っていた。

「そうなの。見つからなくて疲れちゃった」

知らない人にも弱音を吐く始末。私って弱いな。・・・え?今なんて。

「私が見えるの?」

仮面の男はニッコリと(仮面で口元しか見えないけど)頷いた。

「今わたしからひとつだけあなたに言えることがあります。彼は嘘をついている」

「え?今なんて?あなた何か知ってるの教えてよねぇ!」

気づくと仮面の男はもういなかった。煙のように消えてしまった。唯一の手掛かりだったのに。彼ってもしかしてあいつのこと?これが本当だとしたら・・・今は慎重になるべきね。仮面の男のことはあいつにはしばらく言わないでおきましょう。

午後3時。約束の時間。上手く整理のつかない頭で私はあいつの学校に向けて歩き出した。


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