女性用【耳で見る心】
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もの優しげな女性
[あらすじ]《2分半程度》
ロッキングチェアに座る女性は足元でイビキをかきながら眠る愛犬にクスクス笑ってから私の方へ顔を向けた。眠そうな彼女は少し前に聞いた私の質問にやっとこさ答えてくれた―――。
【もの優しげな女性】
人を顔で判断した事はなくてよ、お嬢さん。
優しい人は顔じゃ分からないわ。
危険な人も同じ。優しそうに見えても、格好よくても、可愛くても。危ない人は上手く擬態するのよ。
もう亡くなったワタシの主人だって。
とても険しい顔をしていたみたい。ワタシはよく分からなかったけれど。
でも、ワタシの為にこの家を買ってくれたわ。ワタシの為にまだ子犬だった愛犬を躾てくれたわ。
ワタシの為に生きてくれたわ。
近所の子供達には「頑固ジジイ」だなんて言われていた主人だけれどね、本当はとてもとても優しいの。
このイスもね、息子が買ってくれたものなのよ。
「母さん、日向ぼっこ好きだろう」って。
ワタシの誕生日に。
ふふ。そう、優しいでしょう? 主人に似て随分と大柄に育って、幼い頃に出来た額の傷が痕になってしまってね。
…よく、虐められて泣きながら帰ってきたものだわ。……でも、やり返す事もせずにただただ泣くだけの弱虫で、優しい子なのよ。
……ワタシは主人の事を顔で好きにならなかった。息子の傷も、痕になってしまうと思うと悲しかったけれど、でも。醜いと思った事もなかったわ。
ねえ、家出のお嬢さん。
顔で人を決めるのはちょっとだけ止めてみない? 最近の事なんかちっとも分からない老耄たお婆さんだけれど、貴方よりは長生きよ。貴方よりは生き方を知っているわ。
………ふふ。帰るも帰らないも好きになさいな。明日は息子夫婦が来るから少し騒がしくなるけどね。
ああ、そうだ。お嬢さん。
暖炉の上にある本を取ってくれる? ……いいえ、分厚くとも内容はあまり無いのよ。
だってこれ、点字の本だもの。
ワタシ、生まれつき盲目なの。
あら、ふふ。言ってなかったかしら。
STORY END.




