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一人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
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男性用【二番目が愛した「彼」】

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 ♂1︰♀0︰不問0


 ロロ=フィ

〈工業都市の鍛冶屋(かじや)で弟子をしている土妖精(ドワーフ)の青年。不思議な体験をする事が多いのでよく人間にそれを言って聞かせたがる〉


[あらすじ]《5分程度》

 王都モゥムとは真逆に位置する工業都市ミョルベーム。ぽつんと(たたず)む一つの鍛冶屋。厳格(げんかく)な親方の一番弟子、ロロ=フィは二番目の母親について語り出した―――。








【ロロ=フィ】

 特にさ。仲が悪いとかそういうのじゃなかったんだよ。


 …うん、そう。ボクを生んだ一番目が死んじゃってからすぐにやってきたヒトだったけど(わり)かしちゃんと母親やってたんだよね。


 アレはいくつぐらいだっけ。

 50歳くらい? まだまだチビでさ、里から出る事すら禁じられてた時に。

 二番目がちょっとおかしくなったんだ。


 おかしくなった、ってのは急にって訳じゃなくて。最初から変なヒトだったよ。…まあ純血(じゅんけつ)土妖精(ドワーフ)じゃなかったからっていう色目(いろめ)偏見(へんけん)はあったのかもしれないけどね。


 でもおかしくなった。

 二番目との会話の中に「彼」が現れ始めたんだ。…ん? さあ? 誰だろうね。

 二番目がすっかりおかしくなっちゃっても、ボクがこうしてあの時の事を話せるようになっても相変わらず「彼」の事はちっとも分からないんだ。


 あ、そうそう。当時のボクは「彼」が嫌いだったよ。二番目を取られちゃった気がしてさ。

 二番目は多分、…そう。多分だけど言葉に表す事が億劫(おっくう)になるくらい「彼」が大好きだったんじゃないかな。

 ガキだったボクも何となくそれを察してて、それで「彼」が嫌いになっちゃったんだと思う。


 ……、ある日ね、二番目が言ったんだ。

 「彼」がそろそろ目覚めそうなのって。


 何だか気味(きみ)が悪くてさ。ボクはそっか、って。それだけ。でも二番目は幸せそうに息を吐いてたよ。


 それから二番目は日に日におかしくなるばかりでね。ああ、別にね? 発狂(はっきょう)したりだとかいきなり暴れ出したりだとか、そういうのは無かったよ。


 ただ、何か…。

 アレは何て言ったら…ああ、うん、そうだね……


 …まるで。……まるで隣に「彼」が居るような仕草(しぐさ)をするんだ。仕草…うーん、行動?

 何も無い所に話し掛けたりとかそんなのじゃなくて。


 そうだな、例えば二番目がイスに座ってるとさ、あ! って立ち上がるんだ。何かを思い出したみたいに。そうして二番目は自分の隣にイスを置くんだ。

 ボク? ボクは二番目の向かいに座ってるよ。だから彼女は「彼」が座る(ため)にイスを置くんだよ。


 二番目の奇行(きこう)は家の外でもあってさ、ボクは里の大人に心配されたよ。

 まだ100歳にも満たない子供だったからか、夜はウチで食べてくかい。なんて声を掛けられた事もあったね。


 でもね、二番目だって何だかんだちゃんと母親なんだ。「彼」が関わらない限りボクにとっては大切な二番目だったんだ。

 だからボクはボクを心配する大人達に首を振って二番目の待つ家へ帰っていたんだ。


 ………………。


 あの日。

 あの、雨の日。


 土砂(どしゃ)()りだったよ。

 土妖精(ドワーフ)自慢の立派な家が壊れそうになるくらいの雨の日。


 二番目はボクに『出てけ』って言ったんだ。


 何でって聞いたらさ、


 「彼」と住むんだって。

 「彼」がここに住みたいんだって。


 ボクはね、昔からちゃんと分かってた。

 二番目にとってボクは大切な息子だったけど、ボクよりも「彼」の方が大切な何かなんだろうって。


 だからボクは分かったって言ったんだ。

 それから吹き飛ばされそうになって、ずぶ()れにもなったけどこの工業都市に着いて、親方に拾われたんだ。

 あーんな怖い顔してるけど結構良い人なんだよ。


 ……二番目? さあ? 今何してんだろ。あんなに大切だったのに今ではそんなに興味無いんだ。…っと。三番目…じゃなかった母さんが呼んでるや。


 母さんって言っても親方の奥さんなんだけどさ。三番目っていうと脳天(のうてん)がカチ割れそうになるくらい怒られるんだ。


 まあ、これがおかしくなった二番目の話。…そう? じゃあ機会があったら別の話をしてあげる。またおいでよ。道中(どうちゅう)気をつけてね。









STORY END.

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