女性用【語り部沙揺〜語り名編〜】
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沙揺
[あらすじ]《4分程度》
語り部沙揺は亡国の姫であった。兄弟子を「お兄様/お姉様」と呼ぶ彼女の語りは師匠にも太鼓判を押されたほど。さあ、本日は何を語ろうかしら―――。
【沙揺】
皆様、ごきげんよう。
ワタクシ、沙揺という名をもらいました、語り部でございますわ。
お師匠様との三年間…、お兄様やお姉様に会いに行った二年間…。たくさんの愛と教育のお陰でワタクシ立派な語り部に育ちましたわ。
本日は何を語るかもう決めているんですの。皆様の疑問にお答え致しますわ。
ワタクシ達は、語り名というものを持っていますけれどこれは本名ではありませんわ。
ワタクシは沙揺。お師匠様は鹿華。一番上のお兄様は…、と。あげていくとキリがありませんわね。
語り部という職は『誰でもなれ』ますわ。資格もお金も要りません。
…ワタクシのような世間知らずな娘ですら、こうして皆様の前で語れているんですもの。
必要なのは楽しく正しい語りが出来る自身の力と、自由でありながらも同業者の方に配慮が出来る優しさですから。
…っああ、そうでしたわ。語り名のお話でしたわね。熱くなって話があらぬ方向へ向かっていくのはワタクシの悪い所です。…よくお師匠様にも窘められましたわ。
皆様にこうしてお話出来るのが楽しくって、つい…。お話を戻しましょう。
語り名は本名を使ってはなりません。
なぜかと聞かれますと困りますの。ワタクシのお師匠様ですら明確な答えを下さった事がございませんから。
ただ、ワタクシが自ら見つけてみた自分を納得させるだけの答えならありますわ。
語り部の世界に『語り部の本当』は必要無いんじゃないかしら。と。
“本当”も、“正しい”も、“正義”も。
“嘘”も、“偽物”も、“悪”も。
語り部が語り部になる為に必要だった“過去”も。
語り部はそれを面白おかしく、けれど結局は皆様の“知識”や“経験”となるように語る事しか出来ませんの。
語り部は“間違ってはならない”のですわ。
間違った情報を語る事、それ即ち。語り部の穢れ。
正しくない知識を語る事、それ即ち。語り部のハグレ。
お師匠様はワタクシやお兄様やお姉様達にそう教えましたわ。
だからこそワタクシは思うのです。
『語り部の本当』は『間違っている』のかもしれないと。
語り部は語り部だから、語り部なのですわ。
ワタクシが元の名前に戻ってしまえば、ワタクシはもう語り部ではないのです。
だからきっと。
語り部達は自らの名を自らで抱え込み、語り名という飾りをつけて、『本当』を語っているのですわ。
本名は自らを語り部ではなくさせてしまうから。
……なんて。
こんな風な答えを出してみましたけれど、考えれば考えるほど深みに嵌っていく気がしましたので、答えを出したっきり考えるのは、とうの昔にやめてしまいましたわ。
それにお兄様やお姉様…たった一人の可愛い弟も、…お師匠様ですら分からなかった答えにワタクシ如きが辿り着けるわけありませんもの。
ふふ。そろそろ行きましょう。
ワタクシ、本日も皆様とお話が出来て嬉しゅうございましたわ。
またお会い出来る事がございましたらその時も是非お立ち寄り聞いていってくださいませね。
語り部沙揺は風の跳ねる音を聞いて旅立ちますわ。
STORY END.




