男性用【語り部将戡〜味方殺し編〜】
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将戡
[あらすじ]《4分半程度》
語り部将戡はもう随分と老耄だ。なぜか他の語り部に「先輩」と呼ばれる彼は今日も穏やかな顔をしてゆったりと語り始めた―――。
【将戡】
そろそろ皆、集ってきた頃かねえ。始めようか。
小生は語り部の将戡。ただ長く続けてきただけの老耄だね。
語り部歴? そうだね。もう六十数年になるかね。色々な事があって、たまに思い出したりだとかするけどね。
…寂しいも侘しいも楽しいも賑やかなのも…全部、『懐かしい』なんだね。
さあ。今日は何を語るか。
ここは今でもソーマとの戦争中かい。大変だね。
……これも『懐かしい』、戦いの匂いだ。
久々に小生の昔の話でもしようか。
今日は少し退屈やもしれないね。
小生はね、若い頃王都に居たんだよ。
当時の騎士団で第二に居たのかね。その辺の記憶は曖昧だけどね。
当時は、どことでも戦争してて…正直に言えば楽しくてね。敵を斬る感覚も、腕の中で同胞が死に行く感触も。
……今思えば、おかしかった。
戦争は、人も国も、おかしくさせる…。
小生が元々持っていた気違いな所が出てしまったのもあるやもしれないけれどね。そう思わなければ散っていった民や同胞に申し訳なくてね。
…ある日の事だ。
当時の団長に呼び出されてね、小生が一等仲良くしていた団員が諜報員やもしれないと。
当時も今もそう言うのは多くてね。
どこもかしこもお互いを探りあっていて。小生は薄気味悪くてね、そういう所は見ないようにしていた。
………見ないようにしていても、あちら側から突っ込んでくる事があるんだね。
小生はね、団長がそれを小生にだけ話した意味を分かりたくなくて…でも分かってしまって。
次の戦場で。
小生とその団員は前線に立った。互いに背中を預けあって、他の団員にも「阿吽の呼吸」だなんて言われてしまってね。
ああ、どうしようか。なんて。
已めてしまおうか、なんて。
どうしようも出来ない事をたくさん、たくさん考えて。
そうしたらねえ、向こうから言われたよ。
“正解だ”と。
“ただ、不正解だ”とも。
“こう言う時はお前、迷わずに刃を突き立てるもんだろう”と。
……………。
彼は、団長の言う通りだったよ。
でも、そんな彼に教えられてしまったからね。
小生の行動は…いや、あの時の『俺の行動』は確かに不正解だった。
……。
彼の死は敵の大将との相打ちとしたよ。彼が諜報員だとは小生と団長、それにお偉い方々しか知らぬ事として片付けられてしまってね。
……何だかそれが妙に虚しくて小生はその少しあとに騎士団を辞めてしまってね。
(悲しい顔をする客に笑みを向けて)
……、こうして今、ここに居る訳だ。
そんな顔をしないでおくれ。彼の死は無駄じゃあ無かった。こうして語りのネタになってくれた。不謹慎やもしれないけどそう思う事にするからね。
それじゃあそろそろ小生は上がろうか。
聞いてくれてどうもありがとう。どこかでまた、聞いてくれると嬉しく思うよ。
STORY END.




