男性用【語り部鹿華〜猫万以々々編〜】
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鹿華
[あらすじ]《3分半程度》
語り部鹿華は全語り部の憧れだ。語り部と言えばと聞いて返ってくるのは彼の名ばかり。『生きる伝説』とまで呼ばれたあの語り部は今、どこで何をしているのだろう―――。
【鹿華】
…(息継ぎ)
っうし、そんじゃあ始めるか。
語り部鹿華。聞いた事ねぇって奴はさすがに居ねぇだろ。ま、顔を知らねぇってんなら分かるけどな。
あ? …今日はどうっすかなぁ。
(小声で呟いて)
あ。
そういや、五番弟子の枢馗が話に聞いただけの薬を飲んだ女の過去を魅たっつってたなぁ…。
(呟きを聞いていた客に秘密事を話すように)
今日はその薬について語ろうかね。
ご老体にゃあ通じるんだが、今日はお若いのが多い。自分が老体だなんだと言い張るつもりは無いが…。
まあいい。
その薬は猫万以々々なんていう大層な名前を我が物にしてる傍迷惑なやつでなぁ。
ひと噛みすりゃ、頭のてっぺんへ獣の耳が鎮座して。
ふた噛みすりゃ、一里先、男女の諍いにまで鼻が利いて。
み噛みすりゃ、自慢の爪は悪戯猿の大岩までも掻き砕かん。
とまぁ、こういう楽しげな詩まで作られちまって…おぉっ、聞いたことあっかい。そりゃあ何より。何の詩か分かって良かったじゃねぇの。
猫万以々々は詩の通り、噛めば噛むほど猫に似た、猫よりもはるかに獣くさい何かに成り代わっちまう、まぁ忌ま忌ましい薬でなぁ。
だが出来た経緯はこれと言って不思議じゃなくってなぁ、何というか微笑ましいもんなのよ。
とある貴族の子供が。飼っていた血統書付きの黒猫と共に遊びたくて学者だった父親に頼み込んだらしい。
『猫になれる薬を作って』ってな?
親バカだったらしい父親は無理だとはとても言えず、権力を行使してまでその薬を作っちまった。
これが地獄の始まりとは知らずにな。
猫万以々々を飲んだ子供は濁った悲鳴を上げながら見る見るうちに雪男のような大きなケダモノに変わっていった。
何とかして止めようとした父親を掻き殺し、黒猫を踏み潰し、逃げようとした母親を抱き殺した。
ケダモノになっちまった子供は訳も分からず痛み続ける身体を家の壁にぶつけて、落ちてきた天井に押し潰されて死んじまった。
(苦虫を噛み潰したような顔をする客を笑い)
嘘は言ってねえよ。出来た経緯は微笑ましい、ってな?
まぁ、そんな惨劇から数百年だが、未だに猫万以々々なんつー名前で呼ばれるその薬はどこかの闇市で出回ってるらしい。
……さぁな。その家から持ち出されたものなのかは知らねぇが話に聞くより効能は易しくなってるみてぇだぜ。
まあ、信じるも信じねぇも客次第。
飲む飲まねえも興味次第。
今日はここまで。俺の名を広めるも広めねぇも好き勝手に。また知らぬ地で会おうか、次はもっと面白ぇ話を用意しておくからよ。
STORY END.




