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一人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
73/197

男女兼用【語り部枢馗〜義弟編〜】

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 枢馗

[あらすじ]《4分半程度》

 (かた)()枢馗(すうき)は人の過去を(のぞ)き込む事が趣味である。勝手に(のぞ)き込んだそれを勝手に語っていく。これがこの語り部のやり方なのだ―――。







【枢馗】

 よっこらせ。

 んじゃあまあ、簡単にやっていきましょう。手前(てまえ)枢馗(すうき)。語り部です。

 遠い祖先(そせん)天逆毎(あまのざこ)と呼ばれる神をも凌駕(りょうが)する妖怪でございまして、ですが手前は天狗(てんぐ)でも天邪鬼(あまのじゃく)でもありません。


 一つの不思議な力を悪戯(いたずら)(もてあそ)ぶ、ただの人間でございます。


 では今回もその不思議な力に()せられた過去を覗いて参りましょう。


咳払(せきばら)いをして)


 その男は(すた)れた田舎道を歩くにはあまりに豪勢(ごうせい)でした。服が、ではなく雰囲気が、です。

 手前は非常に興味を持って男に話し掛けました。……見えた過去には辛辣(しんらつ)に自分を()める男の姿が映っておりました。


 男には義弟(ぎてい)が居りました。

 可愛らしく聡明(そうめい)で、……生傷(なまきず)の絶えない彼は男の両親が引き取った遠縁(とおえん)親戚(しんせき)でございました。


 元々居た家で暴力を受けていたのでしょう。当時子供だった男は直接は見せてもらえなかったものの、包帯(ほうたい)(つつ)まれる義弟(ぎてい)に心を痛めておりました。


 良家(りょうけ)嫡男(ちゃくなん)であった男は(せわ)しい稽古(けいこ)や勉強に追われる中でも義弟(ぎてい)を構いました。

 表情の薄い彼は自分を構う義兄(ぎけい)に迷惑そうにしていましたが、その執拗(しつこ)さに(なか)ば諦めているようでございました。


 ある日の事。

 傷の()えてきたはずの義弟(ぎてい)の身体に(あざ)や切り傷が増えていました。義弟(ぎてい)に何事かと聞いても転んだ、ぶつけたと(なん)なく(かわ)されるばかり。

 …それと同時期に時折(ときおり)家に遊びに来る母親の姉とその夫がやけに目立つようになりました。


 男はその頃になると(あと)()ぐための仕事に追われるようになり、義弟(ぎてい)と会う時間も必然(ひつぜん)的に少なくなったのでございます。


 それでも男は何とか時間を作り、義弟(ぎてい)へ甘い菓子でも持って行ってやろうと彼の部屋を覗きました。


 男はそれが、その光景が、

 脳裏(のうり)の奥に焼き付きました。


 義弟(ぎてい)が母親の姉――伯母(おば)とその夫の心労(しんろう)()(ぐち)になっていたのでございます。

 すぐさま飛び出そうとした男は()(とど)まります。嫡男(ちゃくなん)と言えど正式に業務を引き継いでいない今は伯母とその夫より弱い立場に居るのだと。


 男は(そば)に居た使用人を両親の元へ走らせました。


 ………伯母とその夫は勘当(かんどう)され、義弟(ぎてい)は助け出されました。

 男は心底安心しました。

 これからは苦しくないのだと抱き締めてやりました。


 しかし、義弟(ぎてい)は男が次期当主として僻地(へきち)へ仕事をしに向かったその翌日(よくじつ)に家を出たというのです。


 男は自分を責めました。

 もっと早く、見つけてやれば。

 男は今でもその義弟(ぎてい)を探すのです。当主として忙しいながらも暇を見つけ、その度に色んな街へ出向いて……。

 あの時の事を、たった一言()びたくて。


 ……………………………。

 これが田舎道を()豪奢(ごうしゃ)な男の過去でございまして。

 はて、その義弟(ぎてい)の居場所ですか? さあ? 手前にはなんの事やら。


 さて、そろそろ(こし)を上げましょう。

 皆々様、手前はこちらにて失礼致します。またお会い出来る日を楽しみにしております。











STORY END.

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