男性用【語り部麒麟〜呪い酒編〜】
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麒麟
[あらすじ]《3分半程度》
語り部麒麟は元傭兵。ガラの悪い喋りと腕っ節の強さが人気の語り部だ。彼は今日も傭兵時代に聞いた話を豪快に語り継ぐのであった――。
【麒麟】
よォ、皆の衆。オレは麒麟。語り部だ。…あー…、まあ。元傭兵ではあるな、何だ。当時のオレを知ってっか。偶然だなァ。
ンで、語り部に? ハッ、押しの強ぇ世話好きに捕まっただけだよ。
まァ、ンな事ァどうだっていい。今日も道を急いてる奴以外、自由に聞いてきな。
今日、オレが話すのは呪い酒と呼ばれる曰くつきについて。
呪い酒、そんな曰くつきが囁かれ始めたのは今から数百も昔の事だ。
北の僻地になァ、杜氏―――ああ、酒蔵を治めてた伊戸っつー家があってな。
そこの次期当主には好いてる女が居たんだ。片想いって訳じゃあ無くてな。女の方も男を好いてた。
だが、女には許嫁が居たのさ。親同士が決めた胸糞悪ィ奴がなァ。
女はどうしてもその許嫁が嫌で嫌で仕方なかったらしくてなァ、次期当主の男に「駆け落ちしよう」と持ち掛けたんだ。
しかし男はそれを断っちまった。
男は女の事も好いていたが、それ以上に酒を造る事も好きだったらしい。
その返答に女は怒り狂った。
次期当主の男はそれでも女の持ち掛けに首を縦には振らなかった。
…その翌日だ。
伊戸の酒蔵で出来た酒を飲んだ客の一人がもがき苦しんで死んじまったんだ。毒だ何だと騒いでたんだが、伝手を頼って調べても毒らしいものは出てこなかったんだと。
伊戸の当主もその分家の者達も首を傾げていたんだが、次期当主だけは顔を真っ青にさせてこう言ったんだ、「呪いだ」ってなァ。
……その死んだ客はつい最近、女と駆け落ちして僻地へやって来たんだと。
(怯える客に少し笑って)
それからその酒は「呪い酒」と呼ばれて世に売り出されてはいるんだが…もう伊戸の酒蔵は無ェし、この逸話を知ってる奴すら少ねェからなァ。
出回ってる「呪い酒」は聞き覚えのある名に肖りたいっつー、何の変哲もねェ酒だと思うぜ。
まっ、色恋沙汰に巻き込まれた哀れな旨酒ってところだなァ。
ああ、「知り合い」の伝手があってなァ。飲んだ事があンだ。……くくっ、旨ェぞ?
まァ、飲む機会がもしあるンなら、駆け落ち予定の女や男が居ねェか確かめとくンだな。
うしッ、オレはそろそろ行くかァ。
そんじゃあ、皆の行く道が幸運に満ちますように…ッてなァっ!
STORY END.




