女性用【いきたかった】
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幸せそうな女性
[あらすじ]《7分半程度》
卒業から10年以上経った高校の同窓会。周りには少し面影を残したクラスメイト達。何となく話へ交ざりに行けなかった私はとある人物を見つけて近寄った―――。
【幸せそうな女性】
あの・・・、真住先生、ですか?
はい、そうです。今は違いますけど、藤堂です。
いえ、同窓会なんて初めてで…ちょっと居場所無いなぁなんて思っていたところでして。
(少し周りを窺うように)
・・・あの、先生。
少し、お話よろしいでしょうか。
まだお開きの時間でもないでしょうし、ロビーで・・・。
*
先生、あの頃と全然変わってなくて。驚きました。昔からちょっと幼い顔してるなぁとは思ってましたけどっ
ふふ、そうそう。彩織がよく言ってましたね。「先生は男の子みたい!」って。ふふ。
・・・あ、いえ。話というのは彩織の事じゃなくて! いや、彩織の事でもあるのかな・・・。
ただ、私はこの話で先生を責めたい訳でも誰かへ思い知らせてやりたいとかでもないんです。
ただ、話したいんです。当時の私を知っていた人とか、当時同じ場所に居た人に。
だから先生が居てくれて良かったです。
(一呼吸置いて)
私、虐められてたんです。
あ、いえ。先生が担任してくれた三年の頃じゃなくて! 一年の中間から二年の終わりくらいまで。
虐められると言っても、よく聞く画鋲とかカッターの刃とかそんなのじゃなくて。
無視されたり、こちらを見てクスクス笑われたり、私と一緒に居る誰かが陰口の的になったり。そんな、地味で陰湿なやり方でした。
私を虐めていた人達は優秀で元気で。所謂陽キャ・・・って今は言うんですっけ? あははっ、よく分かんないですけど。
そんな人柄だったからか先生に相談してもあんまり変わらなくて。
「お前の勘違いなんじゃないか」とか「気の持ちようだよ」とか。そんなのばっかり。
よく言うじゃないですか。
『先生は何もしてくれない』って。
都市伝説とか僻みだと思ってたのに、当事者に立たされた途端、思い知ったんです。・・・本当だったんだって。
私それから学校にあんまり行けなくなって。本当は行きたかったんですよ。でも、学校へ行けば笑われるんじゃないかって。ただ、生きてるだけで。笑われて馬鹿にされて。何もかも否定されるんじゃないかって。
そんな時、私を慰めてくれたのが彩織でした。「アタシが居るから大丈夫だよ」って。・・・その、たった一言だけだったのに。私の心が私でも驚くぐらい軽くなったんです。
私一人じゃないんだって。私、生きてていいんだって。
それから少しずつ学校に行けるようになって。二年になった時、先生が副担任になって。えぇ、担任の細川先生によく怒られてましたね。あははっ、彩織が数を数えてましたよ。確か、前期だけでも65回? あははっ、彩織が言ってただけで本当かどうかは知りませんけどね。
・・・彩織は私の親友です。私、誰にも言わなかったけど心に決めていた事があって。彩織が何か困っていたら今度は私が助けようって。
ふふ、多分ですけど彩織は「そんな事考えてるヒマあるならもっとアタシと遊べー!」とか言いそうですけどね。
・・・ちょうど、後期のテストが終わって、三年の先輩達が部活を引退したあの時期・・・。
彩織が事故に遭って意識不明の重体。夢かと思って。朝起きて学校に行ったら明るい笑顔でそこにいるんじゃないかって。
・・・。
人って案外現実に慣れるのって早くて。三年になった時には普通にお見舞いも行っていたし、特に泣いたりとか悲しんだりとかそういうのも無くて。
ただ、彩織が目覚めない事が悔しかった。
そんな頃でした。
彩織のお母さんもやっと時々笑ってくれるようになった頃。
私を虐めていた主犯格の生徒達が私に謝ってきたんです。
・・・なんて、言ってきたと思います?
「彩織に命令されて仕方なく虐めてたの。ごめんなさい」
馬鹿かと思いました。
本当に、悪魔かとも思いました。
それからは先生の知っている通り。
・・・許せない、そう思って。彼らを殴っていました。初めて人を殴った拳は痛くて堪らなかった。
どうしてこんな事したんだって。
教師や親に聞かれたって。私が虐められていた事を知らなかった生徒に聞かれても私は何も答えませんでした。
私を虐めていた人達にそう言われて私、ほんの少しでも彩織を疑ってしまったんです。そんな、自分にも腹が立って。
それから彩織のお見舞いにも行けなくなりました。本当は行きたかったんです。だけれど、私を助けてくれた彩織をほんの一瞬でも疑った事、後ろめたくて。
・・・今でも行けてないんです。
今日こそは、今日こそは。って。
弱い私は、自分で決めた事も守れずに今ここに居て、先生にこんな話をして・・・。
結局私は・・・・・・あら、電話。おかしいな、ちゃんとマナーモードに・・・先生、すいません。ちょっと失礼します。
はい、もしもし。
あ、眞弥さん? お久しぶりです、どうしたんですか? え、今? 今は高校の同窓会に出てますけど・・・え?
・・・え、ちょっと、待ってください。嘘じゃ、ないですよね? 本当に、本当に・・・
彩織が目を覚ました・・・?
あ、いえ! すぐに、すぐに行きます・・・! あの、15分・・・いえ、10分で! それで、彩織は!? ・・・そう、ですか・・・っ、ああ、良かった・・・!
はいっ、はい・・・っ、分かりました。206号室ですね・・・! はい、・・・はい!
・・・真住、先生・・・私・・・。
・・・。
これだけは先生に言っておきたくて。
暴力沙汰を起こした私に先生だけは何も聞かないでくれた。・・・それだけがとても嬉しくて。
ありがとうございます。
その時のお礼が言いたかったんです。
・・・私、行ってきます。
彩織にこの10年の事、ちゃんと話さなきゃ。・・・お腹の子の事も。
先生。
話、聞いてくれてありがとうございます。やっと、彩織に顔向け出来ます。
本当にありがとうございました!
STORY END.




