表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
64/197

女性用【いきたかった】

台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。

『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。


※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。

 ♂0:♀1:不問0

 幸せそうな女性

[あらすじ]《7分半程度》

 卒業から10年以上経った高校の同窓会。周りには少し面影(おもかげ)を残したクラスメイト達。何となく話へ交ざりに行けなかった私はとある人物を見つけて近寄った―――。











【幸せそうな女性】

 あの・・・、真住(ますみ)先生、ですか?


 はい、そうです。今は違いますけど、藤堂(とうどう)です。

 いえ、同窓会なんて初めてで…ちょっと居場所無いなぁなんて思っていたところでして。


(少し周りを(うかが)うように)

 ・・・あの、先生。

 少し、お話よろしいでしょうか。

 まだお(ひら)きの時間でもないでしょうし、ロビーで・・・。





 先生、あの(ころ)と全然変わってなくて。驚きました。昔からちょっと幼い顔してるなぁとは思ってましたけどっ

 ふふ、そうそう。彩織(いおり)がよく言ってましたね。「先生は男の子みたい!」って。ふふ。


 ・・・あ、いえ。話というのは彩織(いおり)の事じゃなくて! いや、彩織(いおり)の事でもあるのかな・・・。


 ただ、私はこの話で先生を()めたい訳でも誰かへ思い知らせてやりたいとかでもないんです。


 ただ、話したいんです。当時の私を知っていた人とか、当時同じ場所に居た人に。

 だから先生が居てくれて良かったです。


(一呼吸置いて)


 私、(いじ)められてたんです。


 あ、いえ。先生が担任してくれた三年の頃じゃなくて! 一年の中間から二年の終わりくらいまで。

 (いじ)められると言っても、よく聞く画鋲(がびょう)とかカッターの()とかそんなのじゃなくて。

 無視されたり、こちらを見てクスクス笑われたり、私と一緒に居る誰かが陰口の(まと)になったり。そんな、地味で陰湿(いんしつ)なやり方でした。


 私を(いじ)めていた人達は優秀で元気で。所謂(いわゆる)陽キャ・・・って今は言うんですっけ? あははっ、よく分かんないですけど。


 そんな人柄(ひとがら)だったからか先生に相談してもあんまり変わらなくて。

「お前の勘違いなんじゃないか」とか「気の持ちようだよ」とか。そんなのばっかり。


 よく言うじゃないですか。

『先生は何もしてくれない』って。


 都市伝説とか(ひが)みだと思ってたのに、当事(とうじ)(しゃ)に立たされた途端(とたん)、思い知ったんです。・・・本当だったんだって。


 私それから学校にあんまり行けなくなって。本当は行きたかったんですよ。でも、学校へ行けば笑われるんじゃないかって。ただ、生きてるだけで。笑われて馬鹿にされて。何もかも否定されるんじゃないかって。


 そんな時、私を(なぐさ)めてくれたのが彩織(いおり)でした。「アタシが居るから大丈夫だよ」って。・・・その、たった一言だけだったのに。私の心が私でも驚くぐらい軽くなったんです。

 私一人じゃないんだって。私、生きてていいんだって。


 それから少しずつ学校に行けるようになって。二年になった時、先生が副担任になって。えぇ、担任の細川(ほそかわ)先生によく怒られてましたね。あははっ、彩織(いおり)が数を数えてましたよ。確か、前期(ぜんき)だけでも65回? あははっ、彩織(いおり)が言ってただけで本当かどうかは知りませんけどね。


 ・・・彩織(いおり)は私の親友です。私、誰にも言わなかったけど心に決めていた事があって。彩織(いおり)が何か困っていたら今度は私が助けようって。

 ふふ、多分ですけど彩織(いおり)は「そんな事考えてるヒマあるならもっとアタシと遊べー!」とか言いそうですけどね。


 ・・・ちょうど、後期のテストが終わって、三年の先輩達が部活を引退したあの時期・・・。


 彩織(いおり)が事故に()って意識不明の重体。夢かと思って。朝起きて学校に行ったら明るい笑顔でそこにいるんじゃないかって。


 ・・・。

 人って案外(あんがい)現実に()れるのって早くて。三年になった時には普通にお見舞(みま)いも行っていたし、特に泣いたりとか悲しんだりとかそういうのも無くて。

 ただ、彩織(いおり)が目覚めない事が悔しかった。


 そんな頃でした。

 彩織(いおり)のお母さんもやっと時々笑ってくれるようになった頃。


 私を(いじ)めていた主犯(しゅはん)(かく)の生徒達が私に謝ってきたんです。

 ・・・なんて、言ってきたと思います?



彩織(いおり)に命令されて仕方なく(いじ)めてたの。ごめんなさい」



 馬鹿かと思いました。

 本当に、悪魔かとも思いました。


 それからは先生の知っている通り。

 ・・・許せない、そう思って。彼らを(なぐ)っていました。初めて人を殴った拳は痛くて(たま)らなかった。


 どうしてこんな事したんだって。

 教師や親に聞かれたって。私が(いじ)められていた事を知らなかった生徒に聞かれても私は何も答えませんでした。


 私を(いじ)めていた人達にそう言われて私、ほんの少しでも彩織(いおり)を疑ってしまったんです。そんな、自分にも腹が立って。


 それから彩織(いおり)のお見舞いにも行けなくなりました。本当は行きたかったんです。だけれど、私を助けてくれた彩織(いおり)をほんの一瞬でも疑った事、後ろめたくて。

 ・・・今でも行けてないんです。


 今日こそは、今日こそは。って。

 弱い私は、自分で決めた事も守れずに今ここに居て、先生にこんな話をして・・・。


 結局私は・・・・・・あら、電話。おかしいな、ちゃんとマナーモードに・・・先生、すいません。ちょっと失礼します。



 はい、もしもし。

 あ、眞弥(まや)さん? お久しぶりです、どうしたんですか? え、今? 今は高校の同窓会に出てますけど・・・え?


 ・・・え、ちょっと、待ってください。嘘じゃ、ないですよね? 本当に、本当に・・・




 彩織(いおり)が目を覚ました・・・?





 あ、いえ! すぐに、すぐに行きます・・・! あの、15分・・・いえ、10分で! それで、彩織(いおり)は!? ・・・そう、ですか・・・っ、ああ、良かった・・・!


 はいっ、はい・・・っ、分かりました。206号室ですね・・・! はい、・・・はい!






 ・・・真住(ますみ)、先生・・・私・・・。


 ・・・。

 これだけは先生に言っておきたくて。

 暴力沙汰(ざた)を起こした私に先生だけは何も聞かないでくれた。・・・それだけがとても嬉しくて。


 ありがとうございます。

 その時のお礼が言いたかったんです。


 ・・・私、行ってきます。

 彩織(いおり)にこの10年の事、ちゃんと話さなきゃ。・・・お腹の子の事も。


 先生。

 話、聞いてくれてありがとうございます。やっと、彩織(いおり)に顔向け出来ます。


 本当にありがとうございました!










STORY END.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ