男性用【語り部将戡〜花屋編〜】
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将戡
[あらすじ]《4分程度》
語り部将戡はもう随分と老耄だ。なぜか他の語り部に「先輩」と呼ばれる彼は今日も穏やかな顔をしてゆったりと語り始めた―――。
【将戡】
……ふむ、人が集まる頃合かね。小生は将戡。語り部だ。
ショウは大将の将に、チンは……ああ、こりゃあ。あんまり良い意味じゃあ無いから、また個個で調べて知っておいてくれんかね。……名は人を表す。きっと、そのままの意味だからね。
今日はどうしようか。
ここらは花の良い香りがするからそんな感じの話をしようかね。小生の話なんぞ聞いたって面白いとは思わないけれど退屈はさせないからね。
アレは小生がまだ、語り部としてほんの少し名前の売れだした頃の話だね。
通り過ぎるだけの予定だった街で不図、足を止めてしまった。
花屋だった。
小奇麗に店先が整えられた、良い香りのする花屋でね。足を止めた小生に気付いた店員が怪訝な顔もせずにコチラを見てにっこりと、まるで。そうだねえ。
まるで、絵にして飾りたいと思う程に綺麗な笑みを浮かべたんだ。
それを目の当たりにした小生は会釈して通り過ぎるのも勿体ないとその花屋に足を踏み出して、店を覗き込んだんだね。
そうしたらその店員が、旅の方かと問うものだから小生は少々胸を張って語り部だと答えれば自分の弟も語り部なのだと教えてくれてね。
名を聞けば鹿華だと言うじゃあないか。世間は狭いのだと恐れ入ったね。
その頃は小生も鹿華も同じ名の売れ出した新人でしか無かったけれど時が経つのは早い。もう、鹿華も咲鳥も、羽弥芝も往ないなんてね。
……おや、辛気臭い話をしてしまったね。こう老耄てくると繋がりが消えてしまう瞬間がひどく恐ろしくてね。
そうしてその店員は一頻り小生と鹿華の話をしてから一輪の花を差し出してくれてね。……生憎花の名前は忘れてしまったけれど、良い香りの花でね。
まるで、麻薬のように心地好いものだった。……ああ、勘違いしたか。小生は生まれてこの方麻薬なんぞに頼って現実から逃げるようなマネをした事は一度も無いんだねえ。ただ、表現として使わせてもらっただけだから安心してね。
その花はそれから二日ほどで見る影もなく枯れてしまってね。とても残念だったよ。せめて千輪殿に会えれば良かったんだけど。あの気まぐれ狐様が小生に何かしてくれるとも思わないけれどね。
さて。
そろそろ小生は上がろうか。
聞いてくれてどうもありがとう。どこかでまた、聞いてくれると嬉しく思うよ。
STORY END.




