男性用【語り部梨網〜女装編〜】
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梨網
[あらすじ]《4分程度》
語り部梨網は西の辺境で生まれ育ち、僅か九つで語り部として世に旅立った。温和な語りで女性客を魅了する彼は今日も正座をして語り始めるのだった―――。
【梨網】
ほんなら今日も始まひょか。
ボクは梨網。語り部は十の一つ前からやっとるから安心して聞いてってな。
今日は何を話そかなあ。
話のネタが無い言うてる訳やないんよ? ただ、ほら。語り部なんていちいち台本用意して喋っとる訳やないし、その日のお客さんの層を見て何話すかその場で決めとるから、ほんちょっと困るんよね…。やってその子ぉはこの前見た子やし、アンタは先日も居ったやろ? ボクの語りは女の子にはつまらんと思うんに、なしてこんなに聞きに来てくれるんやろかあ?
不思議やわあ。
ふふ、まあ何にしてもお客さんが増えてくれるんやったら嬉しいわなぁ。
ほんなら今日はボクが花街で女装した話でもしよかな。
ゆっくり話すから何も慌てんでええんよ?
ボクが花街で語り部しながら路銀稼ぎしとったんは、まぁ他の語り部達にも有名な話やねえ。
あの花街は遊郭としては大きいとこやったし、薄暗い雰囲気やなんて一つもない、明るいとこやったわあ。
遊女さんも娼婦さんも綺麗な人ばっかでなあ。ボクは語りしとる時、いつも目の保養で贅沢しとったわ。
確か……あの花街の時が、13ぐらいやったかなあ。今やったら花街で語りやなんて考えられへんけど当時は良い路銀稼ぎやったんよ。
ボク以外にも弟子を連れた鹿華やとか来とったし、ふふ。これ言ったらあかんだかな? …まぁええか。
話戻そな。
その花街で禿が何人も殺される事件があってな。ああ、禿いうんは花街に住む童女の事で、大きなったら遊女になるんよ。
そんな事件が起きてる最中でもボクは特別何も警戒せんと語りをしとったんよねえ。
そうしたらその花街でもよう繁盛しとる遊郭の親父様がボクの元に来てな。こう言うたん。
『お前、女装してみんか?』て。
何言うとるんやろ、この親父様は。
とは思うたんやけどよくよく聞いてみたら囮になってくれ言うんよ。まぁ、幼い頃から語りやる為に旅しとったからそれなりに戦えはするんやけどなあ。
それでも護身ぐらいしか出来んよ言うたらそれでええて言うたんよ。せやからボク、ちょっと気合い入れよ思うて。
いつも語りを聞きに来てくれる遊女さんらに化粧をお願いしたんよ。
……まぁ、ボク。顔はそない悪くないしその時は背も低いんもあって可愛らしい禿が出来上がったんやわ。……。いやいや、見たいて…。見てもええ事無いえ?
ふふ、そんでな?
その花街で殺しの被害が多かった遊郭で客引きしとったら、客足も落ち着いてきた時やったわ。不意に背後に気配を感じてな。
ボクは咄嗟にしゃがみこんでから足払いしてやったんよ。相手は油断しとったみたいでギャアとかグオッとか悲鳴をあげて倒れ込んでな。
物音を聞いて駆けつけてくれた親父様達に得意げに笑ってやったんよねえ。
そん後で話聞いたら昔その花街に妹さんが禿として居ったんやって。でもすぐに流行病で亡くなってしもて…それから花街で働いてる禿を見ると妹さんを思い出してな…辛なって殺して回ってた……って。
・・・・・・・・・。
勝手で傲慢で独善的な行為のせいで殺された禿達をボクは決して忘れはせえへん…。
・・・ほんなら今日はこの辺にしとこかな。ボク、そろそろお腹空いたもんでなあ。……え、奢ってくれるん? 何やお客さんに悪い気ィもするけど嬉しいわあ。
ほんなら、今日はここまで。
聞いてくれてありがとうなあ。
またゆっくり、どっかで会おうなあ。
STORY END.




