男性用【語り部亀八郎〜影苺編〜】
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亀八郎
[あらすじ]《5分程度》
語り部の亀八郎は親も兄弟も居ない。毎日食っていく為に預けられた親類の家を飛び出し、自身の経験や又聞きした御伽噺を語りながら生を繋いでいた―――。
【亀八郎】
やあやあ、皆さん。あっしは語り部亀八郎と申しやす。やいのやいのと語りをして早数十年…この地に足を運ぶのは二度目でやすが、流石港町! 初めて見るお客さんが多いですね!
はてさて、以前来た時は生憎の雨でやしたから手短に話して終わったんですよね。いやぁ、惜しい事をしやした。
おや! お客さん、一度目の語りの時も居ましたか! 奇跡の巡り合わせでやすね! ……ふむ、こうして二度目、三度目と亀八郎を知るお客さんが増えてきたのも有難い事ですね〜。
今回あっしを初めて見るというお客さんにも是非またお会いしたいものでやすが、それこそ奇跡でも起きないと難しいですかね。
長々と前置きしていてもつまらないと離れるお客さんも最近少なくありやせん。早速語って参りやしょう。今日はこの港町で歌い継がれる子守唄について。
影苺。そう呼ばれる義賊が居りやした。その義賊は金遣いの汚い貴族から宝石、装飾品を盗み取り貧民街にバラ撒く事で有名でした。
そんな影苺は元々貴族階級の人間でやした。何故影苺はそんな不埒な職についてしまったのか。
今回はこの辺を掘り下げていきやしょう。
彼は呂久という名のある家柄の三男坊でやした。
呂久の家は港より少し離れた場所で温泉宿を営んでおりやした。
あまり、そうですね。
良い家庭であるとは言い切れなかったようで、彼の身体には無数の痣がありました。全ては父親の気まぐれで行われる最低な行為でやした。
しかし、彼には長男と次男、同じ被害者という名の仲間が居やした。彼にとって兄弟との時間が宝物でした。
そんな日々が続いたある時の事です。
彼の祖父、母方の父親が病に倒れ亡くなりました。
彼の祖父は厳格で寡黙でしたが、彼ら兄弟に暴力を振るうことはせず怪我をして泣きそうにしている孫の頭をそっと撫でる、良い祖父でやした。
彼の祖父が亡くなった時、彼は12歳でした。次男は14、長男は17。長男は既に嫁をもらい、国を出てやしたから葬式には次男と三男が出ました。
そこで彼は良からぬ与太話を耳にしやす。祖父は、病などではなく誰かに殺されたのではないかと。
そうしてそれは、彼ら兄弟の父親の仕業ではないのか、と・・・。
遺産目当ての犯行では、という大人達の噂話に彼は耳を塞ぎたくなると同時に思いやした。
金が、金になるものが、
遺産があるからいけないのだと。
祖父の葬式が終わった次の日から、呂久の三男坊の姿が消えやした。次男に聞いても国を出た長男に聞いても、遠縁の親類に聞いても三男坊は見る影もなく消えたんです。
それと同時期に囁かれるようになったのが影苺と呼ばれる義賊でやした。
遺産相続で揉め事の起こる貴族の家へ忍び込んでは金目のもの、遺産そのものを盗んで、貧民街へばら撒く。
貴族にとっては害悪で、貧民にとっては神様のような存在となった影苺は密かに思いやす。
悲しきかな。
どれだけ盗もうと、ばら撒こうと。
あの葬式で聞いた大人達の卑劣な噂声が耳に染み付いて離れない、と。
・・・。
と、まぁ。これが子守唄に出てくる義賊の謎、といった所でやしょうか。
さて、そろそろお昼の時間でやすから、あっしもどこかでメシでも食べやしょうかね!
暫くこの港町で語りをしていきますからよろしくお願いしやす。では、またこちらで!
STORY END.




