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一人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
29/197

女性用【語り部千輪〜惚れ薬編〜】

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 ♂0:♀1:不問0

 千輪

[あらすじ]《4分程度》

 (かた)()千輪(せんりん)長寿(ちょうじゅ)と言われる九尾と人間のハーフである。遥か昔の世代から語り部をしていた彼女は、今日も世界のどこかで聞きかじった話を聞かせ渡るのだった―――。








【千輪】

 ()の語りは長く億劫(おっくう)なり。

 それでも良いと(さえず)る小鳥達はどうぞ余の腕に止まり、羽を休ませよう――。


 ・・・とまぁ、前戯(ぜんぎ)は短くと随分(ずいぶん)昔に・・・いや、最近かな。まぁ決めたんで。今日(こんにち)も簡単に語りましょう。


 (みな)は『惚れ薬』と呼ばれる代物(しろもの)をご存知だろうか。

 余は昔からそういうモノに何故(なにゆえ)か縁があってな。あらゆるモノを(ふく)んだ事があるのだ。いやまぁ、今こうして語りのネタに出来ているのだから何事も経験だと思うけどね。


 まぁだけれど、ああいうのは含むのも触るのも()した方が良い。何故(なにゆえ)か? それはもう、面倒事しか起こらないからだ。


 あれは確か余が三百かそこらの若輩(じゃくはい)(もの)だった頃の話だな。

 余にはたくさんの知り合いが居て、そりゃあもう、怪しい奴らも居るには居るんだが。

 その中の一人に陰陽師(おんみょうじ)である古い習わしを好む酒臭いジジイが居たのさ。そのジジイには何やら金遣(かねづか)いの汚そうな醜女(ブス)な孫娘が居てな。


 一度何かの集まりの時にそのジジイが孫娘を連れてきて周りに自慢しててね。

 余は面倒な繋がりを(ひろ)げたくなくて(はし)の方で酒を飲んでたさ。


 そうしたら紹介の嵐から逃げ出した醜女(ブス)がこちらへやって来て勘違いも(はなは)だしく余の酒を()ぎだしたのだ。

 余はそれが嫌で嫌で仕方なくてね。

 醜女(ブス)から目をそらし、別の酒を(あお)ってた。そうしたら醜女(ブス)がやたらと酒を勧めてきてね。飲まなけりゃ(うるさ)いと酒を含んだ途端さ。


 余の、この美しき尾がビクリと跳ねて(のど)の奥で美味(うま)いはずの酒がぐるぐるっと踊り出すのを感じたね。

 これは何かおかしいぞ、とその醜女(ブス)を見やって思わず心の奥底で笑っちまったさ。


 (ほほ)を赤らめて小水(しょうすい)前のようにモジモジと気持ち悪く動いてた。何だこの醜女(ブス)、と思わず呟いちまったね。

 たぶんだが、余をオスだと勘違いしちまったんだろうさ。

 そうしたら鼻の効く猫のアヤカシがクスリを盛られたのだと小声で教えてくれて、余は迷わずジジイの元へ走って行ったね。


 ジジイはそらもう、驚いたみたいで()醜女(ブス)を見てそれから目を彷徨(さまよ)わせ、そうしてやっとこさ謝ったのさ。いやまぁ、滑稽(こっけい)だったな! あははははっ! ちくっと思い出しただけで笑いが止まらないさ! ひひっ、ちょ、っと・・・待ってく・・・ひひっひひぃっ




 ・・・ああ〜・・・、すまないね。

 こう、長く生きてると楽しい事の方が多いもんでなぁ。あ、そうそう。そんでそのクスリだがな。どうやら人間の男には随分(ずいぶん)とよく効く代物(しろもの)だったみたいで、アヤカシとヒトの(あい)の子である余には少しだけ変に効いちまったみたいなのさ。


 それからジジイは(しばら)くコチラ側には来れなくなっちまって孫娘は勘当(かんどう)までされちまったらしい。ジジイを(うと)ってた連中は大喜びで余に感謝を()べたが、世の中には要らん感謝もあるんだと思い知ったね。


 とまぁ、それからも惚れ薬、なるもんに触れる事も多かったけど。どれも(ろく)なモンじゃねぇさ。時には引くのも大事だよ、皆の者。


 ・・・なんつって。

 さて、余はそろそろ街を離れよう。この大きく気高(けだか)い耳が若い語り部の声を拾った。古いモンは退散して、さっさと若いモンに道さ開けるよ。


 そいじゃあ、またどっかで。










STORY END.

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