女性用【語り部千輪〜惚れ薬編〜】
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千輪
[あらすじ]《4分程度》
語り部千輪は長寿と言われる九尾と人間のハーフである。遥か昔の世代から語り部をしていた彼女は、今日も世界のどこかで聞きかじった話を聞かせ渡るのだった―――。
【千輪】
余の語りは長く億劫なり。
それでも良いと囀る小鳥達はどうぞ余の腕に止まり、羽を休ませよう――。
・・・とまぁ、前戯は短くと随分昔に・・・いや、最近かな。まぁ決めたんで。今日も簡単に語りましょう。
皆は『惚れ薬』と呼ばれる代物をご存知だろうか。
余は昔からそういうモノに何故か縁があってな。あらゆるモノを含んだ事があるのだ。いやまぁ、今こうして語りのネタに出来ているのだから何事も経験だと思うけどね。
まぁだけれど、ああいうのは含むのも触るのも止した方が良い。何故か? それはもう、面倒事しか起こらないからだ。
あれは確か余が三百かそこらの若輩者だった頃の話だな。
余にはたくさんの知り合いが居て、そりゃあもう、怪しい奴らも居るには居るんだが。
その中の一人に陰陽師である古い習わしを好む酒臭いジジイが居たのさ。そのジジイには何やら金遣いの汚そうな醜女な孫娘が居てな。
一度何かの集まりの時にそのジジイが孫娘を連れてきて周りに自慢しててね。
余は面倒な繋がりを拡げたくなくて端の方で酒を飲んでたさ。
そうしたら紹介の嵐から逃げ出した醜女がこちらへやって来て勘違いも甚だしく余の酒を注ぎだしたのだ。
余はそれが嫌で嫌で仕方なくてね。
醜女から目をそらし、別の酒を呷ってた。そうしたら醜女がやたらと酒を勧めてきてね。飲まなけりゃ煩いと酒を含んだ途端さ。
余の、この美しき尾がビクリと跳ねて喉の奥で美味いはずの酒がぐるぐるっと踊り出すのを感じたね。
これは何かおかしいぞ、とその醜女を見やって思わず心の奥底で笑っちまったさ。
頬を赤らめて小水前のようにモジモジと気持ち悪く動いてた。何だこの醜女、と思わず呟いちまったね。
たぶんだが、余をオスだと勘違いしちまったんだろうさ。
そうしたら鼻の効く猫のアヤカシがクスリを盛られたのだと小声で教えてくれて、余は迷わずジジイの元へ走って行ったね。
ジジイはそらもう、驚いたみたいで先ず醜女を見てそれから目を彷徨わせ、そうしてやっとこさ謝ったのさ。いやまぁ、滑稽だったな! あははははっ! ちくっと思い出しただけで笑いが止まらないさ! ひひっ、ちょ、っと・・・待ってく・・・ひひっひひぃっ
・・・ああ〜・・・、すまないね。
こう、長く生きてると楽しい事の方が多いもんでなぁ。あ、そうそう。そんでそのクスリだがな。どうやら人間の男には随分とよく効く代物だったみたいで、アヤカシとヒトの間の子である余には少しだけ変に効いちまったみたいなのさ。
それからジジイは暫くコチラ側には来れなくなっちまって孫娘は勘当までされちまったらしい。ジジイを疎ってた連中は大喜びで余に感謝を述べたが、世の中には要らん感謝もあるんだと思い知ったね。
とまぁ、それからも惚れ薬、なるもんに触れる事も多かったけど。どれも碌なモンじゃねぇさ。時には引くのも大事だよ、皆の者。
・・・なんつって。
さて、余はそろそろ街を離れよう。この大きく気高い耳が若い語り部の声を拾った。古いモンは退散して、さっさと若いモンに道さ開けるよ。
そいじゃあ、またどっかで。
STORY END.




