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一人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
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男女兼用【魔法使いの手帳】

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 日記を読む声

[あらすじ]《5分半程度》

 魔法使いが死んだ。死ぬより一人になる方が怖いのだと笑っていたアイツは、業火の海に飛び込んで死んだ。遺体も何も出て来なかったけれど、アイツは確かに、死んだのだ―――。








【日記を読む声】

 “10月6日、今日から日記を書こうと思う。やっと自分の身の回りを見られるようになったからだ。


 私の名前はミュー・サーシャ。

 この国で魔法使いなんて呼ばれている。


 魔法使い、なんて。

 この国へ来る前の私が聞いたら腹を抱えて笑ったろうに。今の私にはその称号だけが生きている(あかし)だ。


 10月8日。さっそく一日サボってしまった。魔法の練習以外は本当にてんで駄目だと弟子に(あき)れられたのは懐かしい記憶だ。


 私が、自分の国へ帰れなくなったのだと気付いた時。絶望したし、悲しくなった。

 だけれど、私の手を(にぎ)って不安そうにする幼子(おさなご)を放って置けなかったのは最早、お人好しでも何でもなく運命だったのだろう。


 幼子は自分の国の事を忘れてしまっていた。まぁ、突然トロールなどという巨体に襲われては無理もないだろう。

 私は幼子を助け、自分と共に旅をさせることにした。それが今の弟子だ。


 時折(ときおり)私の事を『母さん』などと呼んだりするが私は意地悪にも返事はしてやらない。

 私なんぞを『母』と呼ぶのは本物に申し訳ないからな。


 10月24日。久々に(しる)す。

 三日坊主も驚きのサボり具合にこの手帳を見つけた時、思わず笑ってしまった。

 今更(いまさら)この日記に何か特別記す、となっても何も無いのだが。()えて言うのなら弟子に嫁が出来た。気立ての良い、可愛らしい娘さんだ。


 魔導師ギルドでの仕事の帰り、よく立ち寄った酒場の店主の一人娘なのだそうで。私の知らぬ所で弟子は娘さんに岡惚(おかぼ)れしてしまったそう。


 全く。魔法の腕は一向(いっこう)に上がらないくせしてこういう所はマセているのだから困ったものだ。


 11月17日。また日が空いてしまった。

 今日は弟子とそのお嫁さんの結婚式である。

 随分(ずいぶん)と時間が空いてしまったのは弟子の親が悲しきも私しか居なかったからだ。


 ―――異世界とは難しいものだ。







 12月4日、また久々に記す。

 この手帳に特別な魔結界を張ることにした。こうすれば弟子は見る事は出来ないだろう。何だって一度記したら消せない仕様(しよう)にしてしまったんだか・・・。


 これを読んでいるのは私がこの世界に来てから随分と世話になった親友だろう?

 分かる、分かるぞ。

 私が死んだとか消えたとかでこの家に来たんだろう。そしてこの手帳を見つけたんだろう。


 そうさ。私は異世界から来たさ。

 こっちの常識なんててんで無くて。小さなガキの手を引いた、すごく面倒なやつだったろうに。

 なのにお前はよく笑って私と弟子の世話をしてくれた。感謝してる。


 こっちに来た反動で私は魔法なんて御伽噺(おとぎばなし)でしか聞いたことないような力が使えるようになって。

 弟子も使えるものかと今の今まで思ってたが、どうやらアイツには魔法の才は無いらしいな!


 いや・・・、それが良いのかもしれないな。





 2月9日、明日は私がこの世界に来た日だ。もう何十年前になろうか。

 ほんの小さな子供だったアイツが、結婚できる歳になっているのだから・・・ああ、歳は取りたくないな。


 親友、まだ読んでるだろう?

 頼みがあるんだ。


 私が消えたら、私が死んだ事にしてくれないか。きっと遺体も何も出ないだろうが、その方が弟子が納得するからさ。






 5月30日、決めた。


 私、帰ろうと思う。

 魔法より科学という選択を取った世界へ。空に鉄の鳥が飛んでいてガラスと金属で出来た塔がいくつも立ってる。こちらの世界の方が居た時間は長いけれど・・・、やっぱり私はあちらの・・・窮屈(きゅうくつ)な世界の方がずっと大好きみたいなんだ。


 もう私も四十路(よそじ)

 いや、五十路(いそじ)だろうか。


 親も生きてはいないんだろうな。

 友も同じくらい歳を取ったのだろうな。


 寂しいが、帰りたいのだよ。












 追記。

 親友。ありがとう。

 私がこちらへ来て初めて出会った異世界人がアンタで良かったよ。幸せだ。


 弟子も、嫁さんまで貰って・・・。

 私は意味の分からないほど幸せ者だ。


 ありがとう、親友。


 さようなら、親友。


 私の名はミュー・サーシャ。

 またの名を、佐々木(ささき) 美由(みゆ)。”







 ・・・・・・。馬鹿な女め。何が、さようならだ。こんな手紙でも何でもない、小さな手帳に・・・書かれた別れなんて受け入れられるか。


 ・・・・・・。ロディ。この手帳。貰っていってもいいかい? どうやら私(あて)に書かれたものらしい。


 ああ、お前も辛いだろうに。

 何も出来なくて悪いね。


 それじゃあ、(しばら)く留守にする。

 馬鹿な女を(むか)えに行かなくては、親友としてな。・・・ははっ、どうだろうな。


 会えるかどうかじゃなくて私が会いたいから会いに行くんだよ。悪いが、異世界(こっち)で私とあの馬鹿を待ってておくれ。



 それじゃあ、またな。












STORY END.

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