女性用【語り部桃道〜語り追編〜】
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桃道
[あらすじ]《3分半程度》
西の辺境生まれの語り部桃道はこの道20年のベテランである。可愛らしい髪留めを付けた彼女は今日も胡座をかいて語り始めるのだった―――。
【桃道】
ほんなら今日も初めまひょか。
突然やけど皆さんは『語り部』言うたら誰を思い浮かべる? ああ、桃道。嬉しいわぁ、ありがとうな。
他は? 千輪に、漆煇。麒麟に、瞳鏃・・・。ああ。亀八郎も居るなぁ。あの子の語りはアタシのモンとはちょっと違うけど人気やよなぁ。後はぁ〜、ああそうそう。鹿華やとか咲鳥も居ったなぁ。そこら辺は懐かしい名ァやなぁ。
紫狒々に、茂木、船良かぁ。聞いたことないけどココで名が上がる言う事はいつか追い抜かされるかもしれんなぁ。
っああ、そうそう。何でこんな話したかって言うとな。・・・昔から語り部の事を追ってその話を記録する『語り追』言うんが居るんよ。
そう、今も後ろの方に居る子らがそうやね。昔から居るんに名前がついただけやからそう邪険にしたらんとって。
・・・今日話すんは、語り追がまだその名を持っとらんかった時の話。アタシが語り部始めて、2年かそこらの時やね。置いてかれんようによぉく聞いとり。
あん頃のアタシは、ようやっと語り部いう職がどんだけ身勝手で、そんでどんだけ楽しげなんか気ィ付いて。それを日々、模索しとったわ。
そんな時や。
アタシが熱心に語っとる時に、何や目の前でそれを古びた紙に記しとる奴が居ってな。
ほんでも、語りの途中やったし、ちらほらお客さんも居ったから中断する訳にもいかんくて、そのまま語りを続けたんよ。
語りも終わってお客さんが投げてってくれたお金を数えとったら、古びた紙持った奴がアタシの目の前に来てな? こう言うたんよ。
“お前の語りはまだ自分勝手さが無い”
一瞬腹立って。やけどもすぐに落ち着いた。そいつはその後にこう言うたんや。
“だけど、面白い。もっと自分の為だけに話せ。自分の為に語れ。自分勝手な奴が一番上手く稼げる”
そん後、よう話聞いたら色んな所で語りを記しとるらしくてな。若い女の語り部はアタシが初めてでつい興奮して目の前に陣取ってしもたんやて。
当時有名やった雛苢っていう老婆の語り部が居ったんやけどその人の孫や言う話で。それでもそん頃のアタシより随分と歳上やったけどな。
・・・もう、生きとらんやろに。一度だけ、お礼を言いたかったんよ。あの時の言葉が無かったらアタシは語り部続けとらんかったかもしれんって。
語り追は語り部が死んだ時に、その語りを本にして世に売り出す職や。語り部と違ってたくさん弟子も居るし、引き継ぎを請け負う者も居る。
あの時の、名前も知らん語り追に教えてやりたいわ。アンタが必死で書き記しとった物語は今、たくさんの人達が書き足して道を描いとるよって。
ほんなら今日はこの辺にしとこか。ここら辺は雷が突然雨のように降ってくるんやろ? アンタらも気ィ付けてな。
また、会いまひょか。・・・どっかでな。
STORY END.




