女性用【語り部鳥能見〜雨乙女編〜】
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鳥能見
[あらすじ]《3分半程度》
語り部の鳥能見は雨粒に恋する乙女のようだ、と誰かが言った。淡々と語る姿に惚れ惚れする客も少なくない。
雨がひと粒。ほら。そこに彼女が現れる―――。
【鳥能見】
あら、アタクシが見えるの…。
“さっきまで居なかったじゃないか”? …居た。貴方方の目に映らなかっただけ。
アタクシは鳥能見。
雨が好き過ぎて、雨に狂った種族の末裔。…語り部。だから今から仕事。
…聞いていくなら、道に広がらないで。アタクシはここから逃げないのだから。
………。
では、始めましょう。
アレはアタクシが、まだ。晴れた空の下では皆皆様の目に映れないと、知らなかった時代の話。
アタクシの故郷は、四六時中雨の降る島だったから、アタクシは誰の目にも映っていた。母も父も兄も、そこで店を構えて観光客相手に商売をしていた。
だけれど、曇るばかりで雨の降らない日は、何故だか店を畳んで、雨の降り始めた夜から、店を開いていた。
アタクシはナゼ、と。両親や兄に聞いたけれど、誰もその理由を語ってはくれない。
一族の掟のようなものなのだろう、と。半分納得して、だけれどもう半分は自分だけ仲間外れにされたような気持ちになった。
ある日の午後。
相変わらず弱々しい雨の降る故郷は、本島と呼ばれる、大きな大陸から渡ってくる観光客で賑わっていた。
アタクシは母から小遣いを渡されて、兄と共に買い出しを頼まれた。
幸い、近所の店で買い足せるようなものばかりだった。
もし小遣いが余ったら好きな菓子でも買っておいで、と言われていたアタクシ達は、買い出しを早早に終えて、子供向けの菓子を売る店先に着いた。
だがそこに居たのは、店の売り物に文句を付ける厄介な客だった。
アタクシ達は、嫌なものを見たと思って、その男のすぐそばを通り過ぎようとした時だった。
男がいきなり振り返って、アタクシの腕を力いっぱい掴んだ。
アタクシは吃驚して、離せと叫んだけれど、男は“良いもの持ってんじゃねぇか”とか、“俺に寄越せ”とか、色々言っていた、らしい。
そんな声も聞こえないほど、アタクシは男から離れようと必死だった。
その時、丁度雨が止んだ。
すると、アタクシを掴んでいた男の顔が、みるみる驚きに染まっていく。
それを見た兄が、アタクシを強い力で引っ張った。そうしたら、先程までビクともしなかった腕がスルリと抜けた。
男と店主の目が右往左往して、アタクシと兄を探している。
雨が降ると開く店、雨が止むと見えなくなったアタクシと兄。
ここまで揃えば、馬鹿なアタクシでも、もう分かった。
アタクシ達は雨が止んでいる内にと、家へ帰って両親の胸へ飛び込んだ。
その後に調べて知った。
雨の降る日に姿を現し、人々に知識を与える縁起の良い妖怪、『雨乙女』の存在。
そう、その末裔がアタクシ。
だから語り部になろうと誓って、今ここに居る。
……そろそろ雨も止む。
空が泣けば、きっと縁が運ぶ。
どこかで会えれば、また会いましょう。
STORY END.